2021年2月27日土曜日

ベルリン飛行指令  佐々木譲著 株式会社新潮社 平成5年1月刊行 感想

 ▲昭和15年の晩秋、日本からドイツ・ベルリンまでゼロ戦に乗って運ぶという話だ。

 近松の虚実皮膜という言葉があるが、限りなくノンフィクションに近い小説なのだろうな。

 面白いのだけど、筆者にはどうもうまくまとめることができない。

 アマゾンのレビューからおおよそを把握しよう。


 --ここから--

5つ星のうち5.0

零戦の高性能さがナチスに請われてドイツまで空輸するという話です。ただそれだけではなく、読んでいてこれは立派な冒険小説でもあったのです。ハラハラドキドキの空戦あり、戦闘機乗りの友情ありです。最後にベルリンに到着した零戦がナチスからどういう評価を受けたかと言うとこれから読む方には結末を知らせるような事になってしまうので書きませんが日本と他国の戦闘機に対する概念の違いが表れていて第二次大戦の敗戦の要因になっていた事が伺えます。三部作共に絶妙に関係しあっていて、とても読み応えがありました。本書との関連で、吉村昭氏の「零式戦闘機」も是非読んで頂きたいと思います


5つ星のうち5.0

零戦を駆り、ベルリンまで飛行する冒険譚。骨太な人間ドラマを読んだという読後感で胸がいっぱいになる作品だ。ごく限られた者たちの間で進められた零戦空輸計画、東西アジアを横断しての輸送ルート探しと、実際に現地に降り立ってのやり取りには日本人だけでなくアジア各地域で生きた人々の情熱が感じられるほどだ。登場する女性たちも、物語を安っぽくさせることなく、軍隊という男だけの空間に程良い彩を与えている。念入りな調査に基づいて歴史小説らしい物語の厚みを備え、そして、淡々とした筆致と心理描写によって人間ドラマとしての奥行きを備えた、素晴らしい作品だ。


5つ星のうち5.0

大東亜戦争に興味を持ちいろいろ調べている平成生まれです。この作品は真珠湾攻撃の前、1940年が舞台です。「零戦をベルリンに空輸する」それだけでもうワクワクです。これはフィクションだと思いますが実際にあったとしても違和感ありませんね。空中線の描写などは少ないですが、ゼロ戦がベルリンに向けて飛び立つまでにいろいろ問題があります。それを解決していく過程が面白いですね。そして舞台はインド、中東、ドイツなど、とにかく飽きないです。登場するパイロットたちの「空」「戦闘機」が好きだという熱い思いが伝わってきます。パッピーエンドとは言えないでしょうね・・・・。これから始まる本当の悲劇・・・・。


5つ星のうち5.0

太平洋戦争秘話3部作の第1作。三国同盟を締結直後のドイツからゼロ戦2機の提供依頼を受けた日本は飛行ルートの確保を図り、そして…。架空の人物と実在した人物が織りなすストーリーは圧巻。架空の人物が実在したのではないか、もしかしたら、史実に残っていない事実があったのではないかと思わせられる。どこまでが創作部分なのか分からなくなるほど。3部作に共通する登場人物が、物語に厚みを持たせているので、本作を面白いと思ったら続編の「エトロフ発緊急電」、「ストックホルムの密使(上・下)」を続けて読んでください。主人公は異なりますが、連なったストーリーです。


5つ星のうち4.0

文句なく面白い娯楽小説。舞台は1940年、第二次大戦が世界に拡散しようとする時代の緊張感を背景に、三国同盟成立前後の短い時間軸の中で緊迫したドラマが展開される。題材となったゼロ戦のベルリン空輸が史実かどうかはともかく、筆者が取り上げた各地の情勢はそれぞれ迫真であり、ストーリーに厚みを持たせている。描き出される人物はそれぞれ実在人物を味付けしたもののようだが、日本海軍の軍人も、インド独立の志士も、野心溢れるイラクの将軍も、そしてヒトラーの部下ですら、それぞれが真剣な眼差しで何かを成し遂げようとしており、第二次大戦という壮大なる愚行を背景に、清冽な人物像が見事に浮かび上がっていると思う。ゼロ戦は驚異的な航続力と戦闘能力で一時アジア・太平洋を席巻したが、防御に弱く、結局は多くのパイロットの命を犠牲にした。この小説は単なるゼロ戦礼賛に陥ることなく、最後にドイツ軍のレポートという形でゼロ戦の弱点もビシッと指摘しているところも好感。自分にとって佐々木譲は初めて。20年も前にこれほどの本を書いた人がいまさら直木賞か、という疑問は残る。ただ文学界の慣行はさておき、ストーリーの面白さと筆力の高さを素直に称賛したい。


5つ星のうち4.0

ゼロ戦でベルリンに行くように飛行指令がでてそのパイロットを選出していくところから話しが始まり選ばれたパイロットを応援したくなるような話しです。さらに本当にこの指令があったかもしれない話のようです。日本人として誇りに思える戦中のストーリーです。当時の情景の描写も戦争に関する専門用語も巧みに使われていてよく伝わってきます。単純に日本からドイツまで現在では1発で飛んでいけますが、当時の戦闘機では途中で何カ所も経由しながら補給しなくてはならず、その道のりは長くて険しいところがこの本の内容に厚みを持たせています。飛行機に興味がなくてもわくわく楽しく読めます。その逆で飛行機が好きな人は楽しさ倍増請け合いです。


5つ星のうち5.0

プロローグからのめり込む、本当にあったのだろうと思わせるようなスタート。物語の終わり方もまた現実の話に落とし込んでいるように見えて、どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのか。そういうところがVery Goodでした。海軍省の山脇という登場人物は実在のひとなんですよね?なんかホンダF1を「ゼロを作った男がつくったマシン」と見るドイツ人F1ファンの話などから入っていく感じも読みやすかった一因です。ファイターゼロ、零戦、この言葉になぜか熱くなるのは自分が日本人だからかな〜。現代の最新鋭旅客機なら日本〜ヨーロッパは10時間ほどで快適にノンストップで飛んでいますが。レシプロエンジン1基の軽量な単座戦闘機でやったんですね、本当にあった話として読むとパイロットがいかに勇気があったかが分かります。私の亡くなった祖父も大戦時は戦闘機乗りだったそうです。大陸の上空を飛んでいたようなので登場人物の安藤、乾と同じ空を飛んでいたんだろうな〜と思い、そういう部分もダブったので面白く読ませていただきました。叔父にも元ファイターゼロ乗りがいます。自分にも戦闘機乗りの血が流れていると久しぶりに思い、誇らしい気分です。大変いい作品だと思います。

 --ここまで--


 全体の評価として、4/5 くらい。

 上掲のレビューにあるように、読み応えのある小説だと思う。