2013年4月22日月曜日

厚生省は日本で狂牛病患者が発生した時、どう対応するのか。


▲いや、ややこしい話だな。

 核心はなんだろう。
 これは—と筆者は思う。
 アメリカから見たとき、この日本のbse全頭検査が米国産牛肉輸出に対する「非関税障壁」と受け止められてしまうのだろう。

 アメリカは自国産の牛肉の品質に自信がないのだ。
 粗放的な牧畜で、牛が生まれた日時も分からない・食肉にする過程でロクな品質管理をしていない、狂牛病であろうヘタリ牛の肉まで混入させてしらん顔をしているという「負い目」を抱えている。<まぁ、だから安いのだ>

 そんなアメリカ政府・食肉業界から、日本bse全頭検査がどう見えるか。
 日本の食肉は品質管理をしっかりやっている。さらにbse全頭検査までしているのか—と。
 くそ、俺たち、アメリカ食肉業界に対する「嫌がらせ」だろう—と。
 ならば、あの「bse全頭検査をぶっつぶしてしまえ」----という考えに行き着いたのだろう。

 米国産牛肉の輸出について、アメリカは自国民を犠牲にした「カミカゼ攻撃<アメリカ国民は自国の牛肉が狂牛病のリスクの高いことを知らされていない>」をかけ、日本もタジタジとなっている。

 日本は、引き下がりつづけ、とうとう、bse 全頭検査の廃止を決断したものだろう。
 しかしなぁ。
 それを「厚生省」の名前で要請するというのはなぁ。

 このリスクの高い米国産牛肉の問題は、かっての非加熱性血液製剤のエイズ混入問題に非常によく似ている。
 将来、日本でアメリカ産牛肉を原因とする「狂牛病患者(人間の患者)」が発生した時、厚生省の名前で「全頭検査廃止」を要請したことを国民から非難されないかな。

 まず、廃止要請の記事から抜粋。

 厚生労働省は19日、食肉処理場で自治体が自主的に実施している牛海綿状脳症(BSE)の全頭検査を7月以降、全国一斉に廃止し、検査は月齢48カ月超の牛に限るよう要請する通知を都道府県と政令市に出した。
 BSE対策見直しの一環で、全頭検査をやめても食の安全面で問題ないと判断した。

 厚労省は、現在は30カ月超とされる法的な検査対象の牛の月齢を48カ月超に引き上げる方針。
 同省は改正省令を7月1日に施行する予定を明らかにした。

 通知は農林水産省と連名。
 廃止要請の背景として、近年の国内外でのBSEリスクの低下などを挙げた。


▲補足、感想など

 日本産牛肉からの「狂牛病発生のリスク」が低下したことは確かだ。
 もう10年近くなるのかな。
 前回の「日本産牛肉での狂牛病発生<これは、牛が狂牛病となったという話だ。人間が患者となったということと明確に区別しよう>」の原因はとうとう特定できなかったが、いろんな情報から、たしかオランダあたりから輸入した「粉末牛乳」が原因だろう—とかされたのだったかな。

 そこで。
 ヨーロッパから輸入した牛乳を使用しない—ということで、ほぼ日本から狂牛病が発生する可能性は低くなったのだろう。<狂牛病の牛が発生しないという意味>
 だから、まぁ、上の厚生省の要請は「正しい」ものと思える。

 ここで、イエローペーパーのゲンダイが上の「全頭検査廃止要請」を批判している。
 まず、どう批判しているのか--を見よう。

--ここから---

 なにが「守るべきものは守る姿勢で交渉していく」だ。
 安倍首相はTPP交渉参加を表明する際、「食の安全」を守ると強調した。
 その舌の根も乾かぬうちに放棄である。

 2月に米国産牛肉の輸入規制を緩 和したのに続き、7月にもBSE全頭検査を廃止するというのだ。
 BSEの全頭検査は01年に国内初の感染牛が発見された直後から続いてきた。
 05年に21カ月未満の牛が検査対象から外された後も、ブランドを守りたい自治体は独自に予算をつけ、全頭検査を継続してきた。

 ところが厚労省は「もはや日本はBSEを克服した。
 “非科学的”な全頭検査は税金の無駄遣いだ」と、完全廃止を各自治体に要請するという。

 トンデモない話だ。
 「世界で全頭検査を続けているのは日本だけです。
 しかし、そのおかげで23カ月の若い牛のBSE感染を水際で発見し、和牛ブランドを守った実績がある。
 BSEにはまだ解明できていない部分があります。

 予防原則の立場に立てば、簡単に規制を緩めるべきではないのです。
 そもそも、自治体がそれぞれ独自の判断と予算で続けている検査を、中央官庁の指示でやめさせるなんて傲慢ですよ」(ジャーナリスト)

 (中略)

 米国産牛肉が輸入緩和されたことで牛丼各社の割引キャンペーンが間もなく始まるが、手放しでは喜べない。
 日本の国益よりも米国の国益を優先する人物に首相は任せられないのだ。

--ここまで--

 批判が的外れとは言わないが、米国産牛肉のリスクの高さにはふれないのか。
 まぁだから、bse全頭検査は、日本産牛肉のブランドを高め、安全性をアピールし、差別化するツールなのだ。
 その意味では独自に自治体で続けるところは続けるべきだと思える。

 ただ。
 このブログでなんどもふれているように、アメリカ国内での「狂牛病隠し」は、アメリカ政府と食肉業界が結託した「国家的陰謀」だ。
 そのアメリカの陰謀団から、日本の「全頭検査」を見たとき、アメリカ産牛肉に対する当てつけ、嫌がらせとしか見えないということなのだろう。
<こんなことをするから、アメリカ産牛肉が売れないのだ--とかアメリカ政府は思っているということ>

 アメリカ産牛肉の「狂牛病リスク」の高さは以前と同じだ。
 アメリカから輸入した血液製剤で、日本人の中からエイス患者が発生したように、いつかはアメリカ産牛肉による「狂牛病患者<人間の患者という意味>」が発生する可能性が高かろう。

 それが明らかになった時、厚生省の記事にあるような行動は、アメリカ牛肉の「狂牛病隠し」に加担したとか、取られないか。

 いや、上の文章を読み直すと、なにか不合理だ。核心をはずしているのかも。
 確認してみよう。

1.厚生省の全頭検査の廃止はおかしくない。
2.日本産牛肉も48月以上のものを検査する。
3.米国産牛肉の大幅緩和に月数など平仄をあわせている。

4.つまり、元々狂牛病のリスクの低い日本産牛肉について、リスクの高い米国産牛肉と日本人から、見た目・条件を同じにするということがこの厚生省の要請の眼目なのだな。

→米国産牛肉のリスクの高さを直接”隠した”ということではないが、日本産牛肉の安全性の高さをことさらアピールできないようにしたということだ。
 まぁ、間接的に米国産牛肉のリスクの高さを「ぼかした」ということだろう。

 日本の全頭検査廃止自体は方向性として間違ってはいない。
 ただ、独自で行なっている自治体に要請するというのは「行き過ぎ」だろう。

 あとから、「アメリカ産牛肉の狂牛病隠しに日本側として安易に加担した」と受け取られる可能性が高かろう。

 厚生省が前に立つより、農林水産省に表に立ってもらう方が、将来に向けていいのではないのか。