▲防災会議?で示された津波の想定高さの数字にびっくりする。
数字自体がおかしい—という意味ではなくて、当然、説明をつけるべき数字だと思うのだが、そのあたりに配慮がないようだ。
防災会議では小さな数字を出して、後で責任を問われたくない—という気持ちが見える。
これはなぁ、と筆者は思う。
核心は、アツモノに懲りてナマスを吹く—という諺どおりの発言であり、行動なのだろう。
確かに昨年の東日本大震災は、2万人近い死者を出した。
津波も従来の常識を越えるような高さであった。
それは、地震の規模がマグニチュード9.0という大きさと発生した位置(震央とか言ったかな)との重層した結果であろうと思える。
しかしながら、マグニチュード9.0の大きさの地震など、おそらく千年に一度発生するか—というものであろう。
例えて言えば、このブログで常にいっている「宇宙人が攻めてきたら」とか、「小惑星が地球に衝突したら」ぐらいの感じであろう。
つまり、今度示された津波の想定高さというものは、1000年に一度の、「宇宙人が攻めたきたら」という想定の下で計算された数字であろう。
それこそ、考えられる最大の高さだということだ。
まず、そのことを正確に認識しよう。
以下、新聞から抜粋。
東日本大震災を受けて北海道の津波想定を見直している道防災会議地震専門委員会が開かれた。
太平洋沿岸の新たな予測では、十勝地方の広尾町で30メートルを超える津波の可能性があるとの報告を取りまとめ中で、 さらに詳細に検討し、1~2カ月後に道に提出する。
検討中の予測では、根室半島から襟裳岬にかけての太平洋東部で津波高が30メートル程度の可能性があるのは ほかに厚岸、浜中、釧路、えりもの4町。
20メートル以上が根室市や釧路市など、10メートル以上が函館市など。
現在の想定では、最大はえりも町の22メートルとなっている。
▲補足、感想など
う~ん、と思う。
示された数字をどうとらえるか—という問題だが。
筆者は、2つの視点で捉えるべきと思う。
あ、津波を専門とする学者は、理学系の先生であろう。地震の規模をまずm9.0と想定すると震央の位置とか、地形などを考えると、最大の津波の高さは上掲の記事のようになる—まぁ、当然の推定だろう。
い、しかし、工学系の技術者の目からみると、まず、1000年に一度という災害を想定することに疑問をもつ。
千年に一度なんて、宇宙人が攻めてきたら—と考えるのと同じだ。
この想定の下で、設備などを考えると防波堤の高さとか避難棟の高さなどが過大となって、無駄が大きくなりすぎる。
この場合は、100年に一度ぐらいの規模の地震を想定して対応を考えるべきだ。
当然、100年に一度の対応方法では、昨年の大震災のような1000年に一度の災害が発生した時は、被害がでる。
これはもうやむをえない—と為政者はハラを括(くく)るべきだ。(まぁ、口には出せないだろうが)
100年に一度ぐらいの規模(マグニチュード8.0くらいかな)の地震を想定して、それで防波堤の高さ・避難棟の高さなどを決める。
この方が無駄が少ないし、費用対効果も高い。また、無駄に設備にお金をかけていないために、非常用の食料の備蓄とか、復旧のための機械を購入するとかもできる。
こうして、対策をとった上で、長期の展望で、市街地を高台へ徐々に移動させるとか、道路・鉄道の走る位置(標高)を高くするとかの1000年に一度の津波へ対策を講じていく。
---このような考え方が妥当なのではあるまいか。
もう一度繰り返していえば、提示された数字は、考えられる最大の高さであり、千年に一度という災害の時の数字なのだ。
通常では、そこまで考える必要はない—という説明が必要なのではあるまいか。
四国のある町では、30mの津波の高さを示されて、町民が「虚無感」を抱いた—とか記事となっていた。
小さな数字を言って、後からそれよりも高い津波が押し寄せれば、自分に火の粉が振りかかるとばかりに、考えられる最大の数字をポンとなんの説明もなしに示すと、結果、その地元の住民は呆然とするばかりだ。
なによりも、示された津波の最大高さに対して、短期的な対応と、長期的な対応の2つが必要なのだ—と工学的な・技術者的な視点をもつことが大事だと思える。
津波の高さが34mとか示されて茫然とする高知県黒潮町の記事があった。ご紹介したい。
--ここから--
もう、「想定外だった」という言い訳は許されない。
東日本大震災で津波による死者が多数出たことを教訓に、 中央防災会議(内閣府)が3月31日、西日本の太平洋沿岸の南海トラフを震源域とする巨大地震シミュレーションの結果を発表。
これまでの想定をはるかに上回る津波が押し寄せる可能性が示された。
なかでも、10階建てのビルの高さに相当する約34mの津波が予測されたのが、高知県西部に位置する黒潮町だ。
「今回の津波予測はかなりの高さになっているらしいと事前に聞いてはいたのですが、まさかここまでとは……」 (黒潮町役場・情報防災課)
同町ではこれまで南海トラフ地震で高さ10mの津波が発生するとの予測に基づき、対策をとっていた。
2年前には約3000万円を投じ、海抜4mの場所に高さ8mの津波避難タワーを設置。
さらに東日本大震災後には、町役場を海抜22mの高台に新築移転する計画を立てるなどして万全を期していたのだが……。
緊急会議を開いた大西勝也町長が「町の存続に関わる危機的状況」と表情をこわばらせるのも無理はない。
前出の情報防災課の担当者によると、「(新たな予測を受けての対策は)まだ具体的なものは何もないです。
すべてをイチからもう一度見直す」とのこと。
県庁のある高知市から電車(特急)で1時間半ほどの黒潮町は漁業が盛んで、カツオの一本釣りのほか、 クジラウオッチングと砂浜一面に植えられたラッキョウで知られる。
人口は約1万3000人(65歳以上の高齢化率は約35%)。
その約8割が沿岸部に集中し、高さ約34 m以上にある避難場所は8ヵ所しかない。住民の反応を聞いてみた。
「東日本大震災が起こってからは、すぐに逃げられるようにリュックサックに食べ物とか水を入れて備えていたんだけど 地震発生から2分でそんな津波が来るなんて、バカらしくなるがで。避難タワー? あれはもう意味ないし、 みんな“間違いタワー”って呼んでる(苦笑)」(40代女性)
「もう、どんなに家が雨漏りしても修理しない。クルマも買い換えるつもりだったけどやめた。
次の日に津波が来ると思ったら、もったいないけん」(50代女性)
やはりというか、あまりの巨大津波予測に住民たちもやけっぱちムード。
なかには、こんな悲観的な声も……。
「はっきり言って、もう終わりよ。家の周りを見渡しても、高い建物なんてどこにもない。
山(にある避難場所)まで逃げるにしても、私らの足じゃ15分はかかる。
『あんたはそこで死になさい』って言われた気分」(60代女性)
「そう。(予測発表以降は)みんなで合言葉みたいに『死ぬときはみんな一緒ね』って言っとるわ。
津波にのみ込まれるにしても、みんな一緒なら、まあ寂しくないかなって」(同じく60代女性)
高知県だけで死者・行方不明者679名を出した1946年の昭和南海地震を体験した、90歳間近の女性住民も力なく話す。
「あのときは激しい縦揺れがずっと続いたんよ。とても立っていられなくて怖かったけど、津波は堤防の一部が決壊するくらいで 大したことはなかったよ。
でも、今度は東北みたいな大きな津波が来るいうんじゃろ。
もう長生きしなくていいから、 津波が来る前に普通にポックリ死にたいわ」
南海トラフ地震は近い将来、いや、明日にでも起こるかもしれないといわれている。
今回の内閣府による予測はあくまで「最悪のなかの最悪のケース」とはいえ、対策は急務。
となると、考えられるのは高さ約34mの津波が来ても大丈夫なように、住民全員で高台移転するしかない。
「住民の高台移転については当然、検討課題に入る内容。費用は莫大になりますので、町の予算だけではとうてい無理。
県や国と相談しながらということになると思います」
--ここまで--