2014年12月7日日曜日

ホルクロフトの盟約 ロバートラドラム著 昭和60年 角川書店  …感想。

アメリカの小説って---と思う。
 上下とあって大部な本なのだが、別にこう深い感慨をもったという訳でもない。

 今のアメリカ映画と同じ道を歩んでいるのだな—と感じた。
 なんというかジェットコースター映画とかいうものがあったが、ジェットコースター小説とでも言えば当たっているのかな。

 つまり。
 ある発端があって、以後、次から次へと予想もしない出来事が連続して発生し、ページをめくらざるをえない状態にする。
 そして、そのまま大団円まで読者をひっぱっていって、混迷の中にほっぽりだす—という小説なのだ。

 あとがきを読むとこのロバート・ラドラムの書いた小説って、アメリカのインテリと呼ばれる人に好まれるそうな。

 えっと思った。
 まぁ、マイクル・クライトンなら分かる。
 クライトンの知性の高さは、アメリカの並の流行作家から頭一つも二つも抜け出ている。
 あの知性の高さなら、読者をひっぱっていける。

 対して、ロバート・ラドラムならどうだ。
 知性の高さでは、マイクル・クライトンには及ぶべくもない。
 この表題の小説など、ジェットコースター小説だ。

 要するに。
 アメリカ人のインテリと自認する人って、自分の「頭の良さ」を誇示したいのだな。
 こんな訳の分からぬジェットコースター小説を「オレは面白いと思ったよ」てのが、「自慢」であり、「自分の頭の良さ」の証明になるのだろう。

 話がそれた。
 少し、粗筋にふれておこう。

 先の大戦末期、ドイツのナチの幹部数人が、数十億ドルのお金をある目的のために、スイスの銀行に蓄財した。
 そして、その数人の幹部の子供が揃い、30年後にこのお金を出金できる—という約束をスイスの銀行としていた--というところから出発する。
 以後、このお金を巡って、さまざまな組織の思惑が入り混じり、殺人・事件などが連続して発生する。

 筆者は、あつかうテーマがナチの残したお金の話か—と思った。
 なにか扱うテーマに「深み」がないなぁと思う。
 こんなものしかないのか。

 歴史が浅いということは、小説のテーマにも不自由するということなのだな。
 また、文化というもののもつ「儚さ」を思う。
 歴史が古くても、戦闘とか戦争があれば、文化的なものって、どんどん雲散霧消してしまう。
 エジプトとか中東・中国等を見ていればよく分かる。

 <もう、中国国内には曜変天目茶碗というものがないそうだ。1960年代の文化大革命という騒動の中で自分の手で破壊したらしい。曜変天目茶碗があるのは日本が主らしい。コレほどのものが大革命という騒動の中で無くなっていくのだ。そのはかなさを思う>

 日本という国は、歴史も古いのだが、島国であることで、文化的な遺産も多くのこっているのだ。
 そしてそれはロバート・ラドラムを含むアメリカの小説家よりも日本の小説家は遥かに恵まれていることを意味している。