2018年6月27日水曜日

ひょっとするとすると、人間は深淵なゲームの入り口をのぞいていただけなのかもしれない


いや、新聞でaiに関わる記事をみていて、表題のような一文にぶっつかった。
 ニュートンが言ったという「我々人類は、真理という大海の浜辺で砂遊びをしている子供なのだ」という表現に通底しているような気がした。

 囲碁とか将棋にどのくらいの歴史があるのだろうか。
 囲碁で二千年、将棋で一千年というぐらいだろうか。
 それだけの時間と多くの棋士達の対局の蓄積を「笑い飛ばす」ほど、人工知能というものが猛威をふるっている。

 以下、新聞から抜粋。

 人工知能(AI)に最強棋士が敗れて約1年。囲碁界、将棋界が様変わりしている。
 もはや人間相手では強くなれないと、トップ棋士はAI相手に研さんを積む。
 伝統的なゲームのセオリーも見直されつつある。
  「AIはスパーリングパートナー。いつでも練習相手になってくれる強豪はAIしかいない」。
 現在、世界最強と目される韓国の囲碁棋士、朴廷桓九段(25)はソウルの自宅で終日、パソコンに向かう。半年前、中国勢の壁を破って世界トップに躍り出たのは、AIによる鍛錬のたまものだ。

強みは柔軟さ
 人間が経験や常識から「あり得ない」と無視する手からも、AIは勝利につながる好手を見つけてくる。
 自身の過去の着手や戦略といったものにも縛られず、局面ごとの最善手を選ぶ。
 その変幻自在ぶり、柔軟さが人間を超える強さの秘密だ。
 実際に「AIで戦術がもっとも変わったのが朴九段」と日本国内の七冠を独占する井山裕太王座 (29)は指摘する。
 以前から定評のあった戦闘力に磨きがかかり、柔軟さが増したという。
 中国棋士はさらに開けっ広げた。
 「ほら、AIが悪手と言っているだろう。これがあなたの敗着 (敗因)だね」。
 今年3月、中国の最強棋士、柯潔九段(20)が対局後にとった行動に日本棋士は度肝を抜かれた。
 東京の日本棋院で打たれた国際棋戦、ワールド碁チャンピオンシップの1回戦。
 柯潔九段は勝利するや、最先端ソフトが入ったスマートフォンを出し、解析結果を相手の韓国の申眞謂八段(現九段、18)に突きつけた。

 申八段はぶぜんとした表情を浮かべ、居合わせた日本棋士も「マナーとしてどうか」と漏らした。
 だが、中国代表チームの一人は「AIの分析をもとに議論するのは当たり前」と意に介さない。
 日本では、AIに頼り過ぎると考える力が衰えると危惧する声もあり、韓国・中国ほどには依存していない。
 それでもAIが考え出した「AI流」と呼ばれる布石(序盤での代表的な手順)は、米グーグルのアルファ碁」が登場した2年ほど前から、トップ棋士の間で流行している。
 その種類は今や数え切れない。
 一方の将棋界は、最近、積極的に利用する若手の活躍が目立つ。
 その代表格が最年少プロの藤井聡太七段(15)だ。
 「(AIは)局面を数値ではっきり示すのでわかりやすい」。
 プロ入り前から活用して急成長を遂げた。
 従来の将棋は自陣の守りを固めてから攻めるという戦い方が主流だった。
 しかし藤井七段は相手の攻めをギリギリでかわせる準備さえ整えば、機先を制して攻め込むことで主導権を奪う。
 「まさにAIの戦い方を体得したのが活躍の原動力」とコンピューター将棋に詳しい勝又清和六段(49)は言う。

 「格言」も覆す
 AIの登場でゲームのセオリー自体、見直しを迫られている。
 将棋には初心者が守った方がよいとされる古くからの「格言」がある。
 一例が「居玉は避けよ」。一番大事な「玉」は早めに動かすようにとの教えだが、AIは「居玉でもいい形をひねり出してきた」 (藤井七段)。
 格言を守っているだけでは勝てないと、プロ棋士の間では新しいセオリーの模索が始まっている。
  「AIは人間の価値観すら変えていく可能性がある」とみるのは将棋界の第一人者、羽生善治二冠(47)だ。

 例えば「囲碁や将棋の世界では『美しさ』の定義が変わってきている」という。
 これまでプロ棋士は過去のパターンから、優勢になりやすい駒の配置を 「美しい」と認識してきた。
 逆に駒の働きが非効率だったり、負けるリスクが高くなったりする手は「美しくない」と見なす。
 だがAIは、危険を伴っても「勝ちやすい手をいくつも登場させた。
 それが新たな「美」の基準になりつつある。

 人知を上回るAIは、しばしば人間の理解を超える手を打つ。
 それを目の当たりにし「囲碁に無限の可能性があることが実感できた」と井山王座は話す。
 ひょっとすると人間は、深遠なゲームの入り口をのぞいていただけなのかもしれない。
 奥には広大な宇宙がある。
 その果ては、まだAIも知らない。

補足、感想など

 もう、涸れ果てたと誰もが考えていた古井戸の底を、人工知能というツールを使って掘ってみると、涸れた古井戸の底から滾々と水が湧き出してきた—てな表現をすればいいのかな。

 千年ぽっち、将棋をいじっていただけでは、将棋というゲームの「深さ」を人類は分かっていなかったのではないのか。単に「入り口」で、中をちょいと覗いていただけではなかったのか—と人類に向かって人工知能は「問うている」のだ。

 深いなぁ。
 囲碁も将棋も。