2013年11月6日水曜日

カルロスゴーンさんは、いまや、裸の王様。

▲記事を読みながら、2つのことを思った。
 1.カルロスゴーンさんという人の、技術音痴と賞味期限ギレ。
 2.電気自動車の未来をどう捉えるか。
 ということだ。

 ゴーンさんという人のアレコレを仄聞するに、この人、科学とか技術ということに興味のない人だろうなぁ、と思う。
 科学が嫌い好きということではなくて、興味がないといか関心がない—そんな人なのだろうな。

 このブログでふれた。
 今、トヨタは、ハイブリッド → 燃料電池車 へ進もうとしている。
 この方向性が、本当に未来型自動車の主流となるのかどうかは分からない。
 しかし、少なくとも、電気自動車がこれから進化する—という可能性より高いように感じる。

 ネックは、蓄電池だ。トヨタが早々に見切りをつけたのも、これであろう。
 見るべき技術革新のニュースを聞かない。

 今日の日経に、ルノー・ニッサンと三菱自動車の提携がどうたら—とか書いてあった。
 電気自動車に可能性をみる企業群と、見切りをつけた企業群に別れる—という意味か。

 ゴーンさんの決断をみるたびに思うのは、こういう技術に対する「反応の鈍さ」だ。
 トヨタがハイブリッドに進むという時も決断が鈍かったし、この電気自動車へ「み切りをつける」—という決断も遅い。

 科学とか技術というものが分からないということもあるのだろうが、技術的なハードルをホンダ等の技術系の経営者よりもより大きく、より高く感じるのだろうな。

 いわば、技術的困難さの前で「たじろいでしまう」のだ。
 それが「決断の遅さ」につながっているように感じる。

 以下、新聞から抜粋。

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長が、求心力を急速に低下させている。
 引き金は、111日付の役員人事だ。
 日産NO.2で、日本人トップである志賀俊之COOが更迭され不快感を示す幹部が増えている。

 志賀氏はリーダーシップを発揮するタイプではないが、短期的な収益獲得に走り、派手なブランド戦略を好むゴーン氏に意見ができる役員だった。
 例えば、ゴーン氏は、円高局面では一気に生産を海外へシフトさせようとしたが、志賀氏は「長い目で見て、日産の競争力の源泉は国内の 工場や開発拠点にある」と説得し、国内の基盤を残すことに腐心した。
 また、英語ができないがゆえに外国人役員からは評価されにくい日本人幹部社員にも登用の道を開くこともあった。
 志賀氏は、日本的経営とゴーン流 の外資経営をうまく融合させてきた功労者である。

 筆者はゴーン流の経営手法を一定の評価を与える。
 果断な 決断とスピードある実行力には学ぶべき点がある。
 一方で、新車の開発から販売までは数年 かかり、電子、化学、機械などさまざまな面で要素技術も磨いていかなければならない自動車 産業は、成果が出るまで時間を要する。
 技術と人材を自前で育て、長期的な戦略で臨むほうが「果実」を得やすい産業であり、日本的 経営がマッチした産業でもあった。
 日本で自動車メーカーが11社もひしめき合っているのは、 日本人の強みに合っている産業であるからにほかならない。

■ルノーと日産の“結節点”志賀氏の存在

 日産が立ち直り、世界で競争できるメーカーに生まれ変わったのも、ゴーン流のスピードと実行を重視する経営と、工場や研究開発拠点で地道な 努力を積み重ねる経営がうまく組合わされたからである。
 日産の筆頭株主である仏ルノーが日産に出資したのは、日産が持つ技術や市場が 欲しかったからである。
 ルノーも経営難に陥り、ミシュランから 引き抜いたゴーン氏が改革をして、日産よりも一足先に立ち直った。
 しかし、ルノーは欧州市場中心のメーカーであり、環境技術などは弱い。

 当時の日産は、 技術力は高く、拠点を持っていたが、経営力が弱いために 赤字が続く状態で、負債は膨れ上がり、資金借り入れができないところ まで追い込まれていた。
 そこにルノーが救いの手を差し伸べた。

 それは、ルノーが仏政府の 信用力をバックに用意した資金やゴーン流の経営と、日産の技術力を交換する構図でもあった。

 筆者は日産の経営を観察し続けている。
 ルノーと提携当時、志賀氏は提携を担当する企画室次長だった。
 以来、志賀氏は日産とルノーの提携戦略の「結節点」になった。

 日産とルノーの提携が14年近く 続いているのは、業界では珍しい。
 互いの強みと弱みを補完しているから長続きしているのであり、志賀氏の役割は大きい。

 志賀氏は暴走しがちな「ゴーン氏」を、陰から支え融和を維持することに 腐心した「糟糠の妻」のような存在でも あった。
 その志賀氏が更迭され、両社の提携戦略の先行きには暗雲が立ち込め始めた。
 時期が今で適切なのだろうかと感じる。

■一人負けの日産
 志賀氏が更迭された理由は業績の悪化だ。
 日産の143月期決算の通期業績見通しでは、営業 利益が6000億円、当期純利益が3550億円 となる。
 他の自動車メーカーは業績を上方修正している中で、日産だけが下方修正をする事態に追い込まれている。

 日産の業績に陰りが見えた要因は2つある。
 まずは、北米市場で商品戦略に躓き、値引きしないと売れない状態に 追い込まれている。
 北米で日産車は、トヨタやホンダに比べて商品力で見劣る。

 もうひとつは、新興国や電気自動車(EV)に投資をしてきたが、それを回収できていない 点だ。
 新車の積極投入で膨張しているが、伴う収益性がついて来ていない。急に膨張したことで大規模リコールも頻発している。

■自らの責任は棚上げにするゴーン社長
 今の日産は、リーマンショック後、赤字に陥ったトヨタと似ている。
 トヨタはリーマンショック前までは利益が2 兆円を軽く超え、事業を大きく拡大させた。
 しかし、人材の成長や品質管理がついていけず、リコールを起こし、過剰設備に苦しんだ。

 日産が新興国やEVに投資することを否定するつもりはない。
 今後、南米や 東南アジアなど新興国は一時的なリセッションがあったとしても、自動車市場は成長する潜在力 のある市場だ。
 EVも、一定量は市場で受け入れられていくだろう。

 いずれも、長い目で育てていくという発想がなければ「果実」は収穫できないだろう。
 しかし、それをせっかちなゴーン氏は我慢できない。
 そもそも新興国やEVへの投資はゴーン氏が 最終判断したもので、特にEVについては、「ハイブリッドをやれば先行するトヨタに利すること になる」とゴーン氏が言い出したものだ。
 その後は泥をかぶって志賀氏がEV 事業の担当を引き継ぎ、リカバリーを任されていた。

 ゴーン氏は「ストレッチ」という言葉を使う。
 高い目標を掲げてチャレンジしろという意味 である。
 挑戦してもすぐに成果が出ないと粛清人事が待ち受けていれば、誰も挑戦しなくなる。

 かつて富士通では成果主義を導入し始めた頃、社員の多くが低い 目標を掲げてそれを達成する風潮が蔓延った結果、会社全体の業績が沈み始めた。

 要は今回の役員人事の問題点は、ゴーン氏は自分の責任は棚上げにして、役員の粛清人事を行い、日産とルノーの、あるいは日本流と外資流の「結節点」で あったキーマンの志賀氏の後任を育てていないまま、志賀氏を外したことにある。
 新体制では ゴーン氏の独裁化がますます進む。
 独裁者というよりも「裸の王様」と言ったほうが適切かも しれない。


▲補足、感想など

 自動車造りは、日本人の適性にあった仕事—とか記事にあってなるほど--と感じた。
 対して、フランス人は車造りに適性があるまい。

 これからニッサンがどうなるのかは分からない。
 ただ。
 電気自動車の可能性は冒頭でふれたように低いままだろう。
 まぁ、じっくり育てれば、多少は成果—蓄電池の性能の向上次第だが--あるのかもしれない。

 しかし、2015年にはトヨタは、燃料電池車を売り出す—という。
 そうなれば、電気自動車では対抗できまい。

 ゴーンさんが、我慢できるかな。
 ゴーンさんの暴走とトヨタの燃料電池車がいかなるものかで、一波乱あるように感じる。


 ルノーとニッサンが、提携を止めるという選択肢もそこにはありそうだなぁ。