▲平成11年という年は、西暦1999年だ。もう20数年前か。pcのモニターにブラウン管以外が求められていた時代だったなぁ。そんなモニターになにを使うか—という時代背景があったことを改めて思い出した。筆者には、表題の本の感想をまとめるだけの能力がない。アマゾンのレビューを使わせてもらおう。
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5つ星のうち4.0 アメリカの特許制度のある意味での不合理性とそれを利用する抜け目のない人たちそして、それを利用する国家戦略。それに対抗する日本の通産省の表に出ない活動を軸にダイヤモンドシンジケート、ハッカー、大企業、アメリカ政府要人、CIA、スパイ、弁護士等が活躍する。アメリカ人のサクセスストーリーや階層文化が服装や仕草、表情に亘って細かに描き込まれている。棲んでいる場所も、一代では無理なことも。新階級の誕生といってもいい。読むに従って通奏低音は、新自由主義的価値観であるということが解ってくる。そして、それに対するアンチテーゼが前作では「東洋」であった。今回は、「国際主義」ということになろうか。しかし、それは表裏のものであるためこの小説を深みのあるものとはしていない。期待し過ぎであろうか。サスペンス小説としては一級である。今回は、主な登場人物のプロフィールが最初にあるので読み易くなっている。
5つ星のうち5.0 特許をめぐっての物語としては、秀逸。アメリカの特許の世界戦略という問題を考えると、とてもおもしろい展開でした。天才的なハッカーというのは、物語をかなりおもしろく展開させることができる。その手口に関してあまり詳しくいわなくても展開可能である。ケビンマクガイアー どこかネジがはずれている。やはり、デジタル上で、おもしろがっている。エリスクレイソン。個人的な発明家として登場。その個人の経歴は、消えている。コンベアーによる組み立てシステム。半導体の基本的特許。ITインスツルメントがなぜ好調なのか?IT産業が吹き返したのはなぜか?あくまでも国家軍事技術が関連している。特許は、独占禁止法と対立する。アメリカの特許を重視する姿勢は、レーガン政権によってすすめられた。国防省、CIA アメリカ内部の権力闘争。旧ソビエトからの技術流出。ポイントは、ダイヤモンドにしている。ダイヤモンドシンジケートの仕組み。アフリカ、コンゴ(ザイール)、ロシア、オーストラリア。ダイヤモンドの合成技術;単なる炭素の塊。液晶技術 シリコンからどう発展していくのか?素材を考える。ボロンが加わったブルーダイヤモンド。日本企業のおける位置。アメリカの企業の利益を上げるシステム。発明家と弁護士の関係と特許訴訟。特許をめぐってのアメリカのグローバルスタンダードの背景にある者は?
5つ星のうち4.0 400頁を超える大作だが、特許制度、ハッカー、半導体を巡る日米戦争など、当時の最先端のトピックをうまく盛り込み、読み応えのある作品になっている。ただ、若干の難を言えば、日米の宿敵ともいえる天才ハッカー二人のサイバー空間での戦いが見られると期待させるような序盤の入り方であったにも拘わらず、思ったほどの活躍もなくややクライマックス感に欠けた点が残念だった。それにしても、この作品が描かれた20年後に日本の半導体産業がこのような壊滅に陥っているとは誰が予想したろうか。虎の子の技術を韓国や中国に渡した(一部は盗まれた?)ことが原因と思うが、残念な思いがした
5つ星のうち5.0 天の方舟からたどり着きました。著作権と国家間の問題、特にアメリカは例えば一枚の写真があったとき「そこに写っている人のプライバシーや人権より、写真を撮った人の利益である著作権」つまりお金を優先すると聞きます。。一方で日本は技術国家のはずが、新しいものを作り出す技術者が食べていけず、盗んでコピーする人が羽振りの良い生活をしている状態。。ぜひこの動画も見たいのです。amazon primeにはまだないのでしょうか?
5つ星のうち4.0 アメリカの秘密特許通称サブマリン特許を巡る国際的サスペンス小説である。先進国における特許の先発主義と先願主義の違い。それとは別にアメリカの秘密特許制度を巧みに使ったサスペンス。内容は大変面白かったが作品の展開にはイライラする手法だった。すなわち作品の半分くらいは世界各国の関係者の動きが描かれている。だんだんと人工ダイヤに関する特許を巡る内容であることが分かりかけるが全体が一本にまとまらない。各セクションの話はすぐに終わってめまぐるしく動く。わざとこのようような手法とは思うが全体がつかみにくい作品ではあった。
5つ星のうち4.0 随分前の作品ですが、久しぶりに読んでも楽しめました。日本人を主人公にしなくても?とか突っ込み所がないわけではありませんが、なかなか従来の日本人の筆にはないスケールとスピード感があって、楽しめる娯楽作品だと思います。USの特許法に詳しいわけではないので事実との乖離を確認する方法はないのですが、リアリティは感じますし、深刻に考えさせられずに楽しめる「日本人が活躍する国際諜報もの」を求める方には最適かもしれません。
5つ星のうち3.0 日本人の小説にしては、国際謀略のプロットが練れていて面白かった。が、スーパーハッカーの”ケビン”、これはケビン・ミトニックだし、それを捕まえた日本人の”サソウ”はツトム・シモムラだし、謀略を働いた米国副大統領の”ルース”はアル・ゴアをまんま想像できる設定なのにはおもわず吹いてしまった。もう少し仮想できる部分を残してくれないと、実在の人物とだぶってしまう。とはいえ、中村ダイオードの件もあって、ようやく日本でもち財特許戦略(CI)に対する認識が高まっているが、それを8年前にエンターテイメントに仕立てている点は評価できる。最近の著「GMO」も食料DNAの話。食の安全性が問われていることを考えるとこの作者のタイムリー性がよくわかる。
5つ星のうち5.0 本書はある「石」に関する特許をめぐってのミステリーである。登場人物は実に多彩で、ハッカー、弁護士、CIA、通産省、コングロマリット等々で、それぞれが複雑に絡み合い話が急テンポで展開されていくのだが、文句なく面白い。著者は元ジャーナリストだが、前作の「龍の契り」での歴史記述といい、本作品の特許に関する記述といい、専門家並みの厚みがあり、思わずのめりこまされてしまった。間違いなく一級の作品である。
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上の評論にある「本作品の特許に関する記述といい、専門家並みの厚みがあり、思わずのめりこまされてしまった」---筆者もその通りだと思う。なお、著者は、上の作品で吉川英治文学新人賞を受賞されている。