2021年2月9日火曜日

輝ける碧き空の下で 第1部上下、第2部上下 北杜夫著 株式会社新潮社 平成元年1月刊行 感想

 

文庫本で4冊の長編である。

 日本人が明治末からブラジルへ移民した(最初は数年で帰る予定だったが)記録であり、また、胡椒とかジュート(黄麻)などの産業を興した記録でもある。

 筆者には、この長編につきうまく感想をまとめる力がない。

 例によって、アマゾンのレビューを転記してみよう。

 -ここから-

5つ星のうち5.0 ブラジルとゆかりある方はおすすめです

・仕事でブラジルと関わる機会があったため読みました

・歴史の授業では習わない歴史をしれます

・地球の裏側でこんな物語が展開されていたのかと思うと胸が熱くなりました


5つ星のうち5.0 北杜夫の中で一番好き!長編好きにも読みごたえアリ!

ブラジルで大農園を開拓する夢をいだきつつ、貧農中心の開拓団は、国の政策に後押しされ、二度と日本には戻らない覚悟でブラジルへの移住を開始します。汗を流すことを厭わない、誠実で素朴な人々乗せた1回目の移民船は、ブラジルのサントス港に到着します。地球の裏側に到着した彼らを待っていたのは、国の「開拓団募集のうたい文句」とは裏腹の、筆舌に尽くしがたい苦しみと過酷な労働の日々でした。現在もブラジルでは、多数の日系人が農業を行っています。長編なので、巻をすすめるにつれ、移民開始から時を経た、経済的に豊かな状態で開拓のスタートを切った、好運な開拓団話も読めます。本を読んでも泣かない私ですが、電車の中で涙の止まらなかった、第一巻です。


5つ星のうち5.0 壮大な国民文学

戦前の日本、多くの貧しい日本人(特に九州、四国の出身者)が、生活を求めて、南米、米/西海岸、ハワイ、フィリピン、マレーなどに棄民(移民)された。本書は、南米ブラジルに移民した人々の、筆舌し難い悲惨な現地生活を、筆者自身が現地取材し、その仔細を満天下に晒したものである。忘れられた多くの名も無き日本人への鎮魂歌である。彼の小説には、読んでいていい気持ちになる部分(躁)と、重々しい痛苦を強いられる部分(鬱)がある。この躁と欝を丹念に連綿と書き込むことで、生きることとは何か・・を読者に問いかける。主題が地味である為か、本書はあまり知られていない。が、間違いなく「楡家の人々」に、優るとも劣らぬ古典である。是非の復刊が望まれる。


5つ星のうち5.0 ブラジル移民の労苦を読む

何年も前に、一度手にして読んだ。その頃、明治に生きた人たちについて書かれたものを集中的に読んでいたが「輝ける碧き空の下で」は、明治から始まったブラジル移民の人たちを描いた作品で、彼らの苦労がしのばれる作品である。あわせて、登場人物の個性が北杜夫作品ならではに生き生きと描かれている。3年前に自宅を火災でなくし、その本も一緒に灰になった。今回あらためて注文して読み直すと、かつて感じなかったものを自分の年とともに感じ、うれしく思っている。ともあれ、今では近所の書店で手に入りにくい本は、丁寧にラップされて送られてきた。嬉しかったという他、なにも言うことはない。


5つ星のうち5.0 ブラジル移民史を描いた大作

ブラジル移民史を描いた大作。移民会社の宣伝にのせられ,ブラジルにわたってみたはいいけれど,奴隷同然だった初期の移民生活,マラリアに襲われた開拓地の悲劇,第二次世界大戦の勃発により敵国民として弾圧された日々,そして戦争の終わりとともに始まった勝ち組負け組の争いなどブラジル移民史を語るのに欠かせないトピックスが紹介されている。移民史上の重要人物も網羅的に登場する。ブラジル移民船笠戸丸がサントス港についてからもうすぐ100年。ブラジルにおける日系移民の足跡を振り返るのに絶好の一冊。


5つ星のうち3.0 文庫本だったら・・・

文庫版が欲しかったのですが、絶版・品切れでしょうがなく在庫有りの中古単行本に。内容は申すまでもなく五つ星。

 -ここまで-

 確かに棄民状態にあるのだが、数年~数十年で日本人は、その苦難を持ち前の実直さと知恵とで乗り越えてくるのだ。

 日本人の本質的にもつ聡明さを改めて感じる本でもある。