2015年10月17日土曜日

横浜のマンションの杭打ち問題に思う。

技術系の片隅にいた筆者としては、このマンション騒動で思う。
 この杭打ちって、一番、分からない部分なのだ。

 だって、地下数m~数十mの支持層まで杭打ちするって、手探りでやっているようなもの。
 そして、支持層ってべつに明確に決まっているものではない。当然、浅い深いがある。
 上からの荷重に耐えれそうな砂利混じりの地層という意味だ。

 また、杭打ち機を操作する人間は、操作員であり、「支持層まで達したかどうか」は、監督者が判断するという分業体制なのだ。

 だから。
 aという地点で、例えば15mで支持層に達したとする。隣のb地点で、この監督者が急用で外れて、杭打ち機の操作員に15mで支持層に達するだろうから、そうしておいて—とか指示を出す場合があろう。
 まぁ、自分で確認していないから、データはない。そこでaのデータをそのまま流用した—というようなことではないのかな。

 結果として、建物が傾いた—とい結果は重大なことだと思う。
 しかし、相手は自然なのだ。
 支持層の更に下に軟弱な地層が隠れていて、ボーリング調査ではつかまらない—ということだってありうる。

 それを、なにもかも監督者の偽装だ、杭打ち機の操作員のミスだ—とか言われるのには、抵抗がある。
 技術者として、経験と常識の範囲内で行っているのだ。
 操作員でもキャリアを積めば、自分で肝心な部分を見過ごすことはない。
 これは支持層に達していないとか分かるようになる。
 相手は、自然だ。いろんな場合があって、想定外の場合もあるのだ。

 なんというかなぁ。
 こういう技術者・操作員のもつ矜持のようなものを信じてあげてほしい。
 それは、結果として「建物の一部が沈み込む」という結果となったが、それは不確かな自然と向き合った時、「想定外」のことが発生するということなのだ。

 専門家の意見も聞いてみよう。

--ここから--

 度重なるデータの改ざんに専門家は「理解しがたい」と口をそろえた。

 一度建ってしまえば、不具合が出るまで見抜くことは困難で、 東北学院大の山口晶教授(地盤工学)は「数本であっても、くいの 位置次第では建物に不具合が生じる可能性がある。

 基礎工事をおろそかに すると、いずれ問題になるのは明らか。
 その重要性を知っていれば、 考えられないことだ」と疑問を呈した。

--ここまで--

 だから。
 データの改竄なんぞと簡単に言ってくれるな。
 杭打ちで支持層に達したか否かなんて、一番不明確な部分なのだ。
 現場で経験と色んなデータを付きあわせて、やっと判断しているのだ。

 以下、新聞から抜粋。

 横浜市のマンションで建物を支えるくいの一部のデータが偽装されていた問題で、 マンション販売会社による住民説明会で、 住民からは、新たな改ざんが明らかになったことや対応に怒りや不満の声が相次ぎ、 会社側は、改めて住民説明会を開くことになりました。

 この問題は、横浜市都筑区の11階建てのマンションが傾き、 建物を支える52本のくいのうち8本が強固な地盤に届いていないことが分かったもので、 くいの工事を行った旭化成建材が、 工事の報告書に別の棟のデータを流用する形で虚偽のデータを記載していたことも明らかになっています。

 マンションを販売した三井不動産レジデンシャルは、今月9日から入居者を対象にした説明会を開いていて、 最後となる説明会が16日夜に開かれました。

 説明会には、データを偽装していた旭化成建材の前田富弘社長が出席し、謝罪しました。
 説明会ではくいを打ち込む工事の際に、くいの先端付近のセメントの量のデータも改ざんしていたことを明らかにしました。

 会社側からは、同じ敷地にある4棟のマンションをすべて建て替えることを基本に 住民と協議を進める方針が改めて示され、建て替えには3年から3年半かかる見通しだと説明があった。

 住民からは、新たな改ざんが明らかになったことなど対応に怒りや不満の声が相次ぎ、 住民によりますと会社側は、最後の予定だった住民説明会を、今後改めて開くことを約束。

 三井不動産レジデンシャルの藤林社長は、住民説明会が終わったあと 「説明会では私の名前の入った文書に基づいて、私どもの姿勢を説明させていただきました。
 誠心誠意、ご説明させて頂きましたし、お客様の安心安全の確保を第一に、今後も対応を進めていきたいと思います」と述べました。


補足、感想など

 冒頭で、杭打ちの難しさについてふれた。
 それで、4棟ずべてを建て替えるということになるようだ。
 建物の一棟が傾いているという事実からそう言わざるを得ないのだろうな。

 でも。
 筆者の感覚では、この傾きかけた一棟だけの問題だと感じる。
 技術者は、おそらく、意図的な「手抜き」をやった訳ではあるまい。
 経験上、常識の範囲内で行ったことであろう。

 筆者だけの知識では、不足なので書き込みを拾ってみよう。

--ここから--

◇大手の現場って仕事の内容に関しては何にも言わないからな
 たぶんわかんないんだと思うよ
 建設や建築って自分で実際に作業して来た経験が無いとわかんないもんだし
本読んで覚えた薄っぺらな知識では何にも役に立たない

◇データの偽装が、下請け単独で出来ると思えない
 データは、機械からオンタイムで出て来ます。

 それを確認しながら施工させているのが現場監督であり、 設計監理の設計士なんです。
 当然、杭打ち作業中にもオンタイムで監督や設計士が、 機械のそばにいてデーターを直視しているのが普通

 それを下請けに丸投げしてたのなら監督と設計士の 監督不行届が原因でしょう
 支持層は、フラットじゃ無いからある程度上下します。
 規程長さよりも短く済んだ杭もあるだろうし、逆もある
 それを見ながら指示する立場は、設計士であり現場監督の仕事

--ここまで--

 そうか、下請けに丸投げ---か。
 経験の乏しい杭打ち機の操作員に丸投げしていたら、そういうことが発生するかもしれない。
 もう、何次の下請けになるのか分からないほどの下請けの可能性があるなぁ。

 また、--建設や建築って自分で実際に作業して来た経験が無いとわかんないもんだし 、本読んで覚えた薄っぺらな知識では何にも役に立たない--

 その通りだろうなぁ。だから、こういう問題であれこれいうことが難しいのだな。