2020年7月30日木曜日

燃ゆるとき  高杉 良著 新潮文庫 平成5年4月刊行  感想

赤いキツネと緑のタヌキ といえばもう十分かな。

 東洋水産の森和夫社長の実名小説だ。

 森さんは、4%という生存率のノモンハンでの奇跡的な生き残りの一人なのだ。

 気も狂わんばかりの恐怖の中、絶対絶命という危機を乗り越えた人の強さというものをこれほど感ずることはない。

 アマゾンの書評もみておこう。

 -ここから-

赤いきつねで有名なマルちゃんの東洋水産。その東洋水産の創業社長の実名小説です。今でこそインスタントラーメンなどの代名詞的な会社ですが、創業当社は数名の社員で社名のとおり冷凍マグロを売買する水産会社であり、何度も倒産の危機にさらされていたとは驚きました。ここまで大きくなった会社の創業社長というものは有無を言わせないリーダーシップと目を見張るほどの経営手腕と金銭感覚、そして運を持ち合わせているものですが東洋水産の創業者である森社長は生まれ持った人間性と正義感によって会社を大きくした数少ない人だと思います。そんなことを考えながら食べる赤いきつねは格別においしく感じます。


会社が成長するさまざまな段階を垣間見れる

「赤いきつねと緑のたぬき」で有名な東洋水産の実名小説である。小さな事務所でたった大手商社第一物産(現三井物産)、先行大手食品会社(日清食品)などのやくざやマフィアまがいの妨害との戦いがこのドラマの中核にデンと構えている。フェアな競争とは到底言いがたい。ビジネスとは力があるものが勝つ弱肉強食の世界なのだ。全体を通して、どうして東洋水産が倒産の危機を何度も潜り抜け現在のように輝く大企業として生き残ってきたのか考えてみた。小説でしか東洋水産のことを知らないので考えの元となる材料は限られているのだが、小説を読む限りではやはり経営者森の一貫した経営に対する考え方があるのだと思う。柱がしっかりしているから多少の地震ではびくともしなかったのだ。ベンチャー企業における社長の役割は非常に重要だと思った。


赤いキツネと緑のタヌキの裏側でこんなに奮闘していた日本人に感服し赤いキツネと緑のタヌキは、まま食しておりました。オイルショック時にカップヌードルが便乗値上げと叩かれ10円程安く買える時を実体験しています。その裏側で、こんなに奮闘していた日本人の皆さんがいたことを、知り、熱く読み進めておりました。身近なマルちゃんが、もともと志高いが、小会社だった事は今知りました。とても面白く、楽しく、熱くマルちゃんを応援しながら読み進めておりました。もちろん筆者のペンの力にも感服致します。ありがとうございました。


あの赤いキツネと緑のタヌキでお馴染みの東洋水産の森和夫社長の物語です。

あらすじは、森和夫社長がマグロを冷凍や冷蔵にして輸出する横浜冷蔵庫を設立するところから始まる。設立当初は4人くらいの小さな会社だったがマグロの輸出とは別にハムやソーセージなど加工食品も手掛けるようになりどんどん成長する。社名も横須賀水産から東洋水産に改名。東洋水産は、黒字化していたが融資を受けていた第一通商から東京水産興行との合併話を持ち掛けられる。この東京水産興行が赤字会社で合併したことにより東洋水産も赤字に転落する。またこの時に東洋水産の株式を大量に第一通商に取得される。東洋水産の森社長も第一通商の干渉により思い通り仕事が出来なくなり辞めることを第一通商に申し入れる。第一通商としては森社長を辞めさすわけにはいかないので東洋水産の株を東洋水産に戻す。

東洋水産は油揚げ入りのカップ麺の「赤いきつね」を武田鉄也氏を次に東洋水産が行った事業はアメリカに進出してマルチャンINCという会社を設立する。このマルチャンINCの最初の経営者がデラード氏という人物である。このデラード氏が曲者で口は達者だがやってることは、はちゃめちゃで商品が販売もされてないのにCMを放送してたりして会社に損害を与えていた。この詐欺師みたいな経営者デラード氏は森社長に解任された。またこの頃に日華食品(現実には日清食品)と米国でカップ麺の特許争いにも巻き込まれる。

日華食品の安藤福一社長(現実には安藤百福 社長)と東洋水産の森和夫社長の間でカップ麺特許問題で話し合いが行われるが決裂に終わる。裁判で3年ほど闘争ののち実質 東洋水産の勝訴で特許問題は解決する。マルチャンINCは、何人も経営者が変わったが上手いこといかず赤字経営のままだった。深川氏がマルチャンINCの経営者になりコストダウンとアメリカ人とのコミュケーションをはかりなんとか黒字化にすることが達成された。

その後 東洋水産とキャンベル・スープ社の合併契約の解消や株式会社酒悦をクループ会社にしたりして東洋水産30周年記念で新社屋で森社長が演説しているところでこの物語は終わります。以前NHKの朝の連続テレビ小説「まんぷく」で日清食品の安藤百福社長をモデルにした立花萬平があの番組では好印象を与える描かれ方をしてましたがこの小説では安藤百福社長をモデルにした安藤福一が恥知らずのとんでもないやつみたいにボロカス書かれていたのにはびっくりしましたw

 -ここまで-

 森さんという人の粘り強さがとにもかくにも印象にのこる。

 面白い小説だと思う。