▲う~ん、いろいろなことを考えさせてくれる現象だなぁ。
表題は東京と書いたけれど、関東平野では—と言い換えるべき話なのだろう。
1950年代(もっと前からか、戦前からかな)から1970年代に掛けて、東京を中心にして、工場で地下水を組み上げて工業用水としていた時代があった。
結果として、地盤が沈下して、海に近い地区では、海面と同じ海抜ゼロメートル地域とかが出現した。
これでは—というので、1970年代くらいからか、地下水を工業用水として利用してはならない--と制限を掛け、以後約40年以上が経過した。
この40年間という時間を経過して、地下水位が徐々に元に戻ったということだ。
しかし、元に戻ったことで、その40年の間に建設した地下施設—例えば、地下鉄などが言わば、水の中に浮き輪を沈めたような状態となって、「浮力」が掛かり、水圧で水が地下鉄内へ滲出するようになった。
以下、新聞から抜粋。
東京都内の地下水位が40年前と比較して、最大で約60メートル上昇していたことが調査でわかった。
戦後から高度成長期にかけて工場などが大量の地下水を使用して地盤沈下が進み、これを食い止めようと長年にわたってくみ上げ規制を続けてきたためだが、
水量が増えたことで地下の構造物では漏水などのトラブルが急増。
首都高の延伸工事に
遅れが出るなど、新たな問題も生じている。
■昔の水位に
都土木技術支援・人材育成センターが調査している23区内の「観測井戸」は
48か所あり、最も深いものは約350メートル。
東日本大震災の影響がない2010年の水位と、都がくみ上げ規制を始めた
1970年の記録が残る19地点で水位を比較したところ、
全地点で15メートル以上も上昇していた。
水位の上昇幅が最も大きかったのは、板橋区富士見町で約60メートル。
墨田区立花で約45メートル、新宿区百人町では約39メートルも上がっていた。
都は「板橋区などはかつて工場が多く、大量の井戸水を使用していた。
地下水が増えているというよりは、昔の水位に戻ってきているのではないか」とみる。
■壁面が剥離
地下水が増えたことで、思わぬ影響も出始めている。
建設中の首都高中央環状品川線は、地下区間の品川区西五反田付近などで、工事中に
大量の地下水がわき出たため、品川線の完成は1年延期に。
都建設局は、「ボーリング調査に基づく予想とは異なる箇所から水が出てきた。
地下水の流れは簡単に把握できない」と頭を抱える。
大量の地下水の影響は、既存の地下施設にも忍び寄っている。
都営地下鉄三田線では今年3月以降、4か所でトンネル壁面の剥離が見つかった。
いずれも、漏出した地下水で内部の鉄筋が腐食し、隙間が生じて壁面のコンクリートがはがれ落ちたためだった。
こうした現象は、これまで都営全線で年1、2件程度しかなかったことから、
都交通局が3月から緊急調査を実施したところ、漏水箇所は2100か所以上もあった。
都交通局は「地下水が増えれば、対策費も膨らむ」と心配する。
▲補足、感想など
記事には書いていないが、おそらく「浮力」がかかる。
地下鉄自体が浮き上がろうとする力がかかるので、周辺にアンカーを打ち込んで、浮き上がりを防止するという工事が必要となるだろう。
また、大深度地下といって、地表より50m以下の地下には「私権」が及ばない。
いわば、公<おおやけ>に使える地下部分であるが、この利用の際にも、この地下水位の上昇はコストアップという形で影響するのだろうなぁ。
でも。
ある意味、日本ならではの”贅沢な悩み”ではある。
世界をみれば、水がないことで困っているのだ。上の記事は、水がありすぎて困るという話なのだから。
で。
じゃ、この余ったというか、ありすぎる水をどう使えばいいだろうか。
そのヒントらしいものを掲示板の書き込みから拾ってみよう。
--ここから--
◇暑い時ビルの壁面からミストにでもして放出して消費するとかいくらでも使い道あるじゃん。
不足している方は如何ともしがたいけど、余ってる方はどうとでもなる。
◇地表に水を逃がす川を作って、そこにながせばヒートアイランド対策になるんじゃ無いか?
◇ところが、くみ上げすぎて地下水位が下がっていたころに建てられたり掘られたりした構造物は
そういうのを想定してなかったりするから、改めて対策しないといけなくなっていたりするはず。
◇地下水を汲み上げて、お堀とか神田川、目黒川に流せば、水が綺麗になって丁度いい。
浜離宮とか田町や品川の運河とか、地下水を流せば綺麗になるところは一杯あるだろ。
◇昔、くみ上げすぎたから、供給が追いつかなくて水位が減った。
くみ上げるのを止めたから、水位が戻った。
原理としては、それだけの話。
問題は、昔とは違って、地下のそこらかしこに構造物が造られてて、そこに影響が出ている、ということ。
--ここまで--
まぁ、小規模な工場であるなら地下水を組み上げで工業用水として使うことを許可するとか、個人で井戸を掘って利用させる—とかの制限を緩くして、そのあたりのバランスを取るしかあるまい。