2019年5月22日水曜日

発酵 小泉武夫著 中公新書 1989年9月刊 感想


発酵という現象の面白さを十分に伝えた本だと思える。
 発酵というのは、「腐る」という現象と同じだ。
 ただ、人間に役立つように「腐る」とでも言えばいいのかな。
 そして、そこに人間の知恵というものがフンダンに盛り込まれているのだ。
 あぁ、味の素がサトウキビからできているという広告があったが、この本を読んでその意味を理解した。

 例によって、アマゾンで「評」を集めてみよう。
 5.0 で4.2。5-6人の読者の評であった。
 転記抜粋してみよう。

 --ここから--

新書のわりには、詳しく説明されており、とても勉強になります。

微生物の仕事の関係で知識を仕入れるために買ったのですが読み進めるに従って面白くなる本でした。

地球の誕生から始まるので最初は戸惑いましたが、それはそれで興味深い内容でした。
また「生命の起源」も面白く読めました。発酵がいろいろな分野で生かされていることがわかりましたが、学問的な知識のない素人が読むには少々難しいと感じました。化学式も随所に出てきますし、他の著作より読むのに時間がかかりました。

『食と日本人の知恵』が、やや軽いエッセイ風なのに対し、こちらは少し専門的です。
しかし文系の人でも、じっくり読めばわかるように書かれています。『もやしもん』の、特に一巻など初期に出てきたネタは、かなりこの本から取られているようです。
(飛行機をイモの発酵燃料で飛ばす計画、麹を灰で精製する話、子牛の第四胃からだけ取れる酵素レンネットでチーズを作っていた話など)『もやしもん』でさらっと触れていただけのことについて、微生物学としてもう少しきちんとした知識を得たい人などにもおすすめです。

発酵と聞くとまっさきに漬物とかチーズとか連想しますね。私もそうでした。でも、世はバイオ時代。ものすごい最先端のところにも微生物が活躍しているのです。例えば、最近ではBotryococcus brauniとかいう藻類は炭化水素を生産し、細胞内に分泌するんだそうで、これを利用すれば産業廃棄物を原料に石油を作ることも夢ではない、のだそうです。他にも医薬品などに活躍する微生物が出てきます。20世紀以降、人間の寿命が延びた原因のひとつにこうした微生物による抗生物質があげられるでしょう。また、古来の伝統的発酵食品にも説明がなされています。例えば、日本の醤油には古来、穀比之保(こくびしお)→穀物を発酵させた醤油。魚比之保(うおびしお)→魚介類を発酵させた醤油。肉比之保(ししびしお)→野鳥肉、鹿肉を発酵させた醤油などがあったらしいです。びっくりしたのは能登地方で作られているフグの猛毒の卵巣を発酵によって無毒化して漬物として販売している、という話し。びっくりします。毎日大量の発酵食品を食べている現実に微生物への感謝の念が湧きました。

発酵の世界で有名な小泉武夫氏の「発酵」について紹介した本。
発酵でおなじみの「食品」だけではなく、工業での「発酵」も取り上げられています。
その中で特に面白いのはやはり「発酵食品」の部分でしょうか。
臭い食品がちゃんとでてきていておもわず「ぉおっ!」と言いたくなります。
この本では残念ながら小泉武夫氏の面白い文章は出てきませんが、発酵がどれだけ人間にとって大切かを教えてくれる素敵な本でした。

 --ここまで--

 発酵というものには、一杯、夢があるなぁ。
 プラスティックの分解などもこの発酵というもので処理できるかもしれないなと感じた。