2016年5月7日土曜日

なぜ、安倍さんはドイツ・メルケルさんを説得できなかったか---

安倍さんの言っていることは正しいし、方向性も正しい。
 ただ。
 結果として、安倍さんの説得というものが、日本の円高 → 円安方向へ 誘導する結果となりそうなものだ。
 つまり、安倍さんはうまいことを言っているが、結果として自国(日本)に有利に働く—そのための説得ではないか---と疑われたのだろうな。

 ドイツ、英国の「疑い?」も無理からぬことではある。
 日本としては痛くもない腹をさぐられるという形となったのではないのかな。

 むむむ、じっと黙っているしかないか。

 以下、新聞から抜粋。

 メルケル首相が求める「3つの包括的対応」
 安倍首相は57日、欧州歴訪を終えて帰国。
 イタリア、フランス、ベルギー、ドイツ、英国、ロシア6カ国訪問の最大の焦点は、メルケル首相との会談であった。

 伊勢志摩サミット(52627日)議長として安倍首相が傾注したのは、財政出動に慎重なメルケル首相を説得することだった。
 何故ならば、安倍首相はG7共同声明に、現在の世界経済情勢打開のため財政出動を含めた手立てを講じることでG7首脳が一致したと、盛り込みたいから。

 だからこそ、安倍首相はレンツィ伊首相、オランド仏大統領、ユンケルEU(欧州連合)委員長との会談で世界経済を下支えするためG7が財政出動の必要性で一致したという「成果」を背負って、ドイツに乗り込みメルケル首相との会談に臨んだ。

 だが、メルケル首相から「賛同する」という回答を引き出すことができなかった。
 逆に中央銀行の金融政策、政府の財政出動と構造改革の3つの対応の必要性を説かれた。

 メルケル首相は語った。
 「私たちはEU経済域内で一貫した、協調した形で次なるステップに向かうべき。私としては構造改革の必要性と、そしてECB(欧州中央銀行)の金融政策に影響を受けるわけで、日銀とECBの協力もある。財政出動の問題がある。従って、3つが必要」

2つの想定シナリオ
 安倍官邸は大規模な財政出動で世界経済危機を乗り切ることができると考えている。
 換言すると、財政出動だけで現在の円高・株安の相場環境が好転すると判断している。
 そこにはリアリティがない。

 4月の黒田総裁が金融政策決定会合後に行った会見で、金融市場が織り込んでいた追加緩和に対する「ゼロ回答」を発表した。

 想定されていたシナリオは2つあった。
 1つ目は日経平均株価が18,000円台に乗り19,000円も視野に入り、対ドル円レートは113円まで円安が進み、115円の可能性も現実味を帯びてくるというもの。
 2つ目は(緩和見送りで)予測を超えた株安と円高のシナリオだった。

 後者を予測した投資家・市場関係者は少数で、黒田総裁はこれまでに「異次元金融緩和」など数々のサプライズをもたらしたが、今回の「現状維持」というゼロ回答は最大の「サプライズ」だった。
 結末は、一時105円まで円高が進行、株価は16,000円を割り込む。
 一言でいえば、黒田総裁は市場の期待(センチメント)が高騰していること把握していたはずであり、仮に把握していなかったとしたらより深刻な問題である。

 ゼロ回答は、黒田総裁自身が言及した「行き過ぎた」円高水準を再誘発するリスクが高いことは明らか。
 金融市場は現在なお、黒田・日銀のスタンスに極めて困惑しており、未だに消化できていない。

日銀の金融政策が重要である理由

 では何故、黒田・日銀の金融政策が重要なのか。
 安倍首相がメルケル首相との会談で財政出動の問題は伊勢志摩サミットで継続協議となったことは、説得が不調に終わったことを意味する。

 日本がG7サミット開催までに熊本地震被災対策のための補正予算策定だけでなく金融政策の発動と為替介入を行って円安・株高を実現していなければ、メルケル首相は首脳会議で必ず「日本はやるべきことをやっていないのに、我が国だけに財政出動を求めるのは納得できない」と主張する。

 要は、金融・財政政策、成長戦略の3点セットをきちんと実行して成果を出した上でG7サミットに臨まなければダメだと。
 そのためのラストチャンスが518日だ。

 その日に発表されるGDP速報値は間違いなくマイナス成長となる。
 この発表を受けて、黒田総裁が臨時政策決定会合を召集して追加緩和に踏み切れば、市場は既に616日の決定会合での緩和を織り込んでいるので本当のサプライズとなり、それこそ「為替113円前後・株価18,000円台」が実現するだろう。

 果たして黒田総裁は市場センチメントを持ち合わせているのかどうか、安倍官邸は固唾を呑んで見守っている。

補足、感想など

 まず、自分でやってみせて、範を垂れよ—ということか。
 そうかもしれない。

 でも。
 別に黒田さんという人が、世間の風を見る目がないということではあるまい。
 どのような金融政策であれば効果があるのか—というところで、たじろいでしまうのだろうな。


 筆者なら、ともあれ、熊本地震復興とか国土強靭化とか、スーパー堤防の設置とか—大規模な公共事業をするタイミングであろうと思う。

 黒田さんがたじろぐような金融政策については筆者はお手上げだ。