2017年10月4日水曜日

アラスカ戦線 ハンスオットーマイスナー著 ハヤカワ文庫 昭和47年8月刊 感想

この小説どう紹介したらいいだろうか。

 アマゾンにこの文庫本の感想がいくつか載っていた。
 それをまず、転記してよう。
 --ここから--

■第二次世界大戦中、アラスカで特殊な任務を命ぜられた日高。
 その作戦に気がついたアランが日高を追跡する。
 極寒の厳しい気候の中、極端な緊張感に包まれた殺し合いが始まる。お互いの兵士は死に追い詰められ、日高とアランの一騎討ちとなる。最後は衝撃的だ。

 とにかく本作品は、日本兵と米国兵の隠密だがピリピリした戦いをドイツの作家が描くというのが異質だ。だからなのか、一方的に日本人を悪くすることもないし、米国人を悪く言うこともない。
 また、日本人の戦時中における言動などは、日本人が書いたのと錯覚するくらい、正確に描かれている。
 翻訳家がかなりの部分を補ったのだろうか。改めて冒険小説の緊張感あるストーリーテリングを面白く感じた。

■物語、人物等はフィクションです。しかし、戦闘や索敵、アラスカでの厳しい生活等、我々の生活とは縁遠いシーンを容易に想像させてくれるほどよく描かれています。
 また、日米双方の相手に対する気持ちの移り変わりは作者がドイツ人であることから中立的に描かれており、アメリカ人にも日本人にも好かれる作品であると思います。

 設定も面白いです。ww2時も比較的空白の土地であったアラスカを選んだこと、また序盤ではまだ日本が優勢の時期なので日本側に制約を設けずに済んだことにより、作品がより自由なものになっています。
 映画『ローレライ』ほどぶっ飛んでもおらず、かといって大胆さが足りないということもなく素直に読めました。
 終盤の攻守の入れ替わりも秀逸です。印象としては日本映画の『太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男』に似ています。おすすめです。

--ここまで--

 う~ん。
 少し、粗筋などを補足しながら、筆者の感想を箇条書きとしたい。

1.1944年、日本軍がアメリカ本土に爆撃攻撃を計画した—というところから始まる。
 ために、中継地点であるアラスカの気象情報が欲しい。そのために、隊長の日高をふくめた10数名の隊員が、アラスカにバラシュートで落下して、アラスカの気象情報を日本へ打電していた。

2.このアラスカに潜入した工作員から、日本への電波をキャッチして、アメリカ軍10数名がアラスカの荒地に日本軍工作員を追っかけるという筋だ。

3.それぞれには、補給というものはない。生えている草を食べ、生きている動物を狩って、生き延び任務を果たすしかない。

4.こうしてアラスカの山野で、追いつ追われつの攻防を繰り広げながら、段々、数が減ってしまい、最後は11となる。

5.戦闘シーンというものは、殆どない。極寒の中で、食料を確保しながらギリギリ生きていくのだ。

6.上の評にもあるが、ほぼ日米のどちらに偏ったという書き方ではない。極寒の荒野の中で、さまざまな事故に会い、攻防を繰り返しながら、最後まで任務を果たそうとする日本人・日高とアメリカ人・アランの姿が良く書かれてあると筆者は感じた。