2018年3月14日水曜日

ドイツ、フォルクスワーゲンの未来

どうもなぁと思う。
 ドイツ、VWの記事を読みながら、フツフツを疑問が湧いてくる。
 VWのディーゼル車での不正が明らかになって、2年。
 これから、電気自動車へ傾注するという方向らしい。
 それは、その通りだろうが、日本のホンダ・トヨタの見通しと随分違うのだ。

 筆者の疑問の核心は、ガソリン車 → 電気自動車 に簡単に移行しないということ。二つめは、VWは、ディーゼルエンジンについて、排ガス規制をクリアできるほどのエンジンに進化させることはできないということ。なぜって、日本のマツダのスカイアクティブでさえ、アメリカに投入しなかったのだ。
 VWで、マツダのスカイアクティブを超えることができる訳もあるまい。
 ところで、VWの記事では、実に簡単に ガソリン車 → 電気自動車 となる「見込み」としている。そこに「なにかありそうだ」と思える。

 まず、新聞から抜粋。

 独フォルクスワーゲン (VW)の業績が急回復してきた。
 2017年は純利益がディーゼル車の排ガス不正発覚前の水準を上回り、販売台数も2年連続で世界一を達成。
 13日には電気自動車(EV)の生産体制も明らかにし、次世代車の競争ヘアクセルを踏む。
 不正発覚から2年あまり。V字回復に死角はないのか。
  「史上最大の危機から戻ってきた。ジェットコースターのような旅だったが、今は非常に良い状態だ」。
 13日にベルリンで開いた記者会見で、マティアス・ミュラー社長は力を込めた。

 17年の世界販売は16年比4%増の1074万台。
 純利益は2・2倍の113億5400万ユーロ (約1兆5千億円)に達し、不正発覚前の14年を5億ユーロ上回った。特筆すべきは7・4%に高まった売上高営業利益率(特殊要因を除く)だ。
 数年前までの3%前後と比べ、改善ぶりが際立つ。
 ただ、足元の復活劇は不正発覚前に旧経営陣が取り入れた施策の効果が大きい。

 創業家出身で、経営に長く影響を与えたフェルディナント・ピエヒ元会長の側近らが進めた車両設計の共通化が収穫期に入ってきたのだ。
 高級車から大衆車までブランドやサイズを問わない共通化で、開発や部品調達、生産のコストを抑制。
 17年は全体の約4割、18年は5割まで共通化を進め、19年に効果はピークを迎えるという。
 一方で、ピエヒ氏が嫌った多目的スポーツ車(SUV)を相次ぎ投入。

 SUVはVWが得意とする小型の大衆車に比べ価格が高く利幅も大きい。
 自ら発端となったディーゼル車への逆風も、ガソリン車の販売を伸ばし乗り切ってきた。

 結局、足元の好調は先人の遺産を生かしつつ、時代に合わない部分を否定する「いいとこ取り」とも言える戦略がはまった格好だ。
 完全復活への道は平たんではない。組織の合理化では、高級二輪車のドゥカティ売却が従業員代表の反対で失敗に終わった。

 検討しているトラック部門の分離上場も、社内の説得が壁になる。
 ピエヒ時代は「上意下達」 「中央集権」といった風土が機動的な意思決定を阻み、不正の温床にもなった。
 従業員の意識を含めた企業風土の改革は「ゴールから最も遠い、とてつもなく大きな課題」とミュラー氏自身が認める。

 従業員への調査ではドイツ国内の工場に勤務する約5万人の3分の2が風土改革について「進歩がみられない」と答えたという。
 不正の影響もまだくすぶっている。17年には車両の買い戻しなどに32億ユーロを費やした。
 18年も数十億ユーロ単位の費用が発生する見通しだ。

 今年に入ってからも、英国で集団訴訟の動きがあり、2月にはドイツ連邦行政裁判所がディーゼル車の市街地走行の禁止を認める判決を出した。
 強まるディーゼルへの逆風で、今後、多額の改修費や賠償金が新たに発生する可能性もある。
 だがミュラー氏は販売への影響は限定的と強調。
 「ディーゼルエンジンの死は望まない」と述べ、ガソリンエンジンを含めた内燃機関への投資を継続する方針を示した

 18年からは電動化を中心に次世代技術にも5年で340億ユーロの投資を計画する。
 クルマは大変革期のまっただ中。その変化を上回るスピードで、VW自身が変わり続けられるか。 好業績に浮かれている余裕はない。

補足、感想など

 ドイツという国が、VWを後ろ側から支えているのだろう。
 しかし、冒頭でふれたように、すぐに電気自動車へ移行するとは思えない。
 電池の技術革新がなければ、コスト高となって、ホンダなどのハイブリッド、燃料電池車などに対抗できまい。
 そういう「要—電池の技術革新」というキーテクノロジーを敢えて無視して、VWは電気自動車へ飛び込んでいる。
 まるで、電気自動車購入者には、ドイツでは大幅に税金で援助するぞ—てな、約束がなされている様な感じがする。
 ドイツ国内は、税金で補助できるだろう。じゃ、ドイツ以外ではどうなんだ?

 --ここから--

 独フォルクスワーゲン (VW)は13日、2022年までに欧州と中国、米国の16工場で電気自動車(EV)を生産すると発表。
 EVの中核部品の電池については、すでに韓国と中国の大手と約200億ユーロ(約2兆6千億円)の契約を結んだことを明らかにした。
 目標に掲げる25年に300万台のEV販売に向けた戦略が具体化してきた。

 VWは現在3拠点のEV工場を持つが、20年までに9拠点を追加し、22年までには少なくとも16工場で生産する。
 欧州では現在のドイツとスロバキアに加え、チェコやポ-ランドなど東欧に広げる。
 主戦場と位置付ける中国では22年に5拠点で生産する体制を整備し、米国でもテネシー州の工場で生産する。

 EVに搭載するリチウムイオン電池は自社で生産せず、有力部品メーカーから調達する。
 このほど欧州と中国での調達契約を結んだ。
 VWのマティアス・ミュラー社長は記者会見で「韓国のLG化学とサムスンSDI、中国の寧徳時代新能源科技から調達する」と明らかにした。
 他のメーカーとも交渉しており、北米での調達先も近く決まるという。
 次世代のリチウムイオン電池も開発し21年以降に投入する。
 エネルギー密度を高めて走行距離を長くするほか、価格が高騰するコバルトの使用量を抑えるとしている。

 --ここまで--

 電気自動車の電池について、トヨタの副社長がコメントしている。その記事を。

 --ここから--

 電池コストEVは20倍  量産効果になお時間
 電気自動車(EV)は走行中に排ガスを出さないため、大気汚染が深刻な中国などで次世代エコカーの本命とされる。
 ただ、EVにはハイブリッド車(HV)の約50倍の容量の車載電池が必要で、現時点ではコストは20倍超にのぼるとされる。
 量産効果でコストが下がるには時間がかかり、EVはゆっくりとしたペースで普及する見通しだ。

 2030年に世界販売に占めるHVやEVなどの電動車を550万台以上に引き上げると表明したトヨタ自動車。
 小林耕士副社長は「電池が一番の課題になる」と指摘する。
 同社の主力HV「プリウス」では1台当たり6万円だった電池のコストがEVでは140万円に達するといい、「売価に反映できるかどうかを含めて、非常に答えがたい問題だ」と話す。

 EV用電池のコストを大幅に引き下げる技術として、トヨタなど自動車各社は「全固体電池」と呼ぶ次世代電池の開発にも力を入れている。
 ただ、電極部分を精密に加工する技術の難しさなどから量産化のハードルは高く、今のところ普及の道筋は立っていない。
 当面は内燃機関とモーターの組み合わせによって燃費効率を高め、各国の燃費規制に適合する手法が自動車業界の現実解となる見通しだ。

 --ここまで--

 トヨタが、電気自動車への移行が、「ゆっくりしたペースで普及する」と考えているのだ。
 ハイブリッドで6万円のものが、電気自動車では140万円に達するのだ。
 コストを下げなければ、普及する訳もあるまい。

 それを、VWは、記事にあるように、全力で資本を投下しようとしている。無謀なほどに。
 これはなぁ、と思う。
 結局、VWが追い詰められているのだ。
 追い詰められ、追い詰められて、殆ど勝算のない「電気自動車」へ無謀な賭けを始めたということではないのかな

 VWの未来は、暗いなぁ。