どこかの町をぶらぶらしながら、あんな店とか、名所を訪れる、地元の人と話す—という感じの番組が増えているようだ。
さぞかし、安上がりにできる—ということも大きいのだろうなぁ。
でも、と思う。
これって、あの名作の司馬遼太郎さんの「街道を行く」と同じやりかたじゃないか。
これはなぁ、と思う。
歩く人・訪れる人の「もっている教養」を問われているのだぞ。
以下、新聞から抜粋。
ぶらっと散歩したり、見知らぬ相手と酒を酌み交わしたり……。
出演者が
「行き当たりばったり」に人々と触れあう「ぶらり番組」が人気だ。
町歩きブームとも連動しているようだ。
東京・JR五反田駅前の立ち飲み居酒屋。「近くにお住まいなんですか」。
栗原さんが
隣り合わせたサラリーマン客に話しかける。
酒が進むにつれ場は盛り上がり、常連客との会話は途切れない。
新番組「おんな酒場放浪記」は、女性が一人で酒場に入り、酒を飲むだけの シンプルな内容だ。
プロデューサーによると、一人、二人で地元の酒場に来る女性が増えており、 「視聴者もいっしょに飲む気分で気楽に見てほしい」と語る。
BS朝日で始まった「城下町へ行こう!」も、タレントが城の周りをぶらぶらしながら、 町の歴史を探る構成。
長野県上田市のロケでは、祭りの会場を自由に動き回るピエールさんを追う。
「普通の人の反応には先が読めない楽しさがある」と ピエールさんは言う。
旅バラエティーで長寿を誇るのが「鶴瓶の家族に乾杯」だ。
笑福亭鶴瓶さんとゲストが、 普通の町を歩き、偶然出会った人の自宅を訪れる。
97年の開始当初から不変のスタイルで、 台本は使わない。
チーフプロデューサーは「今の視聴者には、不自然な演出はすぐばれる。
普通の町で
いい家族に出会い、日常に触れる。いい旅をしたなと感じてもらえる」と語る。
東日本大震災の被災地訪問編は視聴率16.5%を記録。
その後も10%以上をキープする。
地井さんが町を歩く「ちい散歩」は、本人の病気休養により 終了するが、後継番組として加山雄三さんの「若大将のゆうゆう散歩」が始まる。
安い制作費で視聴率を稼げることもあり、「モヤモヤさまぁ~ず2」、「おじゃマップ」など、 各局が力を入れる。
終了した「ブラタモリ」も再開を求める声が高い。
テレビ番組に触発されてか、町歩きもブームだ。
弘前市では、会社員や主婦など市民が「弘前路地裏探偵団」を設立。勧めスポットに観光客を案内している。
昨年からは探偵団が 出演する番組「路地裏探偵団がゆく!」が始まった。
今秋、町づくりに関わる人が集う 「第2回日本まちあるきフォーラム」が開かれる。
企画の中心になっているのは長崎市で観光ガイドを行うNPO「長崎コンプラドール」。
一昨年は
チーフプロデューサーによる講演会を開いた。
尾関さんは「東京は 再開発が一段落し、壊して何かを作るのが進歩と見なされなくなった。
これまでの町の変化を 俯瞰してみるのが面白い時代」と考える。
とはいえ、番組の質の低下を危惧する声もある。
放送作家の小山薫堂さんは「制作者はテレビにしかできないことをしようという思い入れがあったが、 今はそれが感じられない。
撮りっぱなしで新しいアイデアがないと手抜きに陥りかねない」と。
▲補足、感想など
和歌山の「街道を行く」の号だったかなぁ。
司馬さんに、地元の人が熱心にアレコレ説明するのを、殆ど柳に風と流している—情景が書かれてあった。
なんというかなぁ。もう「知識」は充分にあるのだ。新奇なことってもうない。
そうではなくて。
現地を歩くことで、その充分にある「知識」が刺激を受け・活性化されて、「文章」となることをじっと待っているのだ。司馬さんという人は。
上掲の記事を読んでいると、「大人の番組」だなぁ、と思う。
もう、新規な知識を求めているのではない。知識は、既に充分にある、そこから地元でアレコレふれることでその知識が別のなにかに変化していく—それを楽しむ。そういう番組なのだろう。
日本人の高齢化というものとなにか関連しているのかもしれない。
司馬さんの「街道をゆく」は、文章で出来上がっている。
上掲のような番組も多くは今後、淘汰されるであろうが、もしかしたら、歩く人のもつ「教養の力」で、「街道をゆく」の「テレビ番組版」ができあがるのかもしれないな。