2015年12月31日木曜日

杭打ち騒動、ひとまず沈静化。

なにか、杭打ち騒動はひとまず沈静化したようだ。
 技術系の端くれにいた筆者から、意見を述べたい。
 以下、箇条書きで。

1.今回の杭打ち騒動は、データの流用・改竄というところに焦点を絞った騒動に終始した。
 つまり、杭が支持層に届いている・いない—という「指摘」ではなくて、支持層に杭は届いているが、それを証明するデータが他の杭打ちのデータを流用するということがなされていた--という問題点の指摘になったということだ。

2.すると。
 今回、データの流用などがあったとされる杭についても、支持層に届いたというデータはないものの、支持層には届いている—と現場技術者も管理者も認めたということなのだ。
 そういう意味では、現場技術者、杭打ちの作業員達の「良心」を信じたということだ。

3.今回の事件の発端は、マンションが傾いた—という現象の原因が、杭が支持層に届いていないのではないか—という懸念であった。
 しかし、報道が様々なされている内に、「杭は支持層に届いているが、それを証明するデータが他の杭から流用された」のだ---という「方向」で、操作されたと言ってもよかろう。

4.いや、筆者は現場の状況を知っている。現場の技術者、杭打ちの作業員達を「信じてあげてほしい」とこのブログで書いた。
 その意味で、かれら現場の作業員達の名誉が守られてほっとしている。

5.ついでながら、今回の事件で下請け企業の旭化成の社長がでてきたが、こういう重層の仕組みの中で下請けがここまで出てくるというのは、いささか常識外れであろう。
 旭化成の社長の「やり方」を批判するつもりはないが、元請け企業がまず表にでて、その次の次という立場に立つのが普通の対応ではあるまいか。

 以下、新聞から適当に抜粋。

 横浜市のマンションが傾いた問題をきっかけに相次いで発覚した杭打ちデータの改竄をめぐり、国土交通省の委員会は、背景にある業界の施工管理の甘さを指摘。
 国交省はルールを明確化して再発防止を図る方針だが、強制力のないガイドラインにとどまる見通し。

 単なるミスにとどまらない、業界の風潮、企業の風土、関係者の意識に関わる根深い問題だ—と委員長が指摘。

 横浜市のマンションに杭打ち工事で、2次下請けの現場担当者はデータの記録ミスんどをとり繕うために、改竄を行ったと説明。
 元請けは工事の進捗に応じてデータなどを確認せず、施工管理に不十分な点があったと指摘されている。

 他の杭打ちの現場でも、データの記録装置の操作ミスや資料の紛失があると、施工報告書の体裁を整えるためにデータの改竄が横行していたとみられる。

 ただ、国交省がまとめる杭打ち工事の指針は建設業法の「告示」の形となる見通し。
 中間報告の提言で法改正に踏み込まなかった理由について、委員長は「施工不良は横浜市のマンションでしか見つかっておらず、データ改竄と安全性の関連性は極めて低い」と指摘。
 「今回の問題は、現場がルールを徹底することで再発を防げる」と説明。

 対して。
 弁護士は、「強制力のないガイドラインや業界団体の自主ルールで簡単に改善につながるとは思えない。性善説に立ったモラル頼みの内容だ」と疑問を呈す。

 国交省の担当者は、「規制を強め過ぎると民業に悪影響を与える面がある」と話し、「ルールが守られているかあ、立ち入り検査などを通じてチェックしたい」と強調。

補足、感想など

 記事にある「データ改竄と安全性の関連性は低い」という意味は、冒頭でふれたとおり、データの改竄はなされていたが、杭そのものは、支持層にちゃんと届いていた—という意味だ。

 そのあたりを、弁護士は「性善説に立ったモラル頼み」だと批判したものだろう。

 でもなぁ、と元技術系の筆者など思う。
 杭の先端部分は、「未知なる不透明な自然」なのだ。
 隣の杭が、地表から地下15mで支持層にぶっつかったとして、今、打ち込んでいるこの杭が地下15mでぶっつかるかどうかさえ分からない。
 長い場合も短い場合もあろう。

 不透明で分からない自然にその度に判断して対応しなければならない。
 この部分は、杭打ちの技術者、技能者の経験に裏打ちされた誇り・矜持に依存するしかないのだ。<機械の精度も上がっているようだし-->
 モラル頼みというより、経験を積み重ねた現場技術者の誇り・矜持頼みということだろうな。

 もう、これは職人のようなものだ。
 ぜひ、彼ら現場技術者の職人魂を信頼してあげて頂きたい。