▲文庫本で600ページを越える分量だ。
裏表紙には、「長編推理サスぺンス」と銘打っている。
全編を読んで、筆者は「うまいな」と思った。
ただ。
謎解きがちょいと難しい。
説明しているのだが、よく分からない。
いつものように、アマゾンの書評を転記してみよう。
-ここから-
5つ星のうち3.0
官僚機構をはみ出した小役人の物語。
結局、小役人シリーズ3編を読み切る。やはり、「連鎖」が、一番よかったのかもしれない。
ちょっと、あれこれと考えすぎであるが。汚染食品の輸入。
海底火山の噴火による島の形成と国家利益。ODAと談合。
いずれも、現代という時代背景のもとで、起こっている問題である。
厚生省の食品監視員。気象庁の地震観測員。公正取締委員会の職員。
国家機構の中で、少なくとも、その問題を目の当たりにして、いる人が主人公である。
気象庁では、辞職して、追求する。
公取は、辞職させられて、追求する。
その点では、官僚機構をはみ出さない限り、その実体を追求することはできない。
システムができていることは、人間らしさを失うことでもある。人間を回復する時、あるのは自分だけかもしれない。
5つ星のうち4.0
意外な結末!
真保 裕一さんの長編小説です。私はてっきりトレードに関する本だと思いましたが、まったく関係ありませんでした。
主人公の伊田は公正取引委員会の審査官ですが、内部で罠にはめられ、辞職に追いやられます。しかし、その後、罠にはめた内部の一人が検察の仕事を依頼してきます。
秘密の業務はフィリピンでのODAに絡む贈賄の証拠をつきとめるというものでした。
昔の同級生が大手のゼネコンに勤務し、フィリピンにやってきます。その彼に偶然を装い、接近します。その後、予期せぬ殺人事件に巻き込まれていくというストーリー展開です。
個人的には結末が悲しい内容だったので、できればハッピーエンドにしてもらいたかったです。
まあ、そんなことを言っても仕方がないのですが・・・。
文庫本は600ページを超える長編の一冊です。
興味のある方は是非ご覧ください。
5つ星のうち4.0
ほんとうは,ごくあたりまえの正義感や隣人愛が,じっさいは育んだり維持したりすることがとても難しい世界で,なんとか正気を保と苦闘する主人公の姿が,好ましかった。脇を固める友人,知人,ヒロイン役もみな,愚直で不器用で,でもそれぞれがみずからの小さな旗を掲げることをやめない。 その旗には,コモン・センスと書いてあるのだと思う。
この小説の主人公たちの矜持は,表現は違えど,4分の3世紀前にアメリカの映画作家フランク・キャプラが繰り返し表現したものと通じると思う。
舞台となるフィリピンの街や田舎の描写も,とても興味深かった。行ったことのない国を,すこし旅したような気分になった。
作者が誠意を込めて,こだわって書いたのが通じてきた。
主人公とヒロインの仲ががもう少し発展させて描いてもらえて,甘っちょろくてもいいからハッピーエンドになっていたら,もっとよかったとは思うが,それは個人的な趣味にすぎない。ほんとうは星4つ半。
今度は『奪取』を読みたい。
5つ星のうち3.0
ヒロイズムがベタすぎて笑っちゃう〜
新保さんおは小役人シリーズを数冊と、ホワイトアウト辺りを読んでおります。まあ、どれも及第点以上の内容で、じゅうぶんに楽しめて読めるのだけど、どうにもこの人のヒロイズムってのがベタすぎる傾向にあるようです。
ホワイトアウトの友への贖罪とか、男なら立ち向かえとか、そういう精神であるとか、この作品の、同窓の友のために、彼の妻と娘のために!などで、仕事そっちのけでかかりきる主役のヒロイズム精神が、いかにもフィクションというか作り物めいてるんですね。
公正取引委員見たいな役人なんて堅物で事なかれの代表格みたいな人間のはずなのに、こんなセンチな姿みせちゃって、役人らしくないです。。なんか笑っちゃうので、そこらをもっとリアリティ出して欲しいです。
フィリピンでのあのヤンマーな警部がワイルドでよかった。ハードボイルドらしいタフガイなキャラで好感。
記者だかかの女が結局最期まで飾りのままになってたのが惜しまれるよ。主役とのトマンスを絡めてほしかったです!
5つ星のうち3.0
拉致監禁の手口やアクションシーンは引きつけられるが、社会問題までは描き切れていない
東南アジア(フィリピン)の匂いや、景色が頭の中で感じられるような作品です。拉致監禁の手口やそこからの主人公の脱出、マニラの警察のトーラスの活躍などはスピード感があってよかったです。
その一方で、ODAや建築業界の談合などについての考察は、深みが無く、終盤は一気にまとめてしまった感があるのが残念です。小説を読みながら、人の生き様や社会問題を学ぶのが好きなのですが、ちょっと今回は消化不良でした。
5つ星のうち3.0
深みのないアクション小説
主人公が罠に嵌められるという出だしは読者をぐっと引き込み、いくつかあるアクション・シーンは上手く書けていてはらはらさせられる。アクションさえ楽しめればよいという読者にはお勧め。しかし、それ以上のものはなく、物足りない作品である。
同じ冒険小説でも船戸与一の作品のように地元の社会や風俗を濃密に描くでもなく、日本の経済援助を題材としているが、援助についてきちんと書いてもいない。また、作者のボキャブラリーの少なさがこの作品を一層深みのないものにしている。
例えば「唇を噛んだ」という表現が多出するが、作品のリアリティーを損ない、漫画的にしている。
また、冒頭で主人公が罠に陥れられ、そのまま罠を仕掛けた者の意図に従って職を失い、任務につくというのも現実感がない。ストーリーも理屈を捏ね回したという感じ。読後、心を動かされることもなく、心が洗われることもなかった。
5つ星のうち4.0
公正取引委員会の審査官
公正取引委員会の審査官が汚職嫌疑の罠にはめられる最初の出だしはスピーディで引きつけられたが、そこから密偵としてフィリピンへ赴任する過程は何だか違和感が残る。密偵対象の旧友、その家族、フィリピンの地元警察官などの人物描写、そしてアクション描写は印象的。最後のどんでん返し(?)は楽しく読んだが、真犯人についてはやや不満(ちょっとそれは反則じゃない?と言いたくなりました)。
5つ星のうち4.0
これこそ男の世界だ・・・。
公正取引委員会の審査官である主人公は、汚職の嫌疑をかけられて仕事を失ってしまう。だけど、それには訳があって、その罠をかけた張本人から「主人公にしかできない仕事」をもらって、マニラへ。
身に降りかかる数々の危険。これこそ仕事をする男の姿?・・・そして男の友情。薦められて読んだけれど、真保さんは次々に読みたくなってしまう作家の一人になりそうです。
-ここまで-
深みがない---という指摘がある。
筋立てに、無理があるという指摘かな。
人間の頭の切れとか、追い詰められたときどう動くか---というのも、常識人ならこう動くだろうという範疇から余り外れていると、虚構ぽくなるということかもしれない。
アマゾンでみても真保さんの著書が取り扱われていないようだ。
上でふれたあたりに原因があるのかもしれない。