▲有罪か無罪かを判断するのが、いかに難しいか…をこの砂浜の陥没事故について思う。
砂浜で、石を積み上げた擁壁の間から、少しづつ砂が抜け出し、言わば、自然にできた落とし穴に落ちて子供が亡くなったという事故だった。
落とし穴は、海水というか波の仕業で、自然的にできるものなのだ。
施工者側は、無罪を主張していた。筆者も当然だと感じた。
ただ、この場合、子供が亡くなっている。
大人ならば、片足が落ち込むぐらいで片付いたことなのだ。
子供であるばかりに死に結びついてしまった…という不幸な例がこの砂浜陥没事故だ。
以下、新聞から抜粋。
兵庫県明石市で平成13年年、人工砂浜が陥没し、金月美帆ちゃん=死亡当時(5)=が
生き埋めになり、その後死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた当時の 国と市の管理担当者3人の差し戻し控訴審判決で、大阪高裁(湯川哲嗣裁判長)は、全員を禁錮1年、執行猶予3年とした神戸地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
3人は国土交通省姫路工事事務所東播海岸出張所長の時沢真一被告(63)、 明石市土木部参事の青田正博被告(66)、明石市海岸治水課長の 金井澄被告(60)=肩書はいずれも当時。「事故は予測できなかった」と無罪を主張していた。
▲補足、感想など
多少なりとも、こういう工事を身近に経験したことのある筆者としては、ホトホト判断に苦しむ。
擁壁がコンクリート製であっても、風化等で穴があけば、そこから砂が抜けて、砂浜に落とし穴のようなものができる可能性がある。(上で述べたように大人ならば片足が落ち込むぐらいのものだ)
ただ、冒頭でふれたように、5歳の子供さんが亡くなっている。
犠牲者側から落とし穴に落ちた方が悪いのか…と正されると「う—ん」とならざるを得ない。
技術者の目から、この工事を担当した技術者・監督者を「罪」として問えるか…というと、限りなく難しい。
その微妙なバランスの中で裁判官も苦慮したものと思える。
真正面から、誰のミスもなく、子供一人が死んだのか…という問に対して、犠牲者側・施工者側のどちらかの責任を問うなら、天秤は施工者側に少し傾くか…と裁判官が判断したものであろう。
だからこそ、禁錮という罪になったものと思える。
逆にいえば、こういう砂浜で子供がなくなる…という例が本当に稀なのだろう。
その数少い事例に、施工者・監督者が当たってしまった…と考えるのが真っ当な理解であろうか。