▲妙な表題となった。
いや、なにかというとネットでのひきこもりの記事って、子供がひきこもりでどうすればいいのか—てな文章ばかりだからだ。
役にもたたない記事だなぁと思う。なんのためのネットなんだ?
そうではなくて、こんなことをやってみたら、治療できた、あんなことをしたら通常人になった—てな記事・文章がもっと、のっていていいと思うのだが、一向にそんな文章がのらない。
それなら、と思う。
筆者の集めた記事から、そんな「こうして、こんなことをやってみたら、ひきこもりが治った」という文章ばかりを集めて載せておきたい。
--ここから--
★:2010/10/01(金)
先日、内閣府が行った「ひきこもりに関する実態調査」の結果が公表された。
「十五〜三十九歳の引きこもりは推定で六十九万六千人。この年齢層の五十人に
一人以上が引きこもっていることになります」(社会部記者)
引きこもりの原因は時代とともに変化しているという。
「八〇年代の引きこもりはスチューデント・アパシー(大学生などに見られる無気力状態)が主な原因で、
ちょっとしたアドバイスで復帰できた。
しかし九〇年代以降は、単位が取れなかったり就職に失敗したことがきっかけで
『自分は人生の落伍者』と思い込み引きこもる傾向にあります。
最近の就職難も増加の原因のひとつと言えます」(三十年間引きこもりの若者に向き合ってきた和歌山大学保健管理センター・宮西照夫教授)
実際、家族が引きこもりになってしまった場合、必ず専門家に相談するべきと、宮西教授は言う。
「引きこもりと言われる人のなかには統合失調症やうつ病を患っている方が少なからずいます。
まず最初に専門家がそれを見極めなければ、治療が誤った方向に進んでしまうことになります。
それも引きこもってから二〜三年以内に相談すること。
それを過ぎると社会復帰がより困難になります」
和歌山大学では、独自の『引きこもり回復支援プログラム』を行っている。
「回復のためには、密室状態の家庭に第三者が入ることが必要。
引きこもりの経験者から養成した『アミーゴ』というメンタルサポーターを、週に何回か自宅に派遣し一緒に遊ぶのです。
引きこもる若者には、年寄りがいくら講釈しても効き目はありません。
感性や興味が近い同世代の若者と本音をぶつけあう。
そして徐々に食事などに連れ出し、家庭以外の新たな場所に
『居場所』を作ってあげるようにサポートしていくんです。
ただし、一度外出できるようになったからといって『アミーゴ』の派遣をやめてしまうと、再び引きこもりに戻ってしまうこともあるので、
時間をかけて回復をはからなければなりません」
同時に精神科医の治療も取り入れつつ行うこのプログラムでは、半年間で約九割が外出できるようになったという。
2014/10/13(月
ひきこもり:農作業で回復を 地域活性化と組み合わせ
毎日新聞
過疎高齢化が進む中山間地域の活性化と、ひきこもりからの回復支援を組み
合わせた試みが、岡山県美作市で進んでいる。
2012年に開いたシェアハウ
スに、ひきこもりから脱しようとする人が入居し、共同生活や農作業をするう
ちに、人と自然に話したり、何かに挑んだりするなどの変化が表れた。
他にも
似たケースがあり、地元若者グループは、支援NPO法人と連携して事業化。
「地域おこしで人もおこそう」と取り組んでいる。
グループは、同市梶並地区の民家でシェアハウスを運営する「山村エンター
プライズ」。
市が委嘱する「地域おこし協力隊」出身の藤井裕也代表(27)
らが12年11月、地方に基盤を持たない人が移住しやすい環境を作ろうとシ
ェアハウスを開いた。
個室のほか、共有の居間や台所がある。狙いは若者の移
住と過疎高齢化が進む地区の活性化の両立で、耕作放棄地での農作業アルバイト収入などで生活を支える仕組みだ。
当初、ひきこもりの回復支援は想定していなかった。だが、2年間のひきこ
もり経験がある20歳代前半の男性が開設時に入居。農作業などで住民らと接
するうちに会話が増え、気持ちが変化したという。1年後には演劇活動を始め
た。
その後、シェアハウスの様子がひきこもりの人の家族や支援者に口コミで広
まり、別のひきこもり経験者らも入居。
グループは今春、ひきこもり回復支援
事業「人おこしプロジェクト」に発展させた。
対象は、「未就労・未就学の状
態から抜け出したい」と希望する15~30歳の若者。
週1回の日帰り体験や、
長期入居などを想定する。共有スペースで他の住人と少しずつ関わりながら
農作業アルバイトに出掛ける。
シェアハウスの入居者8人のうち、ひきこもり経験者は現在3人。親類の紹
介で、今年6月に千葉市から来た山本大貴(だいき)さん(21)は人付き合
いが苦手だったが、先輩住民が無理に話しかけてくることはなく、自然に時間
が経過した。
数日後、山本さんが翌日の予定を尋ねた時に初めて、藤井代表が
「こんな仕事情報もあるよ」と、畑の草刈りアルバイトを紹介。住民に草刈り機の動かし方などを教わりながら、農作業を始めた。
今はシェアハウスに客が訪れると、お茶を出したり、子供に折り紙を教えた
りと自ら動く場面が増えた。藤井代表は「変化が分かるのがうれしい」と話す。
「人おこしプロジェクト」の問い合わせは、山村エンタープライズ
◆ひきこもり回復支援で知られる宮西照夫・和歌山大名誉教授(精神医学)の話
ひきこもり中は批判される場合が多く、誰かに感謝される機会が少ない。農
業の担い手不足などで困っている地域に住み、仕事をして喜ばれる経験は、ひ
きこもりから脱する良いきっかけになる。また、ひきこもり経験があり、当事
者の心情がわかる「先輩」との共同生活も支援になる。
2012/01/09(月)
9日午前7時半ごろ、愛知県美浜町北方宮東の戸塚ヨットスクール(戸塚宏校長)で、
入校生の男性(21)が3階建ての寮の屋上から飛び降りた。
病院に運ばれたが午後0時10分ごろに死亡。自殺とみられる。
スクールでは昨年12月20日、入校生の男性(30)が飛び降り自殺を図り、重傷を負ったばかり。
戸塚校長は「自殺につながるような大きなトラブルや、変わった様子はなかった」としている。
県警半田署やスクールによると、屋上に「生きていくのがつらい。
死にたい」との内容の遺書2通や男性のものとみられる眼鏡が残されていた。
男性は広島県出身。引きこもり状態だったため、2010年12月から入校していた。
戸塚校長は取材に「われわれが管理する場所でこういう結果になったことは申し訳ないが、
教育方針を変えることはない」などと語った。
2012/04/21(土)
ダイヤモンド・オンライン
自分の身体を客観的に見て「体を整える」やり方で、引きこもっていた2人の息子を回復させた母親がいる。東京都に住む
山本光代さんだ。
「引きこもりは、気力だけではどうにも解決できない」
こう明かす山本さんは、引きこもっていた長男と次男の筋力が衰えていたため、母親自らが懸命に体のメンテナンスをすることに
よって、回復を手助けしたという。
大きな悩みがあるときに、ドキドキして呼吸が浅くなる経験をした人も多いに違いない。
しかし、体の仕組みから考えていくと、
それは病気ではないと山本さんはいう。
「感情がトラウマだったとすると、その記憶を思い出すと、体に出てくるんです。
自分の体に感じたものは、心ではなくて、体が
覚えているんですね。
だから、体が一緒に反応してくるということは、体を治さなければいけない」
■教師を辞めてカイロプラクティックの道へ 長男は見事大学卒業、次男は専門学校に
山本さんは2年間、カイロプラクティックの学校で勉強。2005年、東京メトロ丸の内線南阿佐ヶ谷駅近くに「324カイロプラクティック
オフィス」を開業した。
カイロプラクティックとは、100年ほど前に米国で発祥した骨格を矯正する療法で、解剖学や神経学に基づいた手の技。
筋肉の
硬い日本人向けには、まず筋肉をほぐしてから、骨格のゆがみや肩こり、腰痛などを整えていく。
この療法を学び、実践したことによって、山本さんの長男は、大学を卒業し、国家資格の取得に向けて勉強している。
また、
次男も自力で高校認定を取得。ITの専門学校にも入学し、就職活動をしているという。
「息を吸うと、肋骨筋が上がったり下がったりすることによって、肺を膨らますんです。
ところが、背中が曲がったり、骨格が曲がったり
することによって、肺が膨らまなくなる。息の容量が少なくなってしまうんですね。酸素が足りなくなれば、血流が悪くなる。体の筋肉
が緊張して、血行に異常をきたし、『心拍変動』にも影響するのです」
山本さんは、高齢者が将来、寝たきりや要介護にならないよう、筋力の低下を防ぐことが大事だという、日本整形外科学会が
2007年に提唱した「ロコモティブ症候群」に注目した。
「歩いていない、動いていないということは、筋肉を使っていない。気持ちで動きたいと思っても、体がついていけなくなる。引きこもり
の人たちもメカニズムは同じなのではないか」
多くの人たちは、体は自然に動くものだと思っている。ところが、ねん挫などで痛みをかばう姿勢がずっと残っていたりすると、体の
左右のバランスが変わってくると、山本さんは説明する。
つまり、右に傾いていれば、右足に負担がかかり、体は中心軸からブレるというのである。
「どうしたら直接、体がほぐれるのかというと、温めてあげるとか、スキンシップをすることです。私たちはお薬を使えませんので、
アロマオイルを併用しています。嗅覚や皮膚からだと、すぐに効果が表れます。
骨盤が曲がると、必ず首に来ます。気持ちがうつになったら、姿勢を正して後ろ向きになることはない。どうしても前かがみになるので、首に負担がかかる。うつのときでも、薬を飲む前に、
まず首を治して様子を見ることです。体が動くようになれば、気持ちも違ってきます」
実際、引きこもっていた当事者たちも、こうした施術を受け、回復していったケースも少なくない。
■肩の高さや体のバランスのずれが解消!筆者のカイロプラクティック体験記
「肩の高さが、違いますね」。そう指摘を受けた筆者も、山本さんのカイロプラクティックを体感してみることにした。どうやら、左右の骨盤が違うらしい。
用意されたメニューは、ヒバのオイルを入れた足浴と、手のほぐしだ。まずジャケットを脱ぎ、ベルトを外して、右と左の重さを片足ずつ測る体重計に乗ってみた。左右の体重計の差がゼロに近ければ近いほど、バランスがとれていることになる。ちなみに、左右差が8キログラム(約18ポンド)あると、内臓の具合が悪い。25キログラム(約55ポンド)以上あると、脳梗塞などの疑いがあり、
病院に緊急入院してもらったケースもあったという。
「病気する人は、血流が変わってくるので、バランスが崩れているんですね」
結果は、右67ポンド、左80ポンド。13ポンドも差があって驚いた。「左のほうに負担がかかっていることになります。肩が右のほうを向いていますよね。それに、立ったときに、手の位置や長さも左右が違う。なぜかというと、右の肘がよじれていますね」。右の掌が下に向かってよじれていた。
「男の人は、肘が曲がると、目に来るよ」そういわれながら、右手をほぐしてもらい、意識しなくてもまっすぐになるよう調整してもらった。
次に、手だけを入浴。湯には、神経を安定させる効果のあるヒバのオイルを入れた。そして、湯の中で問題のある指をほぐしてもらった。
「右の人差し指が硬い。どうしても右手に問題がありますね」。1日中、パソコンを打ち続けている生活とも関係があるそうだ。さらに、ズボンをまくって、足温浴に挑戦。ヒバの香りが森林浴をしているような気分にさせる。ヒバは、防かび剤やシロアリ予防に使われる。
水虫予防にもいいらしい。
「足首の形は、左のほうに問題がある。ねん挫や骨折、子供の頃、階段や滑り台から落ちたことなどが、ずっと影響していることが多い。こうやって、自分の負の部分を知ることが大事なんですよ。自分でメンテナンスを心がけると、状況は変わってくるのです」
取り揃えられているエッセンスオイルは常時、20種類以上。ローズマリーのオイルを湯に入れると、記憶力がアップするという。また、
元気がない人には、オレンジの香りがいいらしい。このままの状態で右手から順番にほぐしてもらっていると、うつらうつら眠くなってきた。
「肘を治すことによって、肩の位置も変わってきます。肩こりや首の調整をするときは、原因の手からほぐさないと意味がない」
体がだんだん温まってきた。湯に浸かる右足が少し内側のほうを向いているのも、バランスが悪いからだという。
そこで、アクチベーターという器具を使って、ダダダダダという振動を右のふくらはぎに当ててもらった。脊椎が瞬間的にリセットされる
効果があるらしい。
「時間が経つと、また戻ってしまう。ただ、3週間に1回くらい、リセットを繰り返していくことによって、変わっていくんですよ。期間は人によって違います」。こうして再び、体重計を測ってみた。左右の差は、わずか3ポンドほどの違いだ。原因は病気でなく、筋肉の硬さだった。
「池上さんもクリスマスブーツ状態で、足としてはうまく機能されていない。ふくらはぎをもっとメンテナンスしてあげれば、疲れは取りやすくなると思います」
■心の回復は体を改善することから
2017/05/01(月)
ひきこもりの人の自立支援をうたう業者に、実態のない活動名目で多額の契約料を支払わされるなどの被害が各地で相次いでいる。関東在住の20代女性と母親は4月、家族間のトラブルを相談した東京都内の業者を相手取り、慰謝料など約1700万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
女性は自宅から無理やり連れ出され、暴力や脅しで軟禁状態に置かれたとしている。
3カ月分の契約料約570万円を支払ったが、支援は行われなかったという。
公的な相談窓口が限られる中、民間業者が各地で急増。拉致・監禁まがいの手口で連れ出し、高額の料金を請求する悪質業者の存在も指摘されている。
2017/05/21(日)
精神的な問題を抱えながら自立や社会復帰を目指す人の「中間的就労」の場として、農業体験が成果を上げている。
栃木県若年者支援機構は2011年から、200人以上の若者を県内の農家や工場などに派遣し、7割を自立に導いた。
自然相手の農業はストレスが少なく、作業も多彩。働くことや人付き合いの訓練になり、体力が養われるなどの効果が見込めるという。
■笑顔戻った 毎月受け入れ
宇都宮市 相良さん
宇都宮市で米やアスパラガスを栽培する相良利和さん(65)、律子さん(64)夫妻は同機構を通じて毎月1回、人付き合いが苦手だったり、鬱(うつ)など精神面で問題を抱えていたりする若者3人を受け入れている。
若者には、ジョブトレーナーと呼ぶ指導員1人が付き添う。
午前9時から午後4時まで、肥料散布やアスパラガスの管理、田植えの補助などさまざまな作業をしてもらう。律子さんは「家族だけでは大変な作業を手伝ってもらい、とても助かっている」と笑顔で話す。作業する20、30代の若者も笑顔が絶えない。農作業の経験はなく、楽ではないが「作物が成長するのを見るのはうれしい」「体力もついて良い汗が流せる」と前向きだ。
受け入れ始めたのは4年前。どんな作業ができるか分からなかったが、トレーナーが付き添うため「心配はなかった」。4人分の労賃として同機構に支払うのは1日2万円。
求人をしてもなかなか人手が確保できないだけに、「大きな力になっている」と評価する。
農作業を通じ、若者も変わってきた。律子さんは「最初は話し掛けてもほとんど反応がなかった男性が、何度も来るうちに笑顔になった。
人付き合いが苦手と感じないくらい協力してくれる」と実感する。昨年は、農業の体験をきっかけに地元の農業法人に就職する若者も出てきたという。
■中間的就労に最適 自然が相手仕事も多彩
栃木県若年者支援機構には、働く意志はあるものの、習慣や体力がなく就職が難しい15~39歳の若者が相談に訪れる。
多くが社会での挫折や引きこもりを経験、精神疾患などの問題を抱えるなど、他人の助けがなければ自立への一歩を踏み出せないでいる。
このため同機構では、農業などを経験することで自己管理能力や体力、コミュニケーション能力を養い、自信を持って就職してもらおうと半年間の「中間的就労」を提供する。
協力企業30社と農家5戸から仕事を受注し、年間約30人を派遣。現在、13人の若者が登録している。
工場などでは室内の狭い空間に常に多くの他人の目があり、対人関係が苦手な人にとってストレスが大きく、さらに自信を失ってしまうこともあるという。
一方、自然相手の農業はストレスが少ない。同機構の大森里史さんは「伸び伸びと作業でき、参加しやすい。日々違うことが経験でき、訓練には最適」と、農業の可能性を感じ取る。
■若年無業57万人
厚生労働省によると、15~34歳で収入を伴う仕事をしていない人のうち、家事も通学もしていない若年無業者は57万人(16年)で、02年以降約60万人で推移する。
若者の就労支援を担う同省キャリア形成支援課は「景気は上向いているが、すぐに就職が難しい人は減っていない」とし、農作業の利点について「実際に体を動かして体力がつき、規則正しい生活リズムが身に付けられる。作物を育てることで責任感も生まれる」と指摘する。
2018/02/03(土)
義家弘介
人間って、本来、引きこもれないと思うんですよ。自分も16から17まで里子に出されて、引きこもりですよ。そうすると、狂いそうになっちゃうんですよね。やることがない。
瀬戸内:何をしてたの?
義家:俺の場合、本を読んで何とか精神を安定させた。でも今の子供って、インターネットでチャットもできるし、ゲームもできる。それに没頭していると辛さを感じなくていいわけです。要するに引きこもれる環境がある。ひどい奴になると、一日中、匿名の誰かとチャットでつながり続けるわけです。
瀬戸内:そんなに…。
義家:インターネットをしていると、どんどん時もたちますしね。だから引きこもりをしている限り
彼らに未来はありませんね。だって、履歴書に5年も空白のある人を社会は必要としないでしょ。
立ち止まったり、引きこもってもいいという寛容さを示すのは簡単ですが、それを容認することによって
そいつにどれだけ人生の重荷を背負わせてしまうかということです。俺自身、高校中退したという荷物が一体どれだけ重かったか。
人の10倍、100倍やらないと、同じ扱いをしてもらえません。容易に引きこもりを認める人は、一生、そいつの荷物を一緒に背負っていけるのか。そこを考えてほしいですね。
瀬戸内:義家さんは自分の教え子に引きこもりの子がいたら、どういうふうに対応するの?
義家:まず、部屋からたたきだしますよ。俺が一回やったのは、そいつの部屋に行って、ゲームをぶっ壊しました。グシャグシャにね。もちろんあとで弁償しましたけど。こんなことやってる場合じゃないだろう、なぜ学校に来られないのか、悶々と考えろと。
2018/03/01(木)
長年の引きこもりから脱し、東日本大震災の被災地支援に赴いた体験記を、中村秀治(しゅうじ)さん(32)=長崎県佐々町(さざちょう)=が2月に出版した。
要望を尋ねて回る仮設住宅訪問は緊張して声が震えたが、被災者から必要とされていることを実感した。「無価値だと思っていた僕の存在を受け入れてくれる人たちがそこにいた。僕は救われた」と記した。 (辻渕智之)
「…あの…、ひ、必要な物や、お困りごとは、ありませんか……」
仮設住宅のチャイムを押すのに、人と話すのが怖くて足がすくみ、指先が震え、吃音(きつおん)が出た。それが、いつしか年配の被災者からは明るく抑揚ある声で「おーい、中村くん!」と呼ばれるようになる。かつて流行した歌謡曲「おーい中村君」のフレーズだった。
中村さんは小学六年から二十五歳まで家に引きこもった。
夜間高校に通った四年間と、卒業して十カ月働いたのを除き、家族以外と人間関係がなかった。震災後に「自分も行きたい…」と母親にぽつりと言って自ら志願したものの、「僕はなぜ被災地でボランティアをしているのか」と自問は続いた。
活動は宮城県内で二〇一一年九月から約三カ月に及び、その終盤。仮設で一人暮らしの高齢女性は「もう支援は結構。ただ、誰かが会いに来てくれるだけで。あなたでいいんです」と大粒の涙を流した。家族を失い、地域の人と離れ、孤独を感じている被災者のつらさと、引きこもりで抱えてきた孤独の苦しみが重なり、中村さんも涙した。
引きこもりに詳しく、中村さんと交流のある横湯(よこゆ)園子・元中央大教授(教育臨床心理学)が出版を勧めた。「大変な思いをした被災者から『あなたはあなたでいい』と言葉を掛けられ、中村君は逆に支えられた。引きこもりの青年が外に出て、自分を取り戻していく貴重な体験」と指摘。「おっかなびっくりだった彼が人前で発表をし、対人関係も自信を持って結べるように変わった」と話す。
中村さんは絵を描くのが好きで、本の表紙のイラストも自ら手掛けた。
最近は引きこもりの当事者や家族の支援を続ける地元のNPO法人に通い、小説や漫画の創作をしている。知り合った被災者や支援者とは連絡を取り合っている。
本は「おーい、中村くん ~ひきこもりのボランティア体験記~」(本体千五百円)。問い合わせは、発売元の生活ジャーナルへ。
2018年8月28日
物理的にも精神的にも孤立している?
親が子どもにできることは
高齢者が「中高年ひきこもり」を養うという地獄
「8050問題」をご存知でしょうか。8050とは、80代の親が、引きこもり状態にある50代の子を養っていることを示しています。
特にひきこもりの長期化で、親子共々が高齢化し、社会から孤立・生活に困窮している世帯が増えているのです。
では、これの何が問題かというと、生活保護世帯の増加につながるだけではなく、絶望して殺人事件にまで発展するケースが出ることです。
そのため、政府もようやく2018年秋から、「40~64歳の引きこもりの実態調査」を実施するということです。
何十年間も引きこもったまま、親が高齢になり、自分も歳を取って、家ごと社会から断絶されると、もはや社会復帰の可能性はゼロ。その人そのものが社会から存在しないことになってしまい、親の死後は生きていけないリスクも指摘されています。
そこで今回は、わが子を引きこもりにしないための教育法や、抜け出させる策について考察したいと思います。
引きこもりは精神的にも孤立している
本来、心が成熟した人間は、ひとりでも誰かと一緒でも、満足できる時間を過ごすことができます。 仮に物理的な状態としては孤独であっても、精神面では孤独ではないですし、自ら人間関係を遮断するわけでもありません。
しかし引きこもりは、自分の方から人との関りを避けて、物理的にも精神的にも孤立している状態です(なお、ここで言う引きこもりは、ウツや精神障害、疾病等で引きこもっている人を指すものではありません。それは医学的治療を受けるレベルの人ですので、ここでは対象外としています)。
引きこもりになる人の多くは、プライドと自己愛が強すぎるのです。だからちょっとでも人間関係がうまくいかないと、すべてが嫌になります。
強烈な自己愛のため、自分の意見が受け入れられないとか、仕事ぶりを注意されただけで自分の全人格を否定されたように感じ、それがガマンできません。それでいて、むきたてのゆで卵のようにナイーブで傷つきやすい性格を持っています。
さらに、承認欲求も非常に強い傾向があり、他人から認めてもらわなければ自分の存在価値を確認できません。
そのため「誰も自分のことをわかってくれない」「認めてもらえない」「無視された」などと過剰に反応し、過剰に傷つきます。
たとえば「独りランチ」が続いただけで、会社で孤立している、皆から浮いている、無視されていると感じてしまう。
しかし実際には、周りは本人の気持ちを軽んじようなどという発想をそもそも持っていないことがほとんどなのですが、なぜか彼らは自分に敵意があるかのように受け止めます。
なぜ「引きこもり」になるのか?
なぜそういう性格が形成されるかというと、多くの場合、幼少期に親から十分な愛情を受けていないことに起因すると言われています。
愛情不足で育ったために大人になっても強い愛情飢餓感を抱き、それが自己愛へと形を変えて自分にすがるようになります。
だから何より自分が大事なのです。誰かに愛してもらいたい。周りに評価してもらいたいという欲求が強い。
愛情不足とは単に放置されるといったことにとどまりません。高すぎる親の期待、親の価値観の押し付け、厳しすぎるしつけや服従の強要、過保護、子への迎合など、様々な精神的虐待を含んでいます。
そのため、適切な自我や自己肯定感が育たず、つねに他人や社会からの視線を気にして、自分の思い通りにならないと、自分の存在が否定されたかのように感じてひどく傷つくのです。
それを恐れて身動きが取れなくなり、人との接触を避けるようになります。人と関わることがなければ、自分が傷つくこともないからです。
親が子どもにできること
こうした事態を防ぐために、親ができることは何でしょうか。
それは、子が適切な自己肯定感、自己有能感、自尊心、主体性を持てるような子育てをすることです。
具体的には次のようなことが挙げられます。
<愛情をたっぷり注ぐ>
親から「なんでこんなこともできないんだ!」「そんな子は知りません!」などと言われて育つと、子は自分の存在に不安定感を感じてしまいます。
しかし親が子に無償の愛情を注ぐことで、子は「自分はここに存在していいんだ」「世の中は自分を受け入れてくれている」「自分は大丈夫」という感情を抱くことができます。それが「社会は自分の敵ではない」「人は自分に攻撃してはこない」という安心感が持てます。親は子にとっての安全基地ですから、子が甘えたいときは、親はどっしりと構え甘えさせることです。
<子どもの意志を尊重する>
親があれこれ先回りしたり、親がすべて決めたり、親の価値観を押し付けたりすると、子は自分の頭で考える機会を奪われ、自ら主体的に何かに取り組むという姿勢を失ってしまいます。
そこで、子の判断を促し、それを尊重することです。たとえば塾や進学などで親の価値観を押し付けない。勉強しろとか宿題しろなどと強制しない。大人でも強制されるのは嫌ですが、子どもはもっと鋭敏に感じてしまうものです。
そして子がやりたいということは、なるべくさせてあげる。子の好奇心の目をつぶさないようよく観察し、子が夢中になれることを見つけるサポートをすること。そして子が没頭できる環境を整えてあげることです。
自分で考えて自分で判断し、何かに没頭した経験は、集中力を養い、主体性を育み、自分はできるという自信につながります。
子のために親ができること
<親が精神的に成熟しておく>
親自身が情緒不安定だとか、夫婦喧嘩が絶えないという家庭では、子は自分の居場所がないと感じ、やはり精神面でも不安定になります。
親は子の前では仲よくし、何があってもアタフタすることなく「大丈夫」という態度を崩さないことです。それが子にとっての全幅の信頼感につながります。
親が他人の悪口や陰口を言う精神性では、子は無意識に耳にフタをするようになり、人の話を聞かない子になってしまいかねません。
そして、子に対してウソはつかない。約束は守る、守れない約束はしない、もし約束を破ったら子に対しても誠実に謝ることです。
<子の話をしっかり聞く>
親子の会話は信頼関係、つまり人間関係の基礎になります。なのに、いつも親は子の話を遮って「そんなことはいいから」とか「言い訳するな」とか「忙しいからあとで」などと対応していると、子は親に言っても無駄となり、親に対して不信感を抱きます。
それがつまらない話でも言い訳であっても、お小遣いの値上げ要求でもスマホを買ってくれというおねだりでも、最後までじっくり聞くことです。
そして前述のとおり、否定や批判ではなく、子の意志をなるべく尊重してあげること。「親は自分のことを受け入れてくれる」「親は自分のことに関心を持ってくれている」という実感は、自尊心や自己肯定感につながります。
<ネガティブな言葉を使わない>
親の思考は言葉に現れ、それが子に伝わります。親が豊富な語彙で論理的に語り掛ければ、子の思考回路もそうなります。罵声や乱暴な言葉、否定的な言葉を投げかければ、子もそうなります。
子どもは自分に対する親の評価をそのまま受け入れ、そのとおりに行動するようになります。
だから「おまえには無理」と言われれば、「そうか、自分には無理なんだ」と信じますし、「バカ」と言われればバカのように振る舞います。「〇〇ちゃんを見習いなさい」などと他人と比較されると卑屈になる。だからこそ、家庭内ではポジティブで発展的な言葉を使うことです。
<挑戦を称え、失敗を認め、努力をほめる>
失敗や間違いを叱ると、できることしかやろうとしなくなります。そこで親は子が果敢に挑戦した結果の失敗は叱らず、むしろ称えることです。
テストの点数が悪くても叱らず、「次はどうすればいいと思う?」と対策を一緒に考える。100点をとっても「100点とってえらいね」と結果を褒めるのではなく、「頑張ったね」と100点を取るためにやってきた努力を褒める。努力を褒めれば、点数に関係なく「努力すること」を重視するようになるからです。
「引きこもり」を抱える親はどうするべきか
前述のような人格形成は幼少期の親との関わり合いが大きな原因とは言え、すでに現実に引きこもりの子を抱えてしまった場合はどうすればよいのでしょうか。
親ができること、その方法のひとつは、やはり家から追い出して「ひとり暮らし」をさせることです。
引きこもりは、引きこもることができる場所があるからできることですが、親子ともに共依存関係に陥っていることが引きこもりを長期化させます。
実家にいて親に依存していると、生活設計を考える必要がないですから、自立心が育まれない。そのため、どうしても精神的に未熟になりがちです。
親の方も「自活しろ」と言えず、むしろ子がそばにいたほうが安心だと依存している(あるいはあきらめている)わけです。
多くの場合、親は子よりも先に死ぬ
そうやって親子が相互にもたれあい、何の職業的スキルも経験も経ないまま年月を重ね、ずるずると婚期を逃してどうにもならなくなってしまう…。
しかし、たいていの場合、親は自分より先にこの世を去るわけで、親の年金という収入源もいつかは消滅します。家事をしてくれる人もいなくなる。
自立できていないのに、その後の約30年以上の余生を親無しで生きていかなければならないという、大きな問題をはらんでいるのです。
だから仮に経済的にはしんどくても、当初はあまり人と関わらないアルバイトなどで稼いで自分で家賃を払い、水道光熱費を払い、自分で家事や食事をして、自分ひとりの力で生活を成り立たせる。そうやって「自分ひとりでもやっていける」という自信が、社会復帰への足掛かりになります。
どうやって「自立」させるのか?
ただし引きこもりの場合、そもそも会話が少なく親子の信頼関係が希薄である場合が多いため、いきなり「出ていけ」などという乱暴な対応は、本人を意固地にしてむしろ関係を悪化させることになりかねません。
少ないサンプル数ではありますが、引きこもりから抜け出せない家庭では「親が見栄っ張りで、他人の目を過剰に気にする」「親自身が引きこもりを社会的落伍者と捉え、周囲に隠そうとする」「子の長所や個性を無視し、あきらめている」という傾向があります。
そこでまずは、親は子を愛している、信用しているという姿勢を見せ、少しずつ会話する頻度を増やすこと。引きこもりは悪いわけでもないし、本人にも長所があり才能があり、価値があることを認めること。
そのうえで、子がどうしたいのか、どういう考えを持っているかを否定せず引き出してあげること。
親の意向を押し付けるだけでは反発するので、子が感情的にならず自分の将来展望に思考が及ぶようになるまで、辛抱強く受け入れ続けることです。
自治体や専門家への相談も視野に
そうした自発性の芽が出てきたら、親には親の人生があり、子は子の人生があること、親自身ももう支え続けるのは難しいということ、そして自立してほしいと伝える。
場合によっては、子をその家に残して、親が別の住まいに引っ越すなどの手段が必要かもしれません。
むろん、それもできないほど重症の場合は、社会復帰支援や職業訓練支援といったサポートが必要で、それは自治体や専門家に相談する必要がありそうです。
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筆者の目からみて、そうおかしくないと感じる記事をのっけてみた。
冒頭でふれたとおり、ひきこもりに関して、「こうしたら、治療できた」という文章が少なすぎる。
☓☓人集まれば文殊の智慧—とかいうことわざがある。
ネットというものが、そういう社会的な叡智を与えるツールであってほしい。