2023年3月1日水曜日

松本零士さんが亡くなる

 

漫画家の松本零士さんが亡くなった。筆者など、いつ頃から知っているのだろうか。1960年代後半あたりか。この世代の漫画家は皆、天才・手塚治虫を追っかけて若くして世に出た。ドラエモンの我孫子さん達(二人で組んで仕事をしていた)、20代で「大家」だった。茫々50年か、筆者は松本さんのコックピットシリーズが好きだ。男でなければ決して分からないであろうちっぽけな意地とか誇りとか—今もって胸を打つ。後半部にフランスから受賞したときの文章、関連文章も添付したい。

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漫画家・松本零士さん(85)死去 急性心不全の為【銀河鉄道999】「遠く時の輪の接する処で、また巡り会える」2023/2/20()   「銀河鉄道999」や「宇宙戦艦ヤマト」の作者として知られる漫画家の松本零士さんが、213日、都内病院で、急性心不全の為亡くなっていたことがわかりました。85歳でした。告別式は近親者のみで既に執り行われたということです。後日、お別れの会が開催予定だということです。松本零士さんは「銀河鉄道999」・「男おいどん」・「宇宙戦艦ヤマト」・「宇宙海賊キャプテンハーロック」・「惑星ロボ ダンガードA」などがヒット作として知られています。関係者によると、松本さんは「201911月、『宇宙海賊キャプテンハーロック』テレビ放送記念で訪れたイタリア・トリノにて倒れた報道がありましたが、帰国後は回復されています。少し前に(詳しい時期は非公表)体調を崩され、年齢を考慮して入院されていた」ということです。

【零時社コメント】漫画家 松本零士が、星の海に旅立ちました。漫画家として物語を描き続けることに思いを馳せ駆け抜けた、幸せな人生だったと思います。「遠く時の輪の接する処で、また巡り会える」と松本は常々申しておりました。私たちもその言葉を信じ、その日を楽しみにしています。これまで応援くださいましたファンの皆様、作品を世に送り出してくださいました関係各社の皆様、お世話になりました各自治体ならびに各団体の皆様、若かりし頃から共に切磋琢磨してくださった漫画家の先生方、そして旅立ちにあたりサポートしてくださいました病院の皆様、心より深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。株式会社零時社 代表取締役 松本摩紀子

【プロフィール】

1938125日生まれ、福岡県久留米市出身。6歳の頃から絵を描き始め、9歳で運命的な本(『新寶島』『月世界紳士』いずれも著者は手塚治虫氏)との出会いをきっかけに漫画を描き始める。15歳の時に投稿作『蜜蜂の冒険』が「漫画少年」にて受賞掲載され、これが商業誌デビューとなる。実質的な漫画家デビューは1957年「少女」掲載の『黒い花びら』。しばらくは少女漫画誌での執筆が続く。1960年代に入り青年漫画誌が誕生し始めたころ「漫画ゴラク」に『セクサロイド』を発表。以降、青年漫画誌での執筆が増え、少年・青年漫画のジャンルで活躍するようになった。代表作:『男おいどん』『ガンフロンティア』『宇宙戦艦ヤマト』『クイーンエメラルダス』『ザ・コックピットシリーズ』『宇宙海賊キャプテンハーロック』『銀河鉄道999』『新竹取物語1000年女王』ほか。

【受賞・受章歴】

1972年 『男おいどん』にて第3回講談社出版文化賞児童漫画部門賞

1975年 『宇宙戦艦ヤマト』にて星雲賞

1978年 『銀河鉄道999』『戦場漫画シリーズ』にて第23回小学館漫画賞

同年    “一連のSFシリーズ” ”にて第7回日本漫画家協会特別賞

1990年 『V2(ツイン)パンツァー』にて星雲賞

2001年 紫綬褒章受章

2008年 練馬区名誉区民

2010年 旭日小綬章受章

2012年 フランス芸術文化勲章 シュバリエ受章

<以下、2012年フランス芸術文化勲章を受章した時の筆者の文章>

▲松本零士さんが、来年で画業60年だそうだ。彼にフランスから学術文学勲章が授与された。お慶びの言葉を申し上げたい。それにしても、画業60周年とは---。この世代の漫画家は、世間に出るのは早かったもので、60周年となるのだな。手塚さんが昭和20年代初めから活躍すると、それに触発されて例えば藤子不二雄さんなど、20代初め頃から売れ始め、「20代で既に大家だった」。松本さんも藤子さんなどとほぼ同じ世代であろう。あぁ、宮崎駿さんもそうだな。昭和40年代から活躍していたからなぁ。大人向けの「戦場シリース」なんて、いつ頃だったかな。コックピットシリースなんて、名作をものしたのはいつだったろうか。大人の男でなければ分からない—そんなマンガだった。

以下、新聞から抜粋。 『銀河鉄道999』など生み出してきた漫画家・松本零士氏が、フランス文化省が 運営する『芸術文学勲章』のシュヴァリエを受章し、フランス大使館での叙勲式に 出席した。「日本はもとより世界における日本のマンガとアニメの認知と普及に大きく貢献した」 として選出。来年で画業60周年を迎える松本氏だが「さらなる創作活動に励んでまいりたい」と語った。同勲章は1999年に映画監督・北野武、漫画家・大友克洋が2005年に 受章している。式典ではベルトラン・フォール文化参事官より叙勲に際して祝辞が述べられ「マンガは光輝く 日本文化の一部を構成しており、あなたがその代表的な人物であることは誰しもが認めるところ」と松本氏の功績を絶賛。この祝辞に松本氏は「本日はこのような晴れがましい栄誉を得ましたことは、ひとえに皆様のおかげと心より御礼申し上げます」と感謝のスピーチ。「来年で 画業60周年を迎えますが、皆様のご支援に応えるためにも、さらなる創作活動に励んで まいりたいと思います」と、今後の創作にさらなる意欲をみせた。松本氏は『宇宙海賊キャプテンハーロック』、『銀河鉄道999』などのSF作品で知られ、1970年代 半ばから1980年代にかけてのアニメブームの火付け役となった巨匠。2001年には 日本文化の発展に寄与した功績により紫綬褒章を、2010年には旭日小綬章を受章など、多数の受賞歴を持つ。

▲補足、感想など

 ---マンガは光輝く 日本文化の一部を構成しており、あなたがその代表的な人物であることは誰しもが認めるところ---か。筆者も異論はない。冒頭でふれたように、筆者は松本さんの「コックピットシリーズ」が好きだ。男でなければ決して分からないような、意地とか、勇気とか、そこらに付随するモロモロが好きだ。それにしても、外国でこの松本さんのコックピットシリーズに相当するようなものが存在するのだろうか。おそらく、匹敵するものは存在していまい。だからこそ、記事のフランス人の言葉が生きてくるのだ。曰く--マンガは光輝く 日本文化の一部を構成しており、あなたがその代表的な人物である---と。この褒め言葉は決して外れてはいない。


海外「すでに日本は圧倒している」 ハリウッドに迫る日本のソフトパワーを豪公共放送が特集

今回はオーストラリアの公共放送局「ABC News」が配信した、日本のソフトパワーの世界的な人気の高まりに迫る、「ハリウッドを超えろ。アニメや漫画は爆発的成長を遂げている」と題された記事からになります。「暗いディストピアからコメディ、青春物語、恋愛、友情、その間にあるものまで、日本の作品の世界には全てがある。そして世界の若者たちにとってそれらは、ますます重要な存在となっているのだ。しかし、例えば『ワンピース』のような人気作品にも、生々しい暴力的な表現などが含まれる事もある。3児の母親であるダニー・リンチは、アニメに夢中な9歳の娘ゾーイに適したアニメを判断する際、同様にアニメに夢中なゾーイの姉を頼りにしている。一番夢中になっているのは『僕のヒーローアカデミア』だ。アニメや漫画は何十年も前から存在しているが、1990年代に『AKIRA』がアングラから抜け出し、欧米でじわじわヒットした事が大きな話題となった。30年前は映画館で日本のアニメに賭けるのは勇気がいったが、現在のアニメファンは自宅にいながら数千もの作品を、ストリーミングサービスで観る事が出来る日本のアニメの人気が世界的に急上昇しているのは、このストリーミング配信が大きな要因となっている。アニメ配信サイト『Crunchyroll』のGM、ディーン・プリンク氏はアニメの爆発的な成長について、『配信までの期間が短くなっている』点を挙げ、『日本で放送された1時間後に豪州で配信している』と説明した。またヒットする作品を予測するのは難しいとした上で、『『鬼滅の刃』は昔の時代の話にもかかわらず大ヒットした。観客の好みは常に進化し、良作は受け入れられる』と述べる。映画業界データベース『The Numbers』は、2020年度の世界最高興行収入を記録した作品として、日本のアニメ『鬼滅の刃』を1位にランク付けしたのだが、これはハリウッド以外の作品では初めてとなる快挙だった。またアニメ映画『呪術廻戦0』は世界を席巻し、英国ではハリウッド映画『THE BATMAN-ザ・バットマン- 』と、興行収入の面で互角の戦いを演じた。コスプレも人気を博しており、2019年にLAで開催された『Anime Expo』には10万人が集まり、昨年豪州で開催された『Crunchyroll Expo』では、チケットが完売するほどの盛況ぶりとなった」以上になります。世界的にアクセスしやすい環境が整ってきた事で、加速度的に人気が高まっている日本のコンテンツ。記事には様々な声が寄せられています。

翻訳元■■

■ 実際アニメは最近のハリウッドの工場生産のような映画を、一掃してると言っても過言じゃないよ。 +12

■ 日本のアニメはずっと昔から人気だけど……。 +11

■ コスプレは特定の人たちを救ってもいる。僕の甥は高機能自閉症なんだけど、コスプレをすると凄く生き生きとするんだ。 +8

■ 正直マンガの「ワンピース」は、自分が今まで読んできた本の中で、最も複雑な物語の1つだって言えるよ。世界観の構築やキャラクターの開発も素晴らしい。そして"多様性"なるものを無理やり取り入れる事も、あるいは読者に啓蒙するような事もしない。

■ 私や他のミレニアル世代が道なき道を歩いたからこそ道となり、今みんながその道を走れている事をお忘れなきよう……。 +5

■ X世代*の事もね!「鉄腕アトム」、「科学忍者隊ガッチャマン」、「海底少年マリン」、そしてもちろん「AKIRA」も。パッと出てきただけでもこれだけある。 +5 (*概ね1960年代中盤から1970年代終盤、 あるいは1980年代序盤に生まれた世代)

■ 当時の私たちがアニメをゲット出来る場所は、レンタルビデオ屋さんのとあるコーナーだけだった。みんなあの頃を覚えてるかな。 +2

■ だけど私はもうこの流行には乗り遅れた……。 +1

■ コスプレは新しいカルチャーじゃないよ。俺が10代の頃は「スタートレック」のキャラに扮して、みんなで集まったりしてたから。 +2

■ 俺もコスプレが大好き。現実とは違う世界に行ける感じがするし、単純にめちゃくちゃ楽しいんだよ。 +7

■ いや、情報が古過ぎるでしょwだってアニメは90年代から凄い人気だったんだから。昔と今の違いは、今は「普通」の人たちが、流行に乗るクールな人間を気取るために観てるって点。昔からクールなものだったのにさ。 +11

■ アニメとかは自分に大きな影響を与えたから、両腕と脚にキャラクターのタトゥーを入れてる。 +5

■ 全ての人がハマってるみたいな報道はどうかと思うけど。

■ ほとんどのアニメは子供向けじゃない。強いて言えばティーン向けが多いかも。親はちゃんと年齢によるレイティングを確認するべきだし、子供が観たいと思うアニメについて、少し調べたほうがいいと私は思ってる。 +23

■ 30歳を超えてる私でもあなたのコメントの意味が分かる。それくらいアニメが浸透してるって事で、その事にちょっと驚いてしまった。アニメの一部の描写は10歳向けではない。その事は間違いないと思う。 +1

■ 「アニメはカートゥーンとは違う」、という認識を保護者たちは持つべきだよね。子供が観ても安全なアニメはある一方で、保護者の指導が必要なアニメもある。とある作品は15歳以上からとかね。 +1

■ 誰も「太陽の子エステバン」には触れてないようだな。80年代、あの作品はまさに俺の子供時代そのものだった。 +4

■ 私も「アトム」や「ガッチャマン」を観て育った。10代後半や20代の時も色々なアニメを観てた。ハリウッドやアメリカのヒーローものとは違って、日本の作品は多様性に満ちたストーリーが凄いの。だからこそアニメがずっと好きだったんだろうね。 +16

■ アニメは自分にとって「別世界」という感じ……。その中でもミヤザキ監督とスタジオジブリの作品は、他のアニメとはさらにまた別世界だと思ってる。 +12

■ ジュンジ・イトウの「マニアック」は最高だった。「ブラック・ミラー」(※英ドラマ)がマカブル*に出会い、それがさらにアニメと出会ったような雰囲気なんだ。 +5*フランス語で「ゾッとする」「不気味」などの意。芸術作品においては、上記の要素を持つ作品を指す)

■ アニメは子供が観るためのモノなのに。 +2 +1

■ アニメかマンガを一度体験してみなって。かなり複雑なストーリーを持つ作品もあるから!+6

■ むしろ子供に勧められない作品まであるのがアニメ。 +8

■ 長女と次女が日本のマンガの大ファン。そのおかげで娘たちが本を読むようになった。 +2

■ すでに日本のアニメ作品は、最近のCG頼りのハリウッド作品を圧倒してるよ。 +4

■ 自分はアニメがあまり好きになれない。多くのアニメはビジュアルに集中し過ぎてて、ストーリー要素が十分じゃないから。 +2

■ そんなの何を観たかにもよる。原作やグッズの宣伝のために作られたような作品なら、君が言うようにストーリーには期待出来ない。「アフロサムライ」は「エヴァンゲリオン」と並んで、ストーリーに重点を置いてるぞ。 +5

■ こういう記事を読むと笑ってしまうよ。日本のアニメの人気が新たな傾向だと思ってるんだから。自分は60年代に「ジャングル大帝」を観てたからね。その時はまだ白黒だったんだ。 +13

■ 「ジャングル大帝」は私も大好きでした!記憶の旅に連れ出してくれてありがとう。 +2

■ いわゆる「真の『ライオン・キング』」ですね。 +2

■ 私の孫娘も日本のアニメが大好きで、ストーリーを考えて絵も描いて、自分のアニメ作品を作って遊んでる。 +4

■ アニメが世界のより多くの地域で普及して、さらに多くのファンが自分にとって最も意味のある物を、作品を通して見つける事が出来るのは素晴らしい事。ちなみに自分が日本に引っ越してきた理由の1つは、アニメの物語(と言語)をより深く理解するためだった。 +4

■ アニメの多様性は、欧米の実写TV作品や映画に負けてない。深い問題をはらんだ作品もあれば、示唆に富んだ作品もある。「もののけ姫」はその最たるものだ。 +7

■ 結局は興味をそそられるストーリーやキャラクターに、人は惹き込まれるって事なんだと思う。 +2

■ アニメや漫画は最近、自分の人生に大きな役割を果たしたんだ。新しい物語やアイデアに出会い、強く共鳴するだけじゃなく、内なる自分について多くの事を学ぶ事が出来た。同時に情熱を共有する事によって、家族や友人との絆も深まったんだ。そして欧米とは多くの違いを持ちながらも、同時に様々な類似点を持つ言語と文化にも出会わせてくれた。アニメやマンガは本当に素晴らしいものであって、欧米でもアクセスしやすくなった事が、凄く嬉しいよ。 +18

-ここまで-