▲新手の原発ゼロキャンペーンらしい。
基本的に筆者は、原発再稼働賛成派であるし、いずれ、原発を新設せずにはおれないということになると確信している。
そこに、この「自然エネは儲かるが新常識」なる記事があってなんだろう—と訝しげにみている。
さて、どんなことを言っているのだろう。
記事を抜粋してみよう。
「自然エネ価格は世界規模で急速に低下し、石炭や天然ガスよりも安くなっている」/(C)日刊ゲンダイ
福島第1原発事故を受け「脱原発」を宣言した金融マンは、絶対に「原発ゼロ」をあきらめない。
先月には小泉純一郎元首相らと「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表。
全ての原発の即時廃止と自然エネへの全面転換を目指す内容に、メディアがかみついたが、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟会長の吉原毅氏は「批判はすべて事実誤認」とあきれ顔だ。
多くの国民が知らされていない世界のエネルギーの新常識とは――。
■原子力ムラが殺す日本の技術
――基本法案について、産経新聞が社説で〈亡国基本法案〉〈夢想の虚論〉と論評していました。これに反論したそうですね。
批判をいただき、感謝申し上げる。原発推進派の考え方がよく分かりました。産経新聞でさえ、世界のエネルギー情勢を誤認している。真実を教え、認識を改めていただこうと反論書を送りましたが、回答はいただけていません。
――産経の社説は〈太陽光や風力発電の電気代が年々、家計に重くのしかかっている〉と高コストを指摘。
海外で言ったら、笑われます。世界の常識を全くご存じない。自然エネ価格は世界規模で急速に低下し、低コストの石炭や天然ガスよりも安くなっています。太陽光の最安値は1キロワット当たり1・77セント。円換算で2円を切る。風力も肉薄しています。
――ところが、政府は「原発のコストは安い」と喧伝し、ベースロード電源の20~22%に組み込もうとしています。
コスト計算は金融機関が専門です。経済人なら、誰もが原発は採算割れだと知っています。政府もウソをつけないのか、資源エネルギー庁の発電コストの検証資料には、原発だけ「1キロワット当たり10・1円~」と余計な「~」が付いています。「~」とは無限大の可能性もあるということ。
苦肉の策の真意を読み取ってあげなければいけません。
――発電コスト低下の裏で何が起きているのですか。
技術革新です。太陽光や風力の発電設備はシンプルで、生産するほど習熟曲線効果で技術は進歩する。大量生産によって製造コストは下がり、設備投資の額も安くなる。特に中国は品質を向上させ、世界中で飛ぶように売れています。ソーラーパネルと風力装置はともに中国企業が世界シェア首位。今や世界一の自然エネ大国です。
――日本のメーカーはどうなのですか。
技術面で後れを取っています。私も自然エネ推進プロジェクトに関わっていますが、太陽光も風力もバイオマスも、まず日本製が採用されない。
現場に聞くと、実績がないし、故障が多いと言うのです。「世界に誇る日本の技術」も経験を積まなければ、国際競争に勝てない。
原子力ムラの妨害によって、自然エネ開発が進まないままだと、日本の技術はますます世界から取り残されます。
――先日も電力各社が「満杯」としてきた送電線の容量が、実際は平均8割も空いていたとの京大の研究グループの調査結果が報じられました。
原発再稼働のために確保しているのです。風力発電の供給を検討していた福島の「飯舘電力」は、送電線に空きがないとして、東北電力から20億円もの送電増強費を要求され、事業断念に追い込まれた。
こんなバカげた妨害を政府が容認するから、自然エネは拡大しない。政府が原発即時ゼロを決断し、送電線が空けば瞬く間に普及します。
日本の全原発の廃炉費用は多く見積もっても10兆円でしょう。
バブル崩壊後に国内金融機関は110兆円もの不良債権を処理し、旧国鉄の分割・民営化で国は37兆円の債務を処理しています。それらと比べれば、どうってことない金額です
――産経は社説で〈日本が資源に乏しい島国であることを完全に無視している〉と書きました。
米エネルギー学者のエイモリー・ロビンス博士は「太陽光、風力、地熱に恵まれた日本は、ドイツの9倍の豊かな資源がある」と語っています。
例えば日本の農地460万ヘクタールを使い、農作業しながら空中で発電を行う「ソーラーシェアリング」の技術を用いれば、日本の電力需要の10倍に当たる1840ギガワットの発電が可能です。
農家にもお金が回り、耕作放棄地もなくなる。地方に新たな産業が興れば、さまざまな関連ビジネスや雇用が生まれる。
若者も希望を持って帰ってくる。こうして自然エネに転換したドイツやデンマークは、地域経済の活性化に成功しました。自然エネは、安倍政権が掲げる「地方創生」の切り札なのです。
――ワクワクします。
国防面も盤石です。原油に頼らなくなれば、ホルムズ海峡の封鎖は心配無用。逆に危険な原発が54基もあれば、「さあ、ミサイルを撃ってくれ」と国を差し出すようなもの。
産経的には北朝鮮の脅威が高まる中、それでいいのでしょうか。
――皮肉ですね。
海外に支払う年間25兆円もの化石燃料費が丸々国内に返ってくる。それだけの富が国民に幅広く行き渡るのに、原発温存による「政策障害」が、日本の経済発展を阻害しています。
――中国の方がよっぽど進んでいますね。
昨年、共産党大会で、習近平国家主席は「エネルギー革命を起こす」と宣言。
2050年までに自然エネを全電力の8割に拡大させる国家目標を掲げました。
中国が自然エネに力を入れるのは単純に儲かるから。利にさとい国ですから、儲からないことはやりません。
太陽光も風力も燃料費ゼロ。設備の寿命も40年はもつ。設備投資の減価償却を終えれば、近い将来、コストゼロの電力で経済を賄えるのです。
――なるほど、儲かるに決まっています。
“自然エネは儲かる”が、世界の常識。新たな産業革命ともいわれています。
低コストで効率良く、安全性が高い。今や電力の主役です。太陽光の総発電量は毎年純増し、380ギガワットを超えた。
風力も500ギガワットを超え、両者で1000ギガワット目前。原発1000基分に匹敵します。
加速度的に市場は拡大しているのに、日本だけが立ち遅れている。自然エネに舵を切らなければ、それこそ「亡国」につながりかねません。
――自然エネには世界の金融機関が、かなり投資しているそうですね。
ゴールドマン・サックスが27兆円、シティ・グループは16兆円など景気のいい話が飛び交っています。
また、事業運営の自然エネ100%調達を目指す「RE100」には、アップルやNIKE、BMWなど日本でも有名な世界企業122社が加盟していますが、日本企業はリコー、積水ハウス、アスクルの3社のみ。
もはや環境意識の高い企業でなければ、国際金融界から相手にされません。
追い込まれた日本の財界や大企業は悲鳴を上げ始めています。原子力ムラのせいで、国際金融界から日本企業が排除されかかっているとは、由々しき問題です。
■戦艦大和の過ちを繰り返すのか
――自然エネはいいことずくめなのに、政府はなぜ、かたくなにデメリットだらけの原発に固執するのでしょうか。
簡単に言えば、原子力ムラのエゴイズムです。
従来の方針を続ければ、とりあえず目先の利益や自分たちの利権は守られる。「今だけ、金だけ、自分だけ」の発想です。
そして政官財ともリーダー不在で、誰もが政策転換の責任を負うのを恐れている。
戦前の日本軍も、「航空主兵論」が世界の趨勢だったのに、時代遅れの「大艦巨砲主義」に固執し、戦艦大和に莫大な資金と労力を費やし、無用の長物と化した。
その結果、この国は一度、滅びたのです。現政権は同じ轍を踏んでいるように見えます。
――目先の利益といえば、アベノミクスの異次元緩和策にも相通じるものを感じます。
株価上昇が目的なら、問題です。株式投資は一種のバクチ。資産を持つ人が、その資産によって、また儲かる仕組みです。カネがカネを生むような風潮を政府が助長すれば、人々の勤労意欲や社会貢献の気持ちを逆なでします。
拝金主義の蔓延でモラルが崩壊し、国家の衰退を招きかねません。
原発の背後でうごめいているのは「原子力ムラ」の住人だけではない。
拝金主義の蔓延で増殖した利己主義、自己中心的となった日本の世相が深く根を張っています。
▲補足、感想など
ざっと読んで思ったのは、「電気は蓄積できない」ということ。<電気を水素という形で蓄積するという案は知っている>
また、国家としての安全を守るためには、海外から電気を輸入するということはできない-ということだ。
風力、太陽光発電のコストが下がっているというのはその通りだろう。
しかしながら、風力は当然、風が吹かなければ発電できないし、太陽光も太陽が照らしていないと発電できない。
その意味で不安定なのだ。
だから、恒常的に発電できるエネルギー源の補助的な役目しか果たし得ない。
潮流発電、地熱発電あたりであれば、恒常的に発電できる。
そのあたりのエネルギー源を主力とするしかない。
上の説明をみていると、どうも、科学的な知識に弱いようだ。
潮流発電、地熱発電が実用化して、本格稼働するには、もう数十年の歳月が必要だ。
その前に、現在ある原発を再稼働しても、耐用年数が一杯となってしまおう。
原発の新設を含めて、原発の再稼働を中心としてエネルギーを確保することが、一番真っ当な「王道」としか考えられない。
エネルギーをどこから確保するかということは、国家の命運すらも左右するものだ。
こんな非科学的な説明でうまうま乗ってしまえば、それこそ、亡国への道をまっしぐらであろうな。