▲いや、ドイツのVWの話を聞いたとき、一番驚いたのは表題のことだ。
技術者にウソというものはない。
ハッタリ、虚言、見栄なんて、まったく通用しない世界だからだ。
そこにあるのは、ただただ「事実」の積み重ねだけだ。
思い違い、また、ある現象から間違った結論へ導かれた—ということはある。
しかし。
時間というものが、審判となって、偽物は淘汰される。
VWの場合、技術者が意図的にウソをついていた—ということが信じられなかった。
なぜって、時間が必ず審判となって、ウソをつき続けることが困難となるからだ。
また、必ず、証拠が残る。
同時に、技術者の「矜持」というものに関わってくる。
技術者の誇りに掛けて、そんなデタラメが出来るか—と普通、拒否する。
つまり。
VWの場合、技術者から見れば、短時間で暴露されることが分かりきった「ウソ」をつかざるをえなくした「経営者」というものに、責任があるということだ。
技術者は、いずれ暴露される。その時は汚名を覚悟するしかない—と思っていたに違いない。
技術者の誇りを傷つけ、会社のVWという名前まで汚し、世界から指弾されるとは---この経営者は一体なにをしたかったのか。
トヨタを追い越すためになら、「地獄に落ちても構わない」と考えていたということか。
以下、新聞から抜粋。
「天国への入り口」と書かれた門と、「天国に関する講演会への入り口」と書かれた門が並んでいた。
すべてのドイツ人は講演会への門に殺到した。
笠信太郎著『ものの見方について』が紹介する小話だ。
かの国の人の理屈好きに向けた皮肉だろう
▼ドイツ人は自国の製品について、「固くて丈夫で、堅牢な」と誇ることが多いという。
これは小塩節著『新ドイツの心』に教えられた。
剛健で、秩序正しく、総じて真面目という印象を、ドイツの人々に持つ向きは多いのではないか
▼それだけに驚きが大きい。自動車大手のフォルクスワーゲンが、米国で排ガス規制を不正に逃れていた。
基準に適合するかどうかの試験の間だけは基準を満たす。
普通に道を走る時は基準を大きく超えて排出する。
なんとも巧妙で悪質な手口だ
▼同じ事態を引き起こす可能性があるディーゼル車は世界で1100万台という。
ブランドイメージを傷つけただけでなく、米当局からの制裁金を始め、経営への打撃も甚大だろう。環境先進国というドイツの看板も損なわれかねない
▼フォルクスワーゲンは日本人にもなじみ深い。
カブトムシの愛称で呼ばれた丸っこい車体を懐かしむ方は多かろう。
一転して直線的なゴルフが1970年代に登場したのを、筆者の世代はまぶしく眺めた
▼昨年度、世界でのグループ新車販売台数でトヨタを抜いた。
年度ベースで初の首位だ。
グローバル競争は苛烈を極める。
その負の側面につい想像が及ぶのも致し方ない。
▲補足、感想など
これって、朝日新聞の天声人語かな。
なにか、こう薄っぺらいなぁ。
上のような手口が、巧妙で悪質か。
巧妙というなら、証拠が残らない手法を採用するさ。
ソフトという「逃れられない証拠」があるから、恐れいりました—となったのであろう。
冒頭で、技術者は直ぐに暴露されると覚悟していた—と書いたのは、このソフトがあるからだ。
ディーゼルエンジンという基本的な仕組みでは、どこをどうさわっても、排ガス規制をクリアできなかったのだろう。
技術者は、だから、「できない」と言ったのだ。経営者に対して。
対して。
トヨタを追い抜くためには、地獄に落ちてもいい—と考えていた経営者は、ソフトで不正をすることを決断したのだ。
技術者は当然、拒否する。
それでもなお、経営者から懇願・命令されると、不正が暴露されるまで大きな時間はないことを知った上で、「ともに地獄に堕ちる」という覚悟で、技術者は協力したということだろうな。<このあたりに、経営者から技術者というものへの「軽い侮蔑」のような感覚を感じる。ドイツでは技術者とはそういう軽い存在なのだろうなぁ>
技術者は、不正協力を拒否すれば、会社をやめざるをえまい。
技術者の苦しみを分かってあげてほしい。
☆追記。
VWのソフトに不正があると認めた経緯が記事となっていた。ご紹介したい。
--ここから--
何カ月もの言い逃れの末に、VWの技術者たちが、カリフォルニア州環境保護局の大気資源委員会の調査官らに秘密を打ち明けた。
排ガス検査でごまかしをするための「装置」を車に取り付けていたというのだ。
そのことを1年以上、大気資源委員会および米環境保護局に隠してきた。
発覚に至る過程は2013年にさかのぼる。
ディーゼルエンジンによる大気汚染を心配した欧州当局が、米国で販売された欧州車の路上走行での排ガス検査を望んだ。
米国での路上検査の結果は欧州のものよりも試験場での検査結果に近いだろうと考えたからだ。
ところがそうはならず、カリフォルニア州が調査に乗り出すことになった。
最後には25人の技術者がほとんど専業で取り組んだ結果、VWが検査結果をごまかすためのソフトウエアを使っていることが発覚。
このソフトは少なくとも1100万台の車に搭載されていた。
ワシントンとベルリン、サンフランシスコにオフィスを持つ非営利団体の国際クリーン交通委員会(ICCT)が欧州当局から排ガス検査の実施を委託された。
ICCTは13年の早い時期にウェストバージニア大学の代替燃料・エンジン・排ガスセンターで研究者らを雇用した。
1989年から、エンジン排ガスと代替燃料の使用について研究している同センターが、VWのパサートとジェッタを含めた3車種のディーゼル乗用車を検査することになった。
同センターで研究する助教授のアービンド・ティルベンガダム氏は「最初からメーカーの不正を見つけようとしていたわけではない。何か違った発見をすることを期待して検査していただけだ」と話した。
パサートとジェッタに加えBMWの「X5」を使って2013年3-5月にかけて試験したところ、VW車は試験場では排ガス規制の法的基準を満たすのに、 路上では基準よりはるかに多くの窒素酸化物を排出することが分かった。
センターは14年5月に研究結果を公表し、カリフォルニア州の大気資源委員会が調査を開始した。
委員会の調査官らはVWの技術者たちと何カ月も会議を繰り返し、VWは同年12月に約50万台をリコール、それによって問題が解決すると伝えた。
しかし委員会が再び検査すると、修理後も状況はほとんど変わっていなかった。
委員会のスタッフはVWに答えを求め続けたが、VW側は検査の方法や検査機器の調整に問題があったと言うばかりだった。
しかし検査を何回やり直しても路上と試験場で結果が異なり、あまりの不可解さに調査官らは車のコンピューターに格納されているデータを調べ始めた。
そしてついに、ハンドルの動きなどから排ガス検査中であるかどうかを識別するソフトウエアを発見。
VWは09-15年にかけてこのソフトを、エンジンをコントロールするモジュールに組み込んでいたのだった。
さらに9回の会議で調査妨害を続けた揚げ句、VWの技術者は今年9月3日にとうとう、白状した。
「われわれが集めた証拠とデータの蓄積の前に、彼らは文字通り言い訳の種が尽きた」と大気資源委員会のスタンリー・ヤング報道官が述べた。
--ここまで--
冒頭でふれた。
技術者は、そもそも不正が隠しおおせるとは考えてはいない。
いずれは暴露される。その時は、経営者と一緒になって「地獄に墜ち・汚名をひっかぶる」と覚悟しているのだ。
技術者とはそういうものだ。
☆追記。
VWのソフトに不正があると認めた経緯が記事となっていた。ご紹介したい。
--ここから--
何カ月もの言い逃れの末に、VWの技術者たちが、カリフォルニア州環境保護局の大気資源委員会の調査官らに秘密を打ち明けた。
排ガス検査でごまかしをするための「装置」を車に取り付けていたというのだ。
そのことを1年以上、大気資源委員会および米環境保護局に隠してきた。
発覚に至る過程は2013年にさかのぼる。
ディーゼルエンジンによる大気汚染を心配した欧州当局が、米国で販売された欧州車の路上走行での排ガス検査を望んだ。
米国での路上検査の結果は欧州のものよりも試験場での検査結果に近いだろうと考えたからだ。
ところがそうはならず、カリフォルニア州が調査に乗り出すことになった。
最後には25人の技術者がほとんど専業で取り組んだ結果、VWが検査結果をごまかすためのソフトウエアを使っていることが発覚。
このソフトは少なくとも1100万台の車に搭載されていた。
ワシントンとベルリン、サンフランシスコにオフィスを持つ非営利団体の国際クリーン交通委員会(ICCT)が欧州当局から排ガス検査の実施を委託された。
ICCTは13年の早い時期にウェストバージニア大学の代替燃料・エンジン・排ガスセンターで研究者らを雇用した。
1989年から、エンジン排ガスと代替燃料の使用について研究している同センターが、VWのパサートとジェッタを含めた3車種のディーゼル乗用車を検査することになった。
同センターで研究する助教授のアービンド・ティルベンガダム氏は「最初からメーカーの不正を見つけようとしていたわけではない。何か違った発見をすることを期待して検査していただけだ」と話した。
パサートとジェッタに加えBMWの「X5」を使って2013年3-5月にかけて試験したところ、VW車は試験場では排ガス規制の法的基準を満たすのに、 路上では基準よりはるかに多くの窒素酸化物を排出することが分かった。
センターは14年5月に研究結果を公表し、カリフォルニア州の大気資源委員会が調査を開始した。
委員会の調査官らはVWの技術者たちと何カ月も会議を繰り返し、VWは同年12月に約50万台をリコール、それによって問題が解決すると伝えた。
しかし委員会が再び検査すると、修理後も状況はほとんど変わっていなかった。
委員会のスタッフはVWに答えを求め続けたが、VW側は検査の方法や検査機器の調整に問題があったと言うばかりだった。
しかし検査を何回やり直しても路上と試験場で結果が異なり、あまりの不可解さに調査官らは車のコンピューターに格納されているデータを調べ始めた。
そしてついに、ハンドルの動きなどから排ガス検査中であるかどうかを識別するソフトウエアを発見。
VWは09-15年にかけてこのソフトを、エンジンをコントロールするモジュールに組み込んでいたのだった。
さらに9回の会議で調査妨害を続けた揚げ句、VWの技術者は今年9月3日にとうとう、白状した。
「われわれが集めた証拠とデータの蓄積の前に、彼らは文字通り言い訳の種が尽きた」と大気資源委員会のスタンリー・ヤング報道官が述べた。
冒頭でふれた。
技術者は、そもそも不正が隠しおおせるとは考えてはいない。
いずれは暴露される。その時は、経営者と一緒になって「地獄に墜ち・汚名をひっかぶる」と覚悟しているのだ。
技術者とはそういうものだ。