▲一連の流れをみていると、かってファイル交換ソフトを作った学者を糾弾した事件との類似性に気がつく。
この学者は、無罪となってから、早々に亡くなった。
学者として優秀であったのだが、pcのソフトのもつ意味のようなものが裁判官に十分に理解できない時代での裁判であったための不幸であった。
ファイル交換ソフトを悪用されたのだったかな。
こんな悪いソフトを作って---と学者が糾弾され、上でふれたような顛末となった。
この事件の時、筆者は「包丁」に例えて批判した。
包丁が凶器となった殺人事件が発生した。で、人殺しに使われた包丁が悪い、そして包丁を作った人が悪い—と言っているのと同じだと。
結局、この裁判で、ファイル交換ソフトは「中立性」という性質をもっているのだ—として、無罪となった。
使う側の意思により、悪用もされるし、いい方向にも使える—そういうものだ--という意味。
表題の3Dプリンターも同様に「中立性」という性質を有した道具だ。
それで拳銃が作れるから—という理由で制限するというのはいかがか。
制限をするとしても、ファイル交換ソフトを悪者扱いして一人の有意な学者を失ってしまった「轍」を踏んではなるまい。
以下、新聞から抜粋。
3Dプリンターで製造した拳銃を所持していたと、
元湘南工科大職員、i容疑者が銃刀法違反容疑で逮捕された事件で、県警は、武器等製造法違反容疑で再逮捕する。
事件は、誰もが殺傷能力のある拳銃を自作できる実態を浮き彫りにした。
インターネット上、図面は約380万件。
専門家からは
「事件が起きる前に歯止めを」との指摘も上がるが、法規制は難しい。
県警は今月、プラスチック樹脂製の拳銃を所持していた疑いで逮捕に踏み切った。
その後の調べで、i容疑者が昨年9〜12月、自宅で製造した疑いが強まった。
◇強い執着心
i容疑者は小学生の頃から銃に興味を持ち、モデルガンの組み立てや分解を楽しんでいた。
高等職業技術校に進み旋盤技術などを習得。東京都内の町工場で働き、
大学職員になった。
調べに対し「知識は誰にも負けない」と。
ツイッターで「銃は親友」とつぶやき、
銃所持の理由を「自衛と弱者を守るため」と供述、県警は自己顕示欲を満たそうとした可能性もある。
◇5万円前後
i容疑者は、銃製造のための図面を「海外のサイトから入手」と供述。
実際、「gun」「blueprint」「real」のキーワードで
検索すると約380万件のデータがヒット。
種類も拳銃、ライフル、マシンガンなど多種多様だ。
データをダウンロードし、3Dプリンターに出力すると銃ができる。
3Dプリンターは低価格化が進み、i容疑者が使った製品は5万円前後。
販売会社は「安価なものでも銃製造は可能」と指摘。
◇法規制なし
図面のダウンロードに法規制はない。
県警は書き込みの監視を強める、実際に製造されているかどうか、確認できない。
1990年代、カラープリンターが出始めた際は偽札製造対策に動き、各社は紙幣をコピーすると黒くなる機能を導入した。
一方、3Dプリンターは海外メーカーが主流で、自主的な対策は難しい。
3Dプリンターの法律問題を研究する新潟大の助教は、
耐久性の強い樹脂などの原材料購入者の管理などの対策を挙げる。
商品開発の試作品を安価に作製できるなど、
利点も多い3Dプリンター。
助教は「流通に関する法規制は、
表現の自由の制限につながるので慎重に行うべきだ。
より良い使い方ができるよう議論を」。
▲補足、感想など
つまり、
耐久性の強い樹脂などの原材料購入者の管理—という部分で対処しようとしているということか。
正しい対応であろうと思える。
冒頭でふれたように、「中立性」という性質を有する「道具の規制」には、余程、慎重に行うべきと考える。