2013年1月6日日曜日

キリン本社売却。


▲キリンが本社を売却するのだとか。
 筆者が気になるのは、売却を決断した経営者の判断の裏側になにがあるのか---ということだ。
 ここ数年、日本は非常な円高であった。
 海外へ出ようとする会社は、m&a で海外の会社を買いまくった。
 キリンもあちこち買ったはずだ。
 m&a で外国の会社を買っても、そこからの収益が見込めるのは、かなり先であろう。
 そこにタイムラグが発生する。
 日本の銀行から有利子で借りているはずだから、その返却がある。
 そこで、本社などを売却して、有利子の負債の圧縮をしたい---まぁ、このあたりが「表面的」な理由であろう。
 こんな劇的というか、ドラステックな手法というのは、東芝の西田さんがウエスティングハウスの買収の負債を圧縮するために本社の売却をやって以来、よく見るようになったな。
 う~ん。
 ところで、東京の不動産もボチボチ上向き傾向だ。
 いわば、底値で売り払っているということなのだ。キリンは。
 だから。
 なぜだろう?---という疑問が筆者など、ムクムクと湧いてくる。

 以下、新聞から抜粋。


 キリンホールディングス(HD)は、現本社ビル(東京都中央区新川)と、傘下の キリンビール本社ビル(渋谷区神宮前)を売却する方針を固めた。

 周辺の不動産の売買状況から、売却価格はHD本社ビルが50億~100億円程度、 キリンビール本社ビルは100億~200億円程度を見込んでいる。

 売却総額は 150億~300億円程度に上る見通しで、相次ぐ海外企業の買収で増加した有利子負債の圧縮に充てる考えだ。

 キリンHDは、東京都中野区の賃貸ビルに本社機能を移し、年内にグループの主要部分も 移転する。
 同社は、少子高齢化で主力の酒類事業が今後縮小することが見込まれるため、海外市場に 活路を見いだしている。

 これまで豪ライオンネイサン(2009年、2300億円)、ブラジル・スキンカリオール(11年、3038億円)など海外企業の買収を進めてきた。
 これに伴い、有利子負債は 06年の3027億円から11年には1兆1447億円に膨らんでいる。


▲補足、感想など
 どこらに核心があるのかなぁ。
 やはり、ここ1-2年がm&aの絶好のタイミングであったし、このタイミングは数十年に一度という好機であったことが大きいのだろうなぁ。
 2008年の夏、リーマンショックを発端にして、世界中で金融危機・不安が起こった。
 直接の原因はアメリカで発行していたサブプライムローンというものがクズ債権だということが分かったことによった。
 日本は、この危ない債権を買っていた企業も少なく、ほぼ無傷に近い状態であった。
 対して、ヨーロッパ諸国など、大きな被害を受けた。
 こうして、経緯をみていると、日本は健全で、日本以外は大きな被害を受けたということがわかる。
 次に、2009年の夏以降、日本は民主党政権となり、円高を容認する政策を実施した。
 つまり、2010年以降、日本は円高であり、かつ日本だけが健全で他国は弱っている—という状況を迎えたことになる。
 なるほど、m&aの絶好のタイミングだったのだな。
 そこで、キリンは記事にあるように1兆円以上にも負債を膨らませて、海外の会社の買収に走ったということか。
 買った会社が、豪、ブラジルか。
 多国籍企業になりつつあるということなのだな。
 そういう経営者の視点からすると、日本の不動産にそれほど拘らなくても、本社機能は世界中で一番便利なところでいいし、「所有」か「賃貸」かにも拘らない--という感覚になるのかもしれない。
 国内企業 →多国籍企業 へと変化していく中で、経営者の視点も変化していく—ということかもしれないな。