▲民主党政権が、中部電力の浜岡原発に停止の要請をした。
その理由が、なんだっけ、15mの堤防を造るためだと。
いや、津波の高さが15mまでで、それ以上のものはない…というならば、まぁ、有効だろう。
しかし、津波の高さは、規模・震央までの距離により様々だ。
因みに、平成5年の奥尻島近くでの地震で、16mを越える津波が押し寄せている。
今度の福島原発の事故の核心は、津波の高さがどうこうではない。
津波により被害を受けることは想定の内なのだ。
そうではなくて、「バックアップの不足」ということが、福島原発の事故の核心なのだ。
以下、新聞から抜粋。
菅首相は、中部電力の浜岡原発の運転停止を要請した。
その理由は30年内にマグニチュード8程度の東海地震が発生する可能性は87%と切迫しています。
浜岡原子力発電所の置かれた特別な状況を考慮するならば、東海地震に応できるよう防潮堤の設置など対策を確実に実施することが大切。
ということだが、この理由は非科学的である。
福島第一原発の事故の経緯は、次のようなものだ:
1.地震によって原子炉は緊急停止し、核燃料の連鎖反応は止まった
2.受電鉄塔が倒壊して外部電源が供給できず、ECCSが作動しなかった
3.予備電源が津波で浸水して給水ポンプが作動しなかった
4.原子炉(GE製)の電圧が440Vで、電源車と合わなかった
浜岡が危険だといわれたのは、東海地震の震源の真上にあって、原子炉が地震で破壊される(あるいは制御できなくなって暴走する)のではないかということ、
これについてははるかに大きな今回の地震で、福島第一の原子炉は無事に止まった。
問題は、予備電源が津波で浸水したことである。
これについては、浜岡には12mの砂丘があり、予備電源と給水ポンプを原子炉建屋の2階屋上(海抜15~30m)に移設する工事がすでに行なわれたので、防潮堤は必要ない。
かりに予備電源がすべて地震で破壊されたとしても、浜岡の原子炉は東芝/日立製なので、
予備の電源車が使える(構内にも電源車がある)。
福島第一事故は、最悪の条件で何が起こるかについての「実験」だった。
日本政府は因果関係を詳細に知ることができるのだから、事故の原因は予備電源を浸水しやすいタービン建屋の中に置いたという単純な設計ミスだったことがわかるはずだ。
福島第一の場合も原子炉建屋の屋上に移設しておけば、福島第二と同じように冷温停止になったはずだ(工費は数百万円だろう)。
事故原因は特定されているのだから、なんとなく「津波対策をするまで危ない」と考えるのは論理的に間違っている。
中部電力は法的根拠のない「要請」を拒否し、保安院の説明を求めるべき。
▲補足、感想など
記事の内容が、すべて言い尽くしているとは筆者は思わない。
やはり、核心は、2重、3重にバックアップをする必要があるということであろう。
そして、福島では思想として、また物理的にもバックアップするという当たり前のことができていなかった。
それでも。
記事の趣旨には賛成する。
それは菅さんを初めとする政府の人達の考え方が、記事にあるように非科学的であり、非論理的だ。
冒頭でふれたように、なぜ防潮堤の設置なのだろう。
そこにある発想は、福島ではこうだったから…という単純というか、核心を逸らしたような話ではないか。
こんど、20mの高さの津波が押し寄せたら、想定外だった…とかいう訳か。
そうではあるまい。
津波で被害を受けることは、致し方ない。
その被害をどう小さくするか。どれだけ、復旧を早くするか…ということに智慧を注がなくてはならないのだ。
そのためには、繰り返すようだが、バックアップを2重、3重にするということだ。
核心を見間違えるな。
お金を掛けるのは、その部分なのだ。
電力、水の供給、冷却装置の回路などを2重にせよ。
それこそが、この福島原発の事故で得た教訓であり、対策なのだ。