2012年6月6日水曜日

大津波の来襲を技術者が想定しない訳がない。


▲東電内部で、原発に関連する担当者達全員が、昨年のような大津波が来襲することを予測できなかったと結論づけているようだ。
ふ~んと思う。
全員?。
少なくとも原発を建設した技術者は予測しているし、また、現地で保守管理をしている技術者もおそらく予測している。
じゃ、なぜこういう結論の報告書となるのだろうか。
さて、昨年の東日本大震災の核心部分はなんだろうか。
それは「規模の大きさ」だ。
1000年~1200年に一度というマグニチュード9.0という規模の大きさだ。
1000年に一度というなら、それこそ、宇宙人が攻めてきたらとか、小惑星が地球に衝突したらてな感じの話であろう。
だから、通常の技術者にとっては「想定外」なのだ。
そういう意味では「虚を突かれた」形となった。そのあたりで、上のような結論としたのかもしれない。
しかし、技術者に限れば、少なくとも考えなかった(想定していなかった)ということはない。
必ず、考えている。
ただ、報告書をまとめる段階で、aという技術者が「そういう状況も考えていた、提案書も提出した」とか発言した場合どうなるだろうか。
まず、aという技術者の売名行為と取られかねない。また、提案書を受け取った上司は、それを無視したことになり、「お前はなぜ無視したんだ?」となって、その上のものから責任を追求される。
もうすでに事故は発生してしまったのだ。今更、誰かが賢(かしこ)ぶらなくてもと。じゃ、全員バカになりましょうという経緯で、上の報告書となったのではないのか。
以下。新聞から抜粋。

東京電力が近く公表する予定の福島第一原子力発電所の事故調査の最終報告の案の中で、 政府の事故調査・検証委員会から「見直す契機があったのに見過ごされた」と指摘された 津波対策について、津波の研究や調査がまだ確定していなかったことなどから、関係者全員が、 今回のような大津波を想定できなかったのが実態だったと結論付けていることが分かりました。
福島第一原発の事故を引き起こした想定を超える13メートルの津波について、政府の事故調査・検証委員会は、東京電力が、平成20年に10メートル前後の津波に 襲われるおそれがあるという試算をしながら対策を取らなかったとして、「対策を見直す契機があったのに見過ごされた」と指摘しています。
これに対して、東京電力が近く公表する予定の事故調査の最終報告の案では、試算は社内での 議論のために実施したもので、東京電力では、福島県沖では大きな地震は起きないと考えていたことや、今の研究では津波を引き起こす地震の震源や規模のモデルが 確定していないことなどから、社内の関係者全員が今回のような大津波が来るのを想定できなかったと結論付けていることが分かりました。

▲補足、感想など
東電という会社での技術者の地位が低いのだろうな、と思う。
トップはいつも、事務系なのだろう。
会社の中では、技術者というのは「保守要員」という見方をされるのだろう。
ちょっと、東電の技術者らしい人の文章があった。ご紹介したい。
--ここから
「働くことで、少しでも被災地の復興に繋がればいい」と思い込むことで、毎日を過ごしています。
事故の原因? 国と我々電力会社の想定の甘さに尽きると思います。
「組織が官僚的だ」 「補償が足りない、遅い」という批判は甘んじて受けます。
うちの会社は、「部署が変われば 別の会社」と言ってもいいくらい、社内の風通しが悪い。
本店勤務の総務や企画といったエリート社員の中には、我々技術部門のことを“電気屋さん”と 呼んで馬鹿にしていた人もいた。
あなたも電気屋さんでしょ、と言い返してやりたかった。
--ここまで--
その保守要員から、「宇宙人が攻めてきたらどうこう」というような話をされても、経営者から言えば、優先順位というか緊急度というものがある。
そんなことでトップは、とりあえず、「大津波がどうこう」の対応をしなくても大丈夫だろうという「経営判断」をする。(筆者が担当者であってもおそらくそう判断する)
このあたりだな。
冒頭でふれたように技術者はかならず考えている。だが、技術者の危惧は、経営者にはなかなか届かない。
また、仮に届いたとしても「経営判断」というものから、緊急度が低いものと後回しにされる。
なんとも難しいな。
オレは考えていたとも言えないし、全員でオレタチは無能だったという以外にないのか。