2016年2月13日土曜日

1ドル=110円になった。

なにか世界的に通貨不安となると、自国の通貨を売って、日本円が買われる。
 世界的にみてドルと並んで信用が高いためだ。
 すると、円高となり株価が下がる---まぁ、致し方あるまいな。

 これからどうなるのだろう。三橋さんのブログから抜粋してみよう。

 --ここから--

 『【世界市場混乱】日本政府・日銀が為替介入の観測 円急騰を阻止か

 欧米の外国為替市場で、日本政府・日銀が円の急騰を阻止するため市場介入に踏み切ったとの観測が広がった。介入ではなく投機筋の荒い取引の一環との見方もあるが、政府がどこまで円高を容認するかを試す形で神経質な値動きが続きそうだ。

 この日、円相場は一時1ドル=110円台に急伸した後、2円程度値を下げた。
 値下がりのスピードが速かったため、日銀が大量の円を売ってドルを買い、円安誘導したとの見方が市場関係者に広がった。

 一方で「介入であれば、さらに円安方向に戻したはずだ」(外為ディーラー)などと疑問視する声も多い。
 米国ではドル高が企業収益を悪化させており、経営者や議会に不満がくすぶっている。
 介入で直接的に相場を円安ドル高方向に動かしたとなれば米側の心証を害しかねず、日本政府としては動きにくいという事情もある。』

 アメリカの心証を害する(抽象的ですね・・・)云々ではなく、世界中が経済失速に悩んでいる時期に、日本のような大国が為替介入などしてはいけないと思うわけでございますが・・・。世界の通貨安戦争の引き金になりかねません。

 というわけで、個人的には日本政府(日本銀行)が為替介入をしたわけではなく、投機的な動きが原因で、瞬間的に円の急落(2円程度)が起きたのではないかと推測します。

 いずれにせよ、現在は世界的に、「実体経済と金融経済の乖離の是正」 が起きている状況で、しかも15年夏まで新興経済諸国へ投資という「実体経済」を引き起こしていた「中国経済が永遠に成長を続ける幻想」が崩壊してしまった以上、日本円を中心とした先進国通貨への巻き戻しは終わらないでしょう。

 しかも、ギリシャ危機が再燃する状況で、ドイツ銀行をはじめとするユーロ圏の銀行に「不安」が広がってしまっています。現在のユーロ圏の銀行は、新興経済諸国の経済失速、マイナス金利政策(日本よりも早く導入していた)による収益悪化と、経営環境が悪化を続けています。

 結局のところ、ユーロ圏は実体経済(GDP)の悪化を金融政策「のみ」で是正しようとしたこと自体が、致命的な間違いだったのです。

 何しろ、ユーロ圏は日本同様に民間の資金需要が不足し、国債金利が低迷しています。
 その状況で、ECBがマイナス金利政策を採用したところで、貸し出し増加には結びつきません。

 とはいえ、マイナス金利政策は銀行の収益を直撃するため、ユーロ圏の銀行は新興経済諸国(特に中国)への投資にのめり込んでいました。
 ところが、中国の経済が失速し、新興経済諸国にまで「過剰設備問題」が伝播する有様になってしまいました。

 ブラジル、ロシアなど、中国に資源を売っていた国は、軒並みマイナス成長です。
 (2015年のロシアは▲3.7%、ブラジルは15年7-9月期まで三期連続のマイナス成長でリセッション中)

 新興経済諸国の資金需要が縮小し、それどころか1兆ユーロを超す投資が不良債権化する見込みの中、資金はアメリカ、日本に巻き戻り、例により我が国で、「円高、株安、国債高(国債金利下落)」 を引き起こしてしまっている。

 要するに、リーマンショック後と同じ状況になりつつあるわけですが、問題は今回の危機において、すでに「金融政策」については弾を打ち尽くしてしまっているという点です。

 政策金利はゼロ。量的緩和は継続中ですが、これ以上ペースを拡大すると、Xデイ、すなわち「銀行の国債が尽きる日」が見える日が早まってしまいます。

 Xデイが近い、という観測が広まるだけで、超円高と世界的な経済危機の引き金になりかねません。(そういう意味でも、今、量的緩和政策は絶対にやめてはいけません)
 そして、日銀の最後の手段として講じられたのが、マイナス金利政策だったわけです。

 やりたいことは、分かります。
 黒田日銀総裁の言葉通り、「イールドカーブ全体で金利を引き下げ、実質金利を下げ、消費や投資を活性化し、デフレギャップを埋める」という政策目的があったわけですが、現実には金利がどれだけ下がったところで、長期のデフレが続いた我が国において、銀行融資や消費、投資はデフレギャップを埋めるほどには拡大しません。

 単に、国債金利がさらに低迷し、銀行が打撃を受けるだけの話です。
 結果、銀行が預金者に負担を回さざるを得ない状況になっているのは、昨日、解説した通り。

 となると、次の日銀の手は?
 ないのです、もはや、日銀に打てる手は。

 というわけで、人間並みの知能を持っているならば、この時点で「政府の財政政策以外に、有効な政策手段はない」と気が付くはずです。

 日本は、マイナス金利政策で国内の銀行が外国投資にのめり込む、という最悪の段階には至っていません。
 と言いますか、今更、新興経済諸国に投資する人はいないでしょうし、いたら「愚者の極み」としか表現のしようがありません。

 もっとも、日本政府が財政出動という正しい方向に舵を切らなかった場合、日銀のマイナス金利政策はユーロ圏同様に「致命的な間違いだった」と、記憶されることになるでしょう。

 --ここまで--

 じゃ、どうすればいいのだ? という問いに対して、昨日のブログで答えている。

 --ここから--

 そもそも銀行からの貸し出しがインフレ率を引き上げるほどに拡大しないのは、民間企業や家計側に資金需要が乏しいためです。

 日本の企業経営者は、別に、「金利が高いから、金を借りない」のではありません。
 単に、儲かる投資先がない、投資収益が見込めないからこそ、投資をせず、銀行融資も増えないのです。何しろ、デフレですから。

 政府が財政出動で需要を拡大し、企業の投資機会を増やす政策をしなければならないにも関わらず、財政面は緊縮。
 プライマーリーバランス黒字化目標を頑なに維持しようとするため、財政の拡大はできない。

 間違っているのは、財政の絞り込みを続ける安倍政権であって、銀行でも日本銀行でもありません。
 というか、この状況で平気で銀行を批判できる人は、「まずは、お前が金融ビジネスをやってみろ」と、心の底から思います。

 自分は「デフレ下の銀行業」をやったことがないにも関わらず、平気他人に何かを求める。
 TPP関連で、農業をやったことがないにも関わらず、「付加価値のある農産物を世界に売れ!」
 などと、勝手なことを言っていた連中と同じです。

 まずは、自ら率先して「デフレ下の金融業」や「付加価値のある農業」をやってみせたらどうですか。
 自分ではできないくせに、他人に勝手なことを強要する人を、わたくしは「屑」と呼びます。

 いずれにせよ、債券金利の低下が銀行の収益を悪化させるのは明らかで、日本の銀行株が値を下げるのは当然でしょう。

 問題は、欧州でも類似した問題が発生してしまっている点です。
 特にまずいのが、フランクフルトに本店を置く、ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行です。

 ただでさえ、マイナス金利政策で「真っ当な債券」からの収益が上げにくい状況で、ドイツ銀行は中国を中心とする新興経済諸国への投資を拡大しました。
 新興経済諸国に投じられていたおカネが巻き戻っているといっても、きちんと現地で債券を売却し、外貨(ドル、円、ユーロ)に両替できるならばマシなのです。
 相当な額(ヨーロッパの銀行だけで、1兆ユーロを超すそうです)が、不良債権化してしまっています。

 ドイツ銀行の2015年決算は、過去最大の68億ユーロ(約8800億円)の赤字になりました。
 結果、ドイツ銀の株価下落が続き、年初からの下落率は、すでに40%を超えました。

 日本にせよ、欧州にせよ、政府が頑なに財政拡大に背を向け、「金融のみ」でデフレ化を食い止めようとした結果、金融システムにまで傷が及び始めているというのが現状なのです。
 マイナス金利政策が功を奏しなかったことを受け、「さらなる金融緩和を! マイナス金利の幅を拡大を!」 などという愚か極まりない主張を見かけましたが、これ以上の金融の緩和は「危険」です。

 結局、実体経済を置き去りに、金融経済のみで「経済」を立て直そうという実験が失敗したというのが、現在の日欧なのだと考えます。

 --ここまで--

 財政再建などという言葉が飛び交うのがおかしいのだろうな。
 借金が1000兆円を越えるからどうたら—という財務省のデマに騙されているのだろう。<日本は対外純債権国家かつ経常黒字だ>

 国土強靭化計画というコンクリートの寿命が60年程度という物理的な期限に対応した、明確な財政出動をする領域があるではないか。

 また、河川の堤防についても、昨年常総市で堤防決壊という事件があったではないか。
 スーパー堤防というものは、炭酸ガスの増加による「気象の振れの大きさ」に対応したものであろう。
 こういう分野にお金を注ぐべきだ。
 
 三橋さんがふれている通り、金融政策だけに頼りすぎるのだ。
 今こそ、国土強靭化に、スーパー堤防の建設にお金を注ぐタイミングだ。