2020年3月11日水曜日

上海発奪回指令 伴野朗著 株式会社早川書房 1995年6月刊 感想


伴野さんは、60代後半で亡くなった。
 亡くなられたとき、いかにも早すぎる--、もっといい作品ができるはずなのに---という感想をもったことを思い出した。

 表題は、1940年代の日本軍の暗号を奪い合うという話である。

 アマゾンの書評をみてみようか。

 -ここから-

前作が連続短編小説集だったのに対し、本編は一冊で一篇を成す時代ミステリー。
時代も前作からやや時間の経過した1940年代に設定されている。
舞台も上海・東京・長崎と三ヶ所に広がっているが、引き続き著者の豊富な知識には舌を巻く。
綿密で地道な取材が、本作にも生き生きとしたリアリティを与えている。
風采の上がらない中年男という主人公にふさわしくないキャラクター、特務機関員山城太助も引き続きその匂い立つ危険なイメージで魅力的だ。

 -ここまで-

 佐々木譲さんの「エトロフ発緊急電」の感じに似ているかな。
 
 ついでに、伴野さんの略歴をみよう。

 -ここから-

1954年 愛媛県立松山北高等学校卒業。
1960年 東京外国語大学中国語学科卒業。
1962年 朝日新聞社入社。
1976年 『五十万年の死角』で第22回江戸川乱歩賞を受賞。
1989年 朝日新聞社を退社
1984年 『傷ついた野獣』で第38回日本推理作家協会賞受賞。
1992年 自己作品を原作とする映画「落陽」監督。この興行的な失敗は、制作会社のにっかつの倒産を加速させた。
2004年 心筋梗塞のため死去、67歳。

人物
川村二郎曰く朝日新聞が社を上げて全面支持していた文化大革命を表だって批判した数少ない先輩社員だったため、閑職にされて早期退職することになった。

 -ここまで-

 伴野さんは、直木賞ももらっていない。これだけの書き手で---か。
 豊富な知識に裏打ちされた緻密な文章で、筆者の好みの作家だ。
 直木賞も受賞されないまま、亡くなったのか。

 残念なことではある。