▲表題からして、アメリカの新聞記事かな。(どうもニューズウイークらしい)
この問いはなぁ、と思う。
単純にどっちの車の性能がいいか—という問題ではない。
近未来のエネルギーをどこからもってくるか—というテーマの問題だ。
まず、新聞から抜粋。
温暖化の一因となっているCO2の排出をゼロに近づけようと思えば、
ガソリンなどの化石燃料を使う自動車からの脱却だ。
その転換の主役として脚光を浴びたのは、電気自動車(EV)だった。
テスラモーターズ、ゼネラル・モーターズ(GM)のシボレー・ボルト、日産自動車のリーフなどである。
しかし、別の技術に期待を寄せる自動車メーカーも現れる。
そのテクノロジーとは、
燃料電池車(FCV)。
燃料電池で水素と酸素を反応させ、つくり出した電気で走る自動車のこと。
補給するのは、水素だけ。
1度の水素補給で走れる距離は、
EVで走れる距離より長い。
吐き出すのは水蒸気だけ。
開発競争も熱を帯びる。
昨年の東京モーターショーでは、トヨタがFCV
の「LF-FC」を、ドイツのメルセデス・ベンツが「ビジョン・トウキョウ」
(燃料電池と電気の両方で動くミニバン)を出展。
ホンダは、新型FCV「クラリティ・フューエル・セル」お披露目した。
トヨタは14年12月にFCV「MIRAI」を発売し、昨年秋には北米とヨーロッパでも販売を開始。
世界初の大量生産のFCVという車だ。
日本での1カ月間の
受注台数は、1500台に達した。納車まで2~3年待ち。
ただし、FCVが利便性のためには、水素ステーションが身近になくてはならない。
現在アメリカ国内にあるステーションは、十数カ所。ロサンゼルスの周辺に集中。
しかも、一般のドライバーが利用できるのは数カ所。
◇日本が普及の先頭を走る
整備は進んでいる。
カリフォルニア州エネルギー委員会は予算を確保して、
水素ステーションの建設を推進。
今年末までにステーションが50カ所まで増える。
コネティカット州、メリーランド州、マサチューセッツ州、
ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州の知事も、FCVの普及支援を打ち出した。
自動車メーカーも水素ステーションに投資。
ホンダとトヨタは、カリフォルニア州で
水素ステーション開設を支援するために、ファーストエレメント・フュエルという燃料小売企業に資金提供。
トヨタは、都市圏で12カ所のステーションの
建設を支援。
FCV普及の先頭を走るのは日本だ。
安倍首相は、2020年に向けて「水素社会の構築」
という目標をぶち上げた。
一環として、FCV購入者への約202万円の補助金支給
(上乗せして、自治体独自の補助金を受給できる場合もある)、官庁にもFCV導入を促している。
日本でも、水素ステーションの整備は遅れ気味。今年3月末までに100カ所の開設を目指していたが、
実際には80カ所程度にとどまる。
FCVの普及は、消費者に購買意欲を抱かせられるかどうかに
懸かっている。
しかし補助金制度がなければ、FCVは高価になる可能性がある。
「MIRAI」のアメリカ市場での価格は、最低5万7500ドルだ(日本では723万6000円。ホンダの「クラリティ」は766万円を予定 生産量が増えれば販売価格も安くなるだろうが、当座は高価な
買い物と言わざるを得ない。
トヨタは、アメリカにおけるMIRAIの販売目標を来年末までに3000台。
ホンダは日本で200台の販売を目指している。
韓国の現代自動車は、カリフォルニア州の顧客に、コンパクトSUV「ツーソン」
のFCVモデルをリース販売し始めた。
◇FCVに舵を切るトヨタ
日韓の自動車メーカーとは異なり、EVに力を入れるテスラのマスクCEOは、
FCVを批判してきた。
燃料電池は「愚者の電池(フール・セル)」だと揶揄し、
人気に火が付く可能性は低いと。
EVにも欠点がある。トヨタの副社長は、値段が高く、
車体が重く、充電に時間がかかることをEVの弱点として挙げる。
いまトヨタはFCV市場へのライバルの参入を歓迎しており、促すために5700件近い
関連特許の無償開放に踏み切った。
参入企業が増えて水素ステーションが多くなれば、
FCVを買う顧客も増えるはずと。
ほかのメーカーも動き始めている。
GMもホンダと組んで燃料電池の開発を進め、
日産はダイムラーと共同で、2020年の発売を視野に。
「FCVは『5年後』のテクノロジーだと、冗談のネタにされてきたが」と、
調査会社IHSオートモーティブのアナリスト、リンゼーは言う。「その年数はだいぶ縮まってきた」
▲補足、感想など
単純には 燃料電池車 対 電池車 と見える。
でも。
これは「大量の電気を水素という形で蓄積し、利用する」という「エネルギー革命」の先駆けなのだ。
従前、電気は蓄積できないものであった。いや、小電力ならば蓄電池という手段がある。
しかし、大量の電気を蓄積する方法が見つからなかった。
このエネルギー革命とは、小さな電気を発生させ、水素として蓄積し、必要な時、燃料電池で電気に変えるということだ。(水素 → 電気 → 水素 というサイクルの中で仕事をするということ)
風力でも太陽光でもいい、家の前にある水路を利用した水力発電でもいい。
そういう小規模に発生させた電気を水素に変えて蓄積する—ということなのだ。
こういうことが可能となれば、それこそ深い森の中でも、孤島でも住める。
水素=電気 だと考えてよかろう。
これがエネルギー革命の核心だ。
どうも、テスラの社長は、この部分の理解ができないようだ。おそらく、テスラは生き残れまい。
トヨタという会社は、もう自社のことを自動車製造会社であると思ってはいまい。
そうではなくて、このエネルギー革命を先頭でひっぱっていって、水素を中心としたインフラ整備会社に変化していこう—と考えているのだろう。
この水素エネルギーの周辺では、技術革新が相次いでいる。
--ここから--
水に光を当てて水素と酸素に分解するのに用いる新しい触媒を、京都大工学研究科の阿部竜教授や陰山洋教授のグループが開発。
可視光を利用し、触媒自体の劣化もないのが特徴で、次世代のエネルギー源として期待される水素の製造法の開発につながる成果という。
燃料電池による発電に用いる水素は、石油や天然ガスから作られるが製造段階で二酸化炭素の発生を伴う。
水に太陽光などの光を当てて光のエネルギーで分解し、二酸化炭素を生成させずに水素を作る研究も進んでいるが、触媒も分解してしまうなどの課題があった。
グループは、ビスマス、ニオブを含み積層構造をした酸塩化物の粉末を水に拡散させて触媒として用いると、可視光を吸収して触媒が劣化することなく水を分解できることを確認。
現状では、水素の生成のために別の触媒を用いる必要があるが、改良によって1種類の触媒で水素の生成も可能だという。
陰山教授は「今回開発した触媒は、構造の特徴を保てば、ビスマス、ニオブ以外の元素を使うことも可能だと考えられる。さらに分解の効率を高めていきたい」と。
--ここまで--
光をあてるだけで、水素が発生するということか。また、触媒が劣化しないのだという。
それはそのまま、電気を蓄積することと同じということなのだな。
それはそのまま、電気を蓄積することと同じということなのだな。