▲もう、なにを言っているのか分からない社説ではある。
「原発再稼働」についての核心をつかまないまま、文章を書いているからであろう。
どのあたりから。
この問題を考える基本的なことをまず列記しよう。
あ、原発がどうたらにひっぱられるな。これは日本という国を維持するためのエネルギーをどこからもってくるか—という国レベルで考えることだ。
い、エネルギー問題は、食料問題と一緒で、他国からエネルギーをもってくる—という話はなし。韓国からロシアから電力をひっぱってくる--という選択肢はなし。
自国の安全という問題に直結するからだ。
う、日常の生活を維持するためには、ある絶対量のエネルギーが必要だ。そのエネルギーなしには、原発に代替するエネルギー源をみつけ、これを実用化するという作業もできなくなるということを直視しよう。
え、現時点では、原発に代替するだけのエネルギー源は見つかっていない。また、代替するエネルギー源を、みつけて、これを実用化するためにはもう数十年の歳月が必要だ。
これくらいかな。
原発問題を考えるための「最低、知っておくべきこと」は。
では、これを踏み台にして、以下、地方新聞の社説を読んでみよう。
政府は新たなエネルギー基本計画案を決定。基本計画の見直しは3回目。
最初の計画は2003年10月にできた。
中で原子力発電は「安全確保を大前提として、基幹電源と位置づけ推進する」
と明記。
07年3月に見直され、原発の表現はそのまま踏襲。10年6月の改定で「推進」の前に「積極的に」が加わった。
▼解釈次第でどうにでも
今回の計画案は分かりにくい。
原発は「重要なベースロード電源」、原発依存度は
「可能な限り低減する」。
しかし、「安定供給やコスト低減の観点から、
確保の規模を見極める」とした。
「可能な限り」と付いたのがくせものである。
努力の度合いで結果が変わる。
限りなくゼロに近づくかも
しれないし、現状維持に落ち着くかもしれない。
原発は「安定供給とコスト低減に資する」と言って
逆に増やすかもしれない。
解釈次第でどうにでもできそうな表現が、なぜ使われたのか。
世論を意識してである。風当たりはなお強い。
電話世論調査では、
原発再稼働に反対は54・9%で、賛成の39・0%とはなお差がある。
世論の主流である脱原発に正面からぶつかるのはまずいとの計算が働いたのは容易に想像できる。
東京都知事選では、原発を争点とする動きがあった。
すると、政府は昨年12月にまとまったエネルギー基本計画案を
いったん棚上げする動きに出た。
そして、選挙結果を見極め、基本的には変わらない政府案を決定したという。
だが、こうした議論を避けるやり方は将来に禍根を残す恐れがある。
福島第1原発事故の教訓は、原発施設の安全性を高めていくだけでは生かせない。
福島事故の教訓は「過酷事故は起き得る」である。
どれほど安全性を強化しても、万が一のことがあり得る。
そして、原発施設外に大量の放射性物質がばらまかれると、地域と住民の暮らしが一気に崩壊する-。
事故はこの事実を見せつけた。
被害者である住民の暮らしを再建し、地域を再生するのに現状の仕組みが十分なのか。
十分ではない。課題が多い。
原子力損害賠償制度の見直しも検討課題の一つだ。
原発周辺の
関係自治体の地域防災計画・避難計画はさらなる充実が欠かせない。
既に玄海原発と川内原発については事故を想定した
関係自治体の避難計画がつくられている。
だが、実効性はどうか。
福島第1原発事故は大地震と巨大津波が引き金になった。
地震と津波で
まず被害や犠牲者が出て、そこに事故が重なった。
現場は混乱し、系統だった避難はできなかった。
悪いことが重なって過酷事故に至る。そこまで想定しているか。
▼継ぎはぎを重ねた対策
被害を免れても長期避難生活が待っている。
福島県全体の避難者数は現在でも約13万6千人を数え、仮設住宅暮らしも多い。
事故で失われた地域社会、元の暮らしは容易には戻らない。
▲補足、感想など
で。どうしろ—と。
この社説、グチをクダクダ言っているようなものだ。
なんの方向性を示している訳ではないのだ。
単に、今度、日本政府が出したエネルギー基本計画なるものに「ケチをつけている」だけではないか。
冒頭でふれたように、
もう一度、確認しようか。
このエネルギー問題の核心は。
※日常生活を維持するためには、どうしてもある絶対量のエネルギーが必要だ。なければ、新エネルギー源を実用化するということもできない。
※現在時点では、原発に代替するエネルギー源は存在しない。もう数十年は、原発を稼働させるしか選択肢はない—ということ。
上の記事は、この核心部分について、なんらの「方向性」を示していない。
ただ、グチグチと不平不満を言っているだけだ。
こんなものを「社説」などと恥ずかしくないのか。この新聞社は。
筆者ならば、
原発を再稼働させて、エネルギーを確保しつつ、より安全な原発の開発を急ごう—と主張するな。
また、記事では事故が発生した場合の甚大さを強調しているが、絶対に事故が発生しないとは確かにいえない。
しかし、技術者というものは、事故が発生する可能性をなんとしても小さくする努力を重ねていくものだ。
そういう日本人技術者の能力・努力を信じてあげよ。