2018年3月30日金曜日

再生エネルギーを主力電源としていいのか。その2


日本政府の発表した方向がどうも気に入らない。
 まるで、先の大戦中の大本営発表のようなおかしいというか、わざと大事なことを抜かしているような気がしてならない。

 筆者のひっかかる点はいくつかだ。
1.再生エネルギーは、主たるエネルギー源とはならない。
2.原発を再稼働しても、現原発の耐用年数中には、原発に代替できるだけのエネルギー源がみつからない可能性が大きい。
3.すると、原発を「新設」するという決断をしなければならなくなる。

 つまり、どうしても「原発の新設」という可能性を考えて、諸々立案しておかなければならないのだ
 その部分を、政府は敢えて隠そうとして、グレイにしたままとしている。
 こういう発表の仕方が正しいのか。

 そもそもと思う。
 どこから、エネルギーを獲得するか—という問題は、国家の命運を左右するほどものだ。
 先の大戦時において、早々に、南進作戦を採用せざるを得なかった理由を考えてもみよ。
 日本では、あの時と同じ状況なのだ。
 エネルギーの一滴は、血の一滴なのだ。

 その部分を敢えて、ぼんやりとさせる---という政府の決断に、腰が引けているというか、もっと言えば、「コイツ、卑怯なヤツだな」と感じる。

 以下、新聞から抜粋。

再生エネ主力に
 2050年戦略原発比率示さず

 2050年に向けた国の長期エネルギー戦略の概要が分かった。
 温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づく脱炭素社会に向け、太陽光など再生可能エネルギーを主力電源化する方針を明記。
 安定供給に向けて蓄電池や水素の技術を集中的に開発すると打ち出す。
 原発は「脱炭素化の選択肢」としながらも依存度を低減。
 多様な技術を組み合わせて情勢の変化に対応する。
 電源構成の数値目標は示さない。

蓄電池・水素活用
 長期戦略は経済産業省のエネルギー情勢懇談会で協議しており、4月にも最終案をまとめる。
 今夏の閣議決定をめざすエネルギー基本計画に反映させる方向。
 同計画は主に30年までの政策の方向性を示すが、その先をにらんだ政府戦略となる。
 太陽光や風力など再生エネは価格低下とデジタル技術が進んで「主力化への可能性が大きく拡大している」と分析。
 一方で天候などに左右されるリスクの耐性を強化する必要性を強調している。

 解決手段としては、再生エネと組み合わせて出力の変動を補ったり、余ったエネルギーをほかの用途に活用したりできる蓄電池や水素技術の革新をあげる。
 ITによる電力システム刷新のほか、再生エネの大量導入を受け入れられる送配電網の整備や効率化を急ぐ。
 30年以降は温暖化対策や国際情勢の動向、再生エネや原発政策の進捗状況を勘案する必要性が増す。
 戦略案では再生エネを主力としつつ、多様な電源を最適に組み合わせていく。
 原子力、液化天然ガス(LNG)、水素など柔軟に活用する。

 原発は「脱炭素化の選択肢」とするが、廃炉や廃棄物処理の対処、社会的な信頼回復が必要と指摘。
 新増設や建て替えの直接的な表現は見送る。
 一方で「安全性や経済性などに優れた炉の追求」と一定の余地を残す。
 火力発電など化石エネルギーは「過渡期における主力」とし非効率な石炭火力などは順次廃止する。
 再生エネの主力化と並行して、リスク対応力を強化する。

 太陽光パネルは中国企業が世界シェアの上位を占める。風力発・電機も海外勢が強い。
 1つのエネルギーに依存すれば、部材供給途絶や価格高騰などに弱い構造をつくりかねないからだ。
 原子力や水素、蓄電池で市場シェアや技術力をもつ日本企業は多い。

 再生エネと組み合わせて使い、企業の競争力を維持する狙いもある。
 電源構成は14年の基本計画策定後に「30年度に原発2022%、再生エネ2224%」をめざしてきたが、長期戦略で目標値は示さない。
 一方で、政府に新組織をつくり、科学的に分析し最適なエネルギー選択の判断材料を示す「科学的レビュー・メカニズム」を始める。

補足、感想など

 30年先か。
 確かに不確実な空想の世界ではある。
 しかし、恒常的にエネルギーを獲得できる原発の重要性は変わらない。

 冒頭でふれたように、「原発の新設」ということは、視野にいれなければならないのだ。
 あまり表面にはでないが、原発建造技術を残そうとオール日本で頑張っている。
 その記事をみよう。

 --ここから--

2018/01/03()

 日立製作所が英国で進める原発新設プロジェクトに対し、3メガバンクと国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が、総額1.5兆円規模の融資を行う方針を固めた。
 事故などによる貸し倒れに備え、日本政府がメガバンクの融資の全額を債務保証する。
 政府系の日本政策投資銀行は出資による支援を行うほか、中部電力など電力各社も出資を検討する。

 総額3兆円規模に上る原発輸出を、政府主導の「オールジャパン体制」で後押しする。
 JBICや政投銀による投融資も含めると、政府が巨額のリスクを抱える形となる。
 損失が発生すれば、最終的には国民負担を強いられる懸念もある。

 投融資の対象となるのは、日立の英国子会社が2020年代半ばの稼働を目指し、英中部アングルシー島で進める原発新設プロジェクト。日立は投資の最終判断を19年度に下す予定だが、リスクを1社で負うのは不可能として、日英両政府や金融機関と協議を続けている。
 国内金融機関と政府全額出資の日本貿易保険(NEXI)は昨年12月、日立の求めに応じ資金支援の意思を示す趣意書を提出した。

 関係者によると、日立は現時点で原発建設の事業費を3兆円程度と見積もり、うち1.5兆円程度を金融機関の融資、残りを出資で賄うことを見込んでいる。
 融資のうち、三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは1行当たり千数百億円程度を拠出し、3行の融資総額は5000億円規模となる見通し。
 NEXIが債務を保証する。残りはJBICや、英国の民間金融機関が融資する。

 出資は政投銀が意向を日立に伝えたほか、日立製の原子炉を国内で使用する中部電力と日本原子力発電も検討に入った。
 日立は東京電力など他の電力会社や商社にも出資を打診しており、関連事業会社連合の協力でリスク分散を図る。
 原発新設を急ぐ英国政府もプロジェクトに出資する意向で、日英両エネルギー担当相は昨年12月、今後の協力に関する書簡を交わした。

 原発建設は、11年の福島第1原発事故後の安全コスト増大で世界的に採算が悪化しており、東芝の経営危機の原因にもなった。
 だが政府は「技術を絶やさないためにも、英国のプロジェクト獲得は必要」(経済産業省幹部)との立場で、全面支援の姿勢を示している。

 --ここまで--

 同様なことがトルコでもなされている。

 --ここから--

2018/03/15()
 対トルコ原発輸出、建設事業費が倍に 安全対策費かさむ
 三菱重工業など日本企業がトルコで手がける原発建設計画の総事業費が、想定の2倍以上にふくらむ見通し。
 計画は原発輸出を成長戦略に掲げる安倍政権が推進しているが、2011年の東京電力福島第一原発事故後、原発の安全対策費がかさみ、日本企業が採算を取るのが難しくなっている。

 計画ではトルコ北部の黒海沿岸のシノップ地区に原発4基(出力計440万キロワット規模)をつくる。三菱重工と仏企業が共同開発した新型炉「アトメア1」を採用し、建国100周年の23年の稼働をめざす。伊藤忠商事や現地の電力会社なども参画する予定だ。
 当初、事業費は4基で2・1兆円程度と見込まれていた。
 だが、事業関係者によると、日本側が事業化に向けて調査する過程で1基あたり1兆円を超え、総額4兆円以上にふくらむ見通しが分かったという。
 原発の安全規制を強化する流れが加速したためだ。23年までに完成させるのも厳しそうで、日本側は今年に入り、トルコ側に想定通り進めるのは難しいことを水面下で伝えた。
 トルコ側からは「失望した」との感想が漏れたという。

 --ここまで--

 また、ポーランドで。

 --ここから--

2017-12-21
 日本が、欧州ポーランドの次世代原発建設事業の誘致に成功した。
 2011年、福島原発事故直後、脱原発政策などで原発輸出競争で苦境に陥ったが、政策を全面修正し、既存の設備の欠点を補完するなど日本の原発産業界が海外市場で競争力を取り戻しつつあるという解釈が出ている。
 日本経済新聞が21日、日本政府と民間部門が力を合わせて、次世代原子炉である「高温ガス炉」を2030年までにポーランドで建設すると伝えた。

 新聞によると、日本政府は来年初め、ポーランド政府間と正式合意を締結し、出力16万キロワットの原子炉を建設する。
 この事業には、日本原子力研究開発機構を中心に東芝、三菱重工業、日立製作所などの企業が参加する。
 高温ガス炉は、一般の原子炉のようにウランを燃料に使用するが、冷却剤として水の代わりにヘリウムガスを使用する。

 化学反応や蒸発が起こらず、水素、水蒸気爆発も発生しない。
 冷却電源を切っても炉心が溶けず安全性も高く、二酸化炭素の排出量も少ないという。
 ただし、高温ガス炉は出力が20万~30kWで一般の原発よりも小さい。
 日本は、一般の原発輸出には限界があると判断して、次世代高温ガス炉輸出に主力する方針だ。

 特に二酸化炭素排出規制が厳格な欧州連合(EU)では高温ガス炉の導入に積極的という分析に、ポーランドを足がかりに、高温ガス炉輸出に力を入れるものとみられる。
 高温ガス炉は現在商用運転は行われていない。ただ、日本の原子力機関は、世界で初めて高温ガス炉の研究炉を茨城県に作って出力3万キロワットの稼動に成功している。
 日本企業は来年中にポーランドの現地企業が参加するコンソーシアムを構成して、2025年までにポーランド国立原子力研究センターに出力1万キロワット級の研究炉を建設する計画だ。

 最終的には2030年に商用炉(商業発電用原子炉)で運転を開始するのが目標だ。
 日本の原子力機関は、すでにポーランドに技術者を送り、現地調査を行っている。
 商用炉は、1基当たり約500億円(約4762億ウォン)水準で、ポーランドの発注量が2基の場合、約1000億円規模を受注することになる。

 --ここまで--

 世界的な逆風の中で、原発を新設することがどれだけ困難なことか理解できる。
 冒頭でふれたように、再生エネルギーは基本的に補助的なエネルギー源にすぎない。
 主たるエネルギー源が、原発であることには替わりはあるまい。
 ただ、補助的なエネルギー源が増えていくだけであろう。

 日本人の懸念も書いておきたい。

 --ここから--
20180315
 脱原発は、「今の原発が安全か」よりも「今後数十年の原発の技術的発展余地はどの程度か」で決めてほしい。
 技術的なことは何も分からんが、脱原発して最も恐ろしいパターンは、日本が技術捨てた後、中国とかが画期的な原発作って事業に革命起こして、日本がそれを買うことになる、という事態。
 八木アンテナレベルの悲劇になる。

 --ここまで--

 日本が、中国の新型原発のパテントを買う—か。
 身震いするほど恐ろしい話ではある。