▲これは素直に祝意を述べさせて頂こう。
筆者は、このブログでもう数十年、中国人が科学部門で受賞することはあるまい—と予想していた。
もう数十年—という数字の裏側には、日本人が湯川先生で受賞したのが、1940年代後半だったからだ。
明治維新が1868年、以後80年という歳月を要している。
対して、中国の改革開放政策が1980年代初め。<それ以前は、中国は半鎖国状態だった>
この中国人学者の受賞が2015年、すると約35年か。
この80年 対 35年 の差とはなんであろうか。
人間の知能なんてものにそんなに差がある訳ではあるまい。
特に、ノーベル賞クラスとなると。
おそらく、情報を収集するための「通信システムの速度の差」なのだろうな。
郵便 → インターネットの普及 という「通信システム」の発展というものは、これから「ノーベル賞受賞までの時間の短縮」にかぎらず、様々なところに影響が及ぶという話だろうな。
以下、新聞から抜粋。
2015年10月5日、中国新聞網によると、スウェーデンのカロリンスカ研究所は今年のノーベル医学・生理学賞を、中国中医学者の屠●●(トゥ・ヨウヨウ。●=口へんに幼)氏、北里大学の大村智氏、アイルランド人のWilliam
C.Campbell氏の3人に授与すると発表した。
これまでにも同賞の候補に名前が上がり、「ノーベル賞に最も近い中国人」とも言われていた屠氏は、長年にわたり中国医学と西洋医学の結合について研究し、新型のマラリア治療薬の精製に貢献した。
この報道を受け、中国のネットユーザーからはコメントが寄せられている。
「やっと取った!」
「すごいぞ!感動した」
「この85歳の高齢の女性に敬礼」
「中国の誇り!中国の誇り!」
「米国籍の華人ではなく、正真正銘の中国人!すごいぞ!」
「おれたち中国人はますますスゴくなっている」
「本当は、彼女はとっくに受賞していたはずだった」
「来年の大学入試の問題に出るぞ」
「おめでとう、おめでとう。これからも中国医学が発展してほしい。もう二度と効果のない偽造薬なんて飲みたくない」
「中国人がようやく基礎研究の領域でノーベル賞を受賞した」
「これからはアジアの時代」
▲補足、感想など
科学技術部門には、ハッタリ、虚言、捏造、詐欺—というものは通用しない。
そこにあるのは、ただただ「事実」、「事実の積み重ね」のみだ。
それ以外にものは、一切通用しない。
そのような部門で、中国人が受賞したというのは、意味があることだろう。
中国人って。
なんせ、胡錦濤前国家主席が、北京オリンピックの開会式で「5千年の中国の歴史が--」とか発言してしまう--そういう国家・そういう民族なのだ。
上の胡錦濤さんの発言のどこに筆者がひっかかるか—理由が分かるだろうか。
胡錦濤さんは、中国初のテクノクラート出身の政治家だ。
たしか、大学でも理系のコースを取っていた筈だ。
理系の教育とは、上でのべた「事実しか通用しない」ということを教えられる—ということだ。
地道さに耐えるということを訓練するということだ。
「知的正直」というものの価値を知るということだ。
じゃ、中国の歴史って、5千年あるのか。夏王朝って、そんなに古かったか?
だから。
筆者がひっかかったのは、「事実のみ、知的正直」という教育を受けたはずの胡錦濤さんでも、中国人が民族特有の宿痾のようにもつ「中華思想」「尊大ぐせ」の前には太刀打ちできないのだなぁ—ということだ。
一国家の最高指導者がこれなのだ。
他の人達なんて、「知的正直」「地道さに耐える」なんてことを、馬鹿にしているの決まっているではないか。
現時点では、記事にある中国人学者は、中国の中では飛び抜けて稀有の存在なのだろうな。
上でふれた。
通信システムの速度の向上というものが、ドンドン、新しい才能を作り上げていくのかもしれない。
これからの科学部門での中国人の活躍を期待したい。