2023年3月21日火曜日

セントラル硝子が、ナトリウムイオン電池の部材に参入する

 

どこに核心があるかというと、現在主流のリチウムイオン電池を構成しているリチウムという材料に限界があって、価格が高騰するし、とても需要を賄えるほどの量が存在していないということなのだ。で。ナトリウムイオン電池ならば、材料不足という事態にならないということで注目されている。記事、関連文章などをみよう。

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ナトリウム電池部材参入 セントラル硝子、量産へ 2023/03/21 EV向け実用化にらむ セントラル硝子は2024年にも電気自動車(EV)向けなどで実用化が期待される新型電池の中核部材に参入する。リチウムの代わりにナトリウムを主な原料に使う「ナトリウムイオン電池」向けの電解液の量産を始める。リチウムはEV電池などの需要が増えるなか価格高騰や調達難の懸念がある。安定調達が可能なナトリウムを使う新型電池の商機をにらみ参入の動きが出てきた。価格高騰のリチウム使わず ナトリウムイオン電池は中核部材の一つ、正極材に使うリチウムをナトリウムに置き換える。低温では充放電効率が下がり寒冷地での利用に弱いとされるリチウムイオン電池に比べ、セ氏マイナス20度でも性能を保てることから寒冷地でも使いやすい。量産でコストをリチウムイオン電池の半分程度にできる可能性があるという。セントラル硝子は別の中核部材である電解液を量産する。電解液は電池の正極と負極の金属イオンのやり取りを促す役目がある。24年にも1ギガ(ギガは10億)ワット時規模の生産をめざす。生産量はEV2万台分に相当する。同電池の開発で先行する中国の電池メーカーが主な顧客になるとみて、現地にある既存の合弁工場での生産も視野に入れる。同社はリチウムイオン電池向け電解液の国内大手。培ってきた添加剤の技術の強みをナトリウムイオン電池向けでも生かし、顧客の要望に合わせて電池寿命を延ばしたり出力を高めたりして提供する。原材料となる溶媒や添加剤の種類により異なるが、原材料費はリチウムイオン電池向けより2~4割程度抑えられると見込む。他社も参入に動く。クラレは中核部材の一つである負極材で参入をめざす。手掛けるのは負極材となる黒鉛で、生産量は年間で数千トン以上の規模をめざす。イオンのサイズが大きいナトリウムイオンでも電極内を移動しやすくなる特性がクラレの黒鉛にはあり、充放電がしやすくなる点が強みになるという。各社がナトリウムイオン電池の新たな市場に期待を寄せるのは、リチウムイオン電池に代わる新たな電池市場を生み出すとみているからだ。EV電池用の需要増に伴って既にリチウムの価格は高騰している。直近では電池に使える炭酸リチウムの価格は2年前の10倍程度に一時高騰している。調達懸念もある。脱炭素の流れを受け、EVや再生可能エネルギーでつくった電気の蓄電池の需要が大きく伸びる見通し。産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑え、1・5度以内にするよう努力することを定めた温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」達成へ、リチウム生産量を30年までに3倍に増やしてもEVなどの需要を満たせないとの試算もある。他方、ナトリウムイオン電池の主原料となるナトリウムは地殻の成分に占める比率(質量ベース)が2%台と、地球で6番目に多い元素だ。世界中に豊富に分布しているため、地政学リスクも少ない。リチウムは同比率が001%未満で、南米などに偏在する。ナトリウムイオン電池は価格を抑えられ、安定的な供給が期待される。既に中国ではナトリウムイオン電池の実用化を競っている。車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)とは23年に世界に先駆けてナトリウムイオン電池を量産し、EV用に供給する計画がある。ナトリウムイオン電池は主流のリチウムイオン電池に比べて容量が低い。高容量を求めた自動車や電池各社がリチウムイオン電池の開発や改良に優先して取り組んだ結果、ナトリウムイオン電池の普及が遅れた。今後は容量向上に寄与する電解液や電極材料の開発が必要だ。次世代電池の代表格とされるのが、リチウムイオン電池の一種である全固体電池だ。電解液を固体の電解質に置き換えることで容量と安全性を同時に高められる。全固体電池は容量が高くEVに向く。だが大型化や寿命を延ばすのが難しく、実用化が遅れている。ナトリウムイオン電池は全固体電池ほどは長距離走行を要求されないEV向けと再生エネの蓄電向けが主になるとみられる。調査関連会社グローバルインフォメーションによると、ナトリウムイオン電池の市場は30年に11億5129万ドル(約1500億円)と22年の3・5倍に増える。現時点では競争力のある部材メーカーは少ない。日本勢はリチウムイオン電池向けで培った素材技術を生かし市場開拓で先行すれば、高いシェアを得られる可能性がある。


ナトリウムイオン電池って何?開発状況や製品化に向けた課題を紹介2022.09.19

電気自動車には大容量の電池が必要なことから、テスラがギガファクトリーを設立するなど、リチウムイオン電池の増産が行われていますが、リチウムやコバルトの不足など、資源上の問題が表面化しています。資源の問題を解決するため、リチウムなどのレアメタルを使わない電池の研究が盛んにおこなわれていますが、中でも注目を集めているのが「ナトリウムイオン電池」です。本記事では、ナトリウムイオン電池の特徴やメリット、リチウムイオン電池を代替できる可能性などについて詳しく解説します。

ナトリウムイオン電池とは →電解質にナトリウムイオンを使った電池ナトリウムイオン電池は二次電池の一種であり、ナトリウムイオンを電子の移動に用いる電池です。次世代電池として注目されてはいますが、構造自体はオーソドックスな形であり、リチウムイオン電池とほぼ同じとなっています。正極にナトリウム酸化物、負極に炭素材料を使うことが多く、正極側のナトリウムイオンが負極に移動することで充電され、正極に戻ることで放電する形となります。

電池性能は低いが将来性が期待される →ナトリウムイオン電池自体は歴史が古く、リチウムイオン電池が開発される前から、高効率な電池開発の一つとして研究が行われていました。しかし、1993年にリチウムイオン電池が圧倒的な性能を実現し、ナトリウムイオン電池では同等の効率を出すことが難しいと判断されたため、ナトリウムイオン電池の開発は下火となり、今まで実用化されることはありませんでした。その流れを変えたのが、電気自動車の開発の加速です。車載用電池の需要が爆発的に増加することから、リチウムイオン電池の資源不足が現実的になってきたため、圧倒的に資源量が多いナトリウムイオン電池に再度注目が集まるようになったのです。車載用ではありませんが実用化も始まりつつあり、次世代電池の中でも将来性を期待されている電池といえます。

ナトリウムイオン電池が注目される理由 →数ある次世代電池の中で、なぜナトリウムイオン電池が注目されているのでしょうか。その理由を詳しくお伝えします。

希少資源を使わない →最も大きな理由は、希少な資源を使わずに電池を作製できることです。リチウムイオン電池に使うリチウムは、埋蔵量こそ少なくはないものの、資源の生産地が偏っており、調達は簡単ではありません。また、コバルトのように数十年で枯渇するレアメタルも使っており、情勢の変化によって材料が手に入らなくなる懸念があります。対してナトリウムは世界中、地域を問わず潤沢に存在しており、さらにレアメタルを使わずに高効率な電池が作れるようになりつつあります。そのため、たとえ性能がリチウムイオン電池に及ばなかったとしても、持続可能な生産を目的にする場合、ナトリウムイオン電池を採用する可能性があるのです。

使用温度範囲が広い →リチウムイオン電池と比べて使用温度範囲が広いことも、ナトリウムイオン電池が注目を集める要因です。電池は、低温になると電解液の粘度が増加して電池内部の反応速度が下がり、抵抗値が増加することで電池の出力電圧が下がるようになっています。リチウムイオン電池では、一般的に充電時0℃以上、放電時-20℃以上が使用温度範囲とされていますが、CATL社が開発したナトリウムイオン電池では-20度以下でも性能が保持できるなど、より低温で動作することが報告されているのです。高温動作についても90℃での充電が可能だと報告されており、より過酷な条件でも電池が使用できる可能性に期待が高まっています。

急速充電のスピードが速い →ナトリウムイオン電池では、急速充電スピードの高速化も期待されています。CATL社の実績では、室温において、15分で80%の急速充電が行えることが報告されており、すでにリチウムイオン電池と同様の充電速度が実現している状態です。理論的にはリチウムイオン電池の5倍の速度で急速充電が行えるとの意見もあり、ナトリウムイオン電池の充電速度の向上に対する期待の高さが伺えます。

リチウムイオン電池の生産設備が流用できる →ナトリウムはリチウムと性質が似ており、電池の構造も基本的にリチウムイオン電池と同じことから、生産設備を流用しやすいのもメリットです。電極は同様の材料が使えないなど、変更が必要な所はもちろんありますが、既存の設備が使える分、実用化までのハードルが下がるのは間違いありません。他の次世代電池では一から生産設備を作らなければならない場合も多いので、ナトリウムイオン電池の方が実用化に向けた期待度は高いです。

全固体電池への応用にも期待 →全固体電池は安全性の高さや、高温・低温での使用、寿命の長さなど様々なメリットが得られることから、「電池の概念を変える次世代電池」として注目を集めています。この全固体電池にナトリウムを使う研究も行われており、実用レベルの性能を達成した報告もあります。現在報告されているのは、酸化物系で電池容量の少ない電池ですが、これから研究が進むにつれて、大容量のナトリウム系全固体電池が開発される日が来るかもしれません。

ナトリウムイオン電池の課題 →様々な面で期待の高まっているナトリウムイオン電池ですが、リチウムイオン電池を代替するには技術的な課題が残っているのも事実です。ここからは、ナトリウムイオン電池が持つ主な課題について解説します。

エネルギー密度が低い →ナトリウムイオン電池の最大のデメリットは、エネルギー密度が低いことです。ナトリウムはリチウムと比べると金属析出電圧が0.3V高く、また原子量が重くイオン半径も大きいという性質があるため、本質的にエネルギー密度は低くなります。もちろん、電池のエネルギー密度は電極の容量密度に依存するため、高性能な電極を開発すればエネルギー密度を向上させることは可能です。ただ、イオン半径が大きいため、リチウムイオン電池で用いられる黒鉛電極では、ナトリウムが黒鉛の隙間に入り込めず、電気容量が大幅に減少する問題もあるため、リチウムイオン電池以上のエネルギー密度を得るのは難しいといえます。特にサイズの小ささ、重量の軽さが求められる電気自動車においては、ナトリウムイオン電池の搭載までに必要な技術ハードルは高いです。

安全性に課題 →ナトリウムを利用する場合、電池としての安全性にも懸念があります。金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、自然発火を起こすことや、引火性ガスを発生させ爆発につながる可能性が知られています。リチウムも発火性・爆発性を持つため、適切に対策すれば問題はないのですが、製品化するには相応の対策を行い、安全性を確保することが必要です。

製造コストが高い →ナトリウムイオン電池が技術革新によりリチウムイオン電池に匹敵する効率を実現した場合でも、製造コストの高さが課題として残ります。リチウムイオン電池は長年にわたり生産コスト削減が行われており、量産数も非常に多いため、コストが圧倒的に低いのが現状です。ナトリウムイオン電池は安価な材料が使えるメリットはありますが、早期の普及には量産数量の確保が必要になってくるでしょう。

ナトリウムイオン電池の開発状況 →引用:日本電気硝子株式会社 ナトリウムイオン電池が持つ課題により、本格的な実用化にはまだ技術的なブレイクスルーが必要な状態ではありますが、研究は地道に行われており、製品化に至った事例もあります。ここからは、ナトリウムイオン電池の開発・実用化状況をピックアップして紹介します。

東京理科大学が高容量の負極材料を開発 →こちらは、東京理科大学がナトリウムイオン電池の効率向上に向けて、リチウムイオン電池と異なる電極材料を開発した事例です。ナトリウムイオン電池では、負極材料としてハードカーボンが用いられますが、製法に工夫を凝らすことでナノサイズの空孔を発生させ、電極容量を大幅に向上させました。この研究結果より、負極の電位が0.3V高くなるという不利な点を考慮しても、ナトリウムイオン電池がリチウムイオン電池よりも高容量化できる可能性が見えてきています。実用化などの情報はまだ発表されていませんが、ナトリウムイオン電池の更なる可能性が感じられる発表です。

日本電気硝子が全固体ナトリウム電池を開発 →続いては、日本電気硝子がナトリウムイオンを使い、全固体電池を開発した事例です。正極と負極に結晶化ガラスを用いているのが特徴で、2017年に室温での駆動に成功し、202111月には実用レベルの性能を実現していると公表されました。全ての材料を地球上で豊富に得られる資源だけに絞っていることも特徴で、高い安全性、半永久的な電池寿命の向上、低温での駆動など、多くのメリットを有しています。酸化物系の全固体電池であり、電気容量は小さいため小型電池にしか利用はできませんが、一つの技術革新として高い注目を集めています。

CATLがナトリウムイオン電池を実用化 →20217月、中国企業のCATL(Contemporary Amperex Technology Co Ltd)がナトリウムイオン電池の量産を開始すると公表した事例です。エネルギー密度は160Wh/kgと、リチウムイオン電池が200Wh/kg以上の性能を持つことと比較すると低い数値ではありますが、充放電速度の向上、-40℃までの低温駆動の実現、熱安定性の高さなどのメリットも持っています。「ABバッテリーパック」という、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池のセルを組み合わせ、それぞれの強みを活かすソリューションも発表しており、電気自動車への活用も見込んでいる状態です。これからの開発や本格量産に向けたサプライチェーンの構築に向けて、最大約1兆円の追加増資を行うとも公表しており、さらなる進展が期待されます。

まとめ →今回は、次世代電池として注目が集まっているナトリウムイオン電池の開発状況や、将来の展望などについてお伝えしました。ナトリウムイオン電池は希少資源を使わずに作れるため、将来的な資源不足に対応できる電池として期待されています。エネルギー密度の低さや発火・爆発への懸念など、性能上の課題はありますが、量産化へのハードルが低いメリットもあり、実用化の可能性が比較的高い電池でもあります。電気自動車の爆発的な増産に合わせ、リチウムイオン電池を代替する存在として登場する日は近いかもしれません。


四季報から   2023.1月号 セントラル硝子 →ガラスは赤字の海外車用撤退、建築用の合理化効果想定超で黒字転化 フッ素系溶剤や電解液は販売好調。 円安で上振れ、営業益再増額。有証売却特益。増配。243月期は電解液や車用ガラスが伸長。 台湾に半導体製造用高純度フッ素混合ガス生産拠点設置へ。


直近の業績から →セントラル硝子