2018年12月5日水曜日

レポート・小論文・卒論の書き方 保坂弘司著 講談社学術文庫 1978年10月刊 感想


この本、ちょいと、刊行された年が古い。
 ネットの普及という2000年から2010年に発生した現象の影響が及んでいない。

 それでも、「文章を書く」—という実に古典的な問題に対して、真正面からぶっつかった本だと思える。
 アマゾンをみていると、この本の評価がなされていた。
 古臭いと評価の低い人もいるが、上で書いたごとく、「正面から攻略しよう」という態度が、評価され全体としては高いようだ。

 そのアマゾンでの高評価の評を筆者が適当に抜粋して、転記し、最後に筆者なりの感想にふれたい。

 --ここから--

5つ星のうち5.0 ★王道。
 2010218
 形式: 文庫
 書かれている内容を「自分のもの」にするには、何度か読んでみたり、実際に書いてみたりする必要があるとは思いますが、親切でわかりやすく効果がありそうな本です。
 対象は高校生や大学生ということですが、社会人の方でも勉強になると思います。(最も役立つのは大学生の方でしょう)

・レポートはどういったものか--という解説に始まり、
・テーマの方向づけ
・資料の探し方 (図書館の分類についてまで触れています。)
・アウトラインの設定 (起承転結、首胴尾、起承転叙結などを例を交えて。)
・書く上でのルール (句読点やカタカナの使い方までも。)
・引用・統計・図表のルール
・文章の推敲  と続きます。

そしてココまでの内容を応用して、
・大学入試の小論文
・入社試験における小論文
・大学の卒論 を解説しています。
驚いたのはこの本の発行日です。
初版が1978年・・・。私・・・まだ生まれてなかったです。
ちなみに私が手にしたのは、1991年の23刷。
読み終わって気がつきました。資料集めで、インターネットが触れられてないハズですね。

この本は、基本がしっかりと詰まった「王道的な一冊」だといえるのではないでしょうか。
評価としては星5つです。


★後生畏るべし
5つ星のうち4.0 ノウハウ本としての位置づけ、論の意義
201081
 形式: 文庫
 文章のノウハウとしての一面があり、正道だと思います。また、例題等はやや古い材料(ソ連、石川達三氏)があるものの現代的なものに置き換えることができる内容とも思えました。
 挿入される例文や参考文等も面白く、内容は飽きさせない。実際に文章を書こうと思う人には、考えながら読める。
 当時の問題点と現在の問題点もほとんど変わっていないのもすごい。(恐ろしい、結局は解決できない問題なのかもしれませんが…)
 坂口安吾の考え方がわからない、というくだりで、著者と同級生である石川達三氏が対話をしている中で、読みこめば坂口氏の表現の考え方がわかるような下りがあり、納得をしました。
 基本的な考え方のベースがあり、そのベースを元に表現を変えるということが著者の意図なのでしょう。
 また、資料の集め方、読書の仕方が織り込まれ、単なる速読ではなく、さっと読む方法。
 そしてしっかりとした読書に取り組むことこそが、その人の人生にも深く芯となる軸を作ってくれる旨も語られていた。
 またあまり関わりたくないぶっきらぼうに思える指導教授の一言がヒントとなり論文の方向性を決めるなど、指導教授を大いに活用せよ、との言い回しもあった。 
 実際に人とモノと本に関わり体験をすることで論文なども書けるのでしょう。いやな奴の一言。これもまた何かのヒントになるかもしれません。
 起承転結等の手法を丁寧に説明するなかでも参考の挿入文もかなり厳選し、またご自分の考えも例文に織り込んでいるように思える。何回か読むと血肉となり、参考になることと思います。

20081012
 形式: 文庫
 文章を書く際、特に課題が与えられた上で報告書として書く必要がある文章について、どのように書き上げるかという純粋に技術的な事項について丁寧に解説した文庫。
 「そんなこと、言われなくても分かってるし、改めて教わる必要ないよ」と多くの人が言いそうな内容かもしれないが、実際には案外と気づかなかったことが拾い出せる内容になっている。
 なにか、文章や話し言葉については「思った通りに書けば思いは伝わる」とか「思いを誠実に伝えれば心は通じ合える」なんていいまわしが説得力を持っているように見えるが、実際には、人間の認知・注意は選択的なのでそこには常に誤解への道が用意されている。
 だからといって「すべては誤解されるんだから、ことばなんて信用出来ないし、信用しない」と悲観する必要もなくて、大事なのは相手に誤解を与えないようにことばを統制して、自分の言いたいことを上手く表せるように訓練することだろう。
 それは純粋に技術に関わる事柄で、学校の国語教育は伝統的にそんな技術を養成するための場ではなかったので、個々人がこのような書物について訓練しなければ、上手く自分の考えていることを他人に伝えることは上達しない。
 ここでは図書館の利用からことばの選び方、原稿用紙の使い方まで実例に即して教えてくれる。
 確かに、一度は読んでおきたい一冊。
 何度か読んでみても、何度も読んでみて実践してみるのにも役立つと思います。

5つ星のうち5.0 ★名著に理由あり!
200938
 形式: 文庫
 初版は30年前、私が手にしたのは44刷というロングセラー。
 ずいぶん前の本だし、書くことの環境が激変した今の時代に通用するのかと思っていたが、まったくの杞憂。文章を書くに当たっての基本が事例中心にわかりやすく説かれており、メインターゲットである学生ではなくても十分役立つ一冊だった。
 しかも、事例の取り上げ方などにちょっとしたユーモアも感じられて、著者の人柄を髣髴とさせる。
決して無味乾燥なテクニック本ではない。
 資料の検索の仕方などの項はさすがに古びてしまっているが、その他はどんな時代でも使える真理ばかりだ。
 「文章は(自分のために書くものではなく)読者に与えるもの」という著者の言葉を胸に刻んでおきたい。

5つ星のうち3.0実用的です。
 200437
 形式: 文庫
 起承転結を付ける。言葉を推敲する。当然のことも書いてある。
 しかし実際にはそれがあまり為されていないようだ。「資料の活用の仕方」がものを読むときの方法として参考になった。全ての資料にはざっとでも目を通す。これを試し読みという。重要だと感じた部分は精読。その際ページの空白部分にどんどん書き込みする、などだ。
 本書後半部分の、実践に於ける文章上のマナーなどが役に立った。
 奇抜なことは書かれていませんが、文章を書く人なら一度はこうした類の本を読んだ方がいいと思います。

 --ここまで--

 なにか、この本。
 タイトルの固さに較べて、読みやすいし、全体として面白いと感じた。
 筆者の印象に残ったところは、やはり、文の構成かな。
 首--尾 起---結 起----結  というように、3.4.5といくつかに区分? することを意識することを強調されていたことかな。

 上にも書いてあった、一度はこういう本を読んだ方がいいと思える。