2011年11月7日月曜日

クマゼミの産卵管が届かない硬さと厚さ。

▲もう何年前の話だったか。

盛夏にクマゼミが光ファイバーの皮膜部分に産卵するというニュースがあった。

以来、ニュースとしては聞かなかったが、久しぶりにニュースとなっていた。

クマゼミの被害を完全におさえることに成功したようだ。

光ファイバーの皮膜部分が柔らかいから産卵されるのであって、硬くすればいいじゃないか…というのが一般亭な反応だろう。

だが、ここからが、技術者の独壇場なのだ。

皮膜部分を単に硬くすれば、当然作業効率が落ちる。

そこで、ギリギリ、クマゼミの産卵管が刺せない(被害がでない…という意味)硬さ、産卵できない深さを見出したということだ。

如何にも、技術者らしい話だし、筆者は面白いと感じた。

以下、新聞から抜粋。

西日本を中心に生息するクマゼミが、夏にNTT西日本の光ファイバー通信の家庭用ケーブルを、木の枝と間違えて産卵し断線させる被害が平成17年ごろから多発していたが、NTT側が21年に開発した最新型ケーブルは、3年連続で被害が0件だった。

単純にケーブルの被膜を厚く硬くすればよさそうだが、ケーブルが太く硬くなり過ぎれば敷設工事の障害となる。

NTT側とセミの攻防は、NTT西に“軍配”があがったが、その裏には猛暑とたたかう研究員たちの苦労があった。

クマゼミは、体長約6070ミリの大型のセミ。毎年79月、枯れ枝などに直径約1ミリの産卵管を突き刺して卵を産みつけるが、光ファイバー通信の幹線から枝分かれした家庭用ケーブルを、枯れ枝と“勘違い”して産卵。

ケーブルに穴を開け、中の心線を傷つけて通信を遮断させる被害が11年に初めて確認された。

その後、光ファイバー通信の敷設エリアの増加に伴い、ピーク時の20年には約2千件の被害があった。NTT西では16年と18年、クマゼミ対策で改良したケーブルを導入して被害を減らすことに成功したが、被害ゼロを目指し、今回の3代目ケーブルの開発に着手。

20年の夏には、NTT側の研究員が大阪市内でクマゼミを捕獲。

毎日約60匹のクマゼミを捕まえ、実際にケーブルに産卵する様子を観察した。

結果、ケーブルを覆うプラスチック系被膜を、産卵管でも傷つきにくい硬さに改良したうえ、さらに被膜の最薄部の厚さを約04ミリに保つことで、産卵管がケーブルの心線に達しない最新型のケーブルが完成。

開発に携わったNTTの主幹研究員は「(被膜を)単純に硬くすれば当然、クマゼミも産卵が不可能になることは分かっていたが、硬くしすぎるとケーブル開通工事の作業効率が落ちるため、そのバランスが難しかった」 と。

顕微鏡で01ミリメートル単位の刺し傷の深さを分析する毎日だったという。

現在、NTT西の事業エリアに敷設されている光ファイバーケーブルのうち、既に9割以上がこの最新型に変更済み。

21年以降も、毎年夏にクマゼミの捕獲と観察を続けてきたが、今年の夏も最新型の被害が0件だったことで、NTT側は最新型ケーブルをもって、クマゼミ対策を終了した。

「クマゼミの自然な産卵環境を維持するために、酷暑の中、冷房もつけずに実験を続けてきたので、

その開発が実を結んだことは大きな喜び」と話している。

▲補足、感想など

どうだろうか。どういう感想をもたれるだろうか。

チマチマしている? 泥臭い? よくこんなことができるなぁ? とかだろうか。

地味そのものというか、どこまでもどこまでも泥臭い…と感じないか。

まぁ、ノーベル賞とも無縁だしなぁ。派手なことでもないし、将来でも表立って賞賛されるということもあるまい。

でも…。

これが「技術者」なのだ。これが「日本の技術者」なのだ。

こういうことが「技術の進歩(小さな一歩)」を支えている。そして、まさしく日本人的だなぁ、と感じる。

おそらく、中国人とか韓国人ではこれだけ「地味なこと」を継続してはできまい。

地味で地道な作業を「独創的に」ひたすら行う。

こういう技術者のニュースを見ると、日本人はまだまだ大丈夫だと安堵する。