▲まぁ、当然の判断だと思える。
いや、判断はそれでいいが、戦略会議のこの答申ってどうしてこうなるのだろう。
問題の核心は、むしろそこにあるのではないのか。
確かに、2011年の福島原発事故の被害は甚大だった。
国土の一部を失ったも同然のことになったのかもしれない。
でも、と思う。
その被害の甚大さに目を眩まされてはなるまい。
人は日々、生き暮らしているのだ。
毎日、食事をし、会社へ工場へ行き、働いているのだ。
その日々の生活を維持するためには、ある絶対量のエネルギーが必要だ。
そのエネルギーをどこから確保するか—という視点を失っては、ものごとは正しく前に進まない。
だから。
原発こわい—という「空気」に、「口下手な技術系の人間」が押し倒された--というのが、上でふれた「戦略会議の答申」なのだろう。
口は下手でも、大事なことを問おう。
原発をゼロ? ならば、原発に代替するエネルギー源とはいったいなんなのか—と。
戦略会議は、この真っ当な問いに明確な答えができたのか。
そのうち、風力発電が—とか。そのうち太陽光発電が--とか。そのうち地熱発電が--とか。定かならぬ新エネルギー源が出てくる筈とかで、「疑問を挟む技術系」の人間を押しまくったのだろう。
結果として、空虚な、実行不可能な「戦略会議の答申」がでてきたのではないのか。
以下、新聞から抜粋。
大阪市の橋下徹市長と、大阪府の松井一郎知事は、有識者でつくる府・市「エネルギー戦略会議」がまとめた府・市の中長期エネルギー戦略案を巡り、「具体的な工程表が示されていない」として、2030年を目標にした
原発ゼロ政策を採用しない考えを示した。
それぞれ共同代表、幹事長を務める日本維新の会は、昨年の衆院選で、
「2030年代までの原発フェードアウト(次第に消える)」を掲げていたが、
現実路線にかじを切った。
戦略案は、電力自由化や重大事故時の損害賠償を原発事業者が負担するルールの
導入などで、「遅くとも2030年までに原発をゼロとすることは可能」と明記。
この日開かれた府・市統合本部会議で、橋下市長は、「(原発ゼロが)できることはわかるが、道筋を示すことが大事。(工程表が無い以上)いつ原発ゼロにするとは言い切れない」と述べた。
「関西原子力安全監視庁」の設置を目指すなど、
他の戦略案は採用が決まった。
戦略会議の委員を務めた元経済産業省官僚の古賀茂明氏は記者団に、工程表が示されなかったことについて、「脱原発に向け大きな枠組みを変えるため議論してきた。
(議論に十分な)時間がなかった」と語った。
▲補足、感想など
これはなぁ、と思う。
工程表がどうたら--という問題ではない。
この戦略会議の2030年までに--という数字に、まともな根拠がないからだ。
つまり、この問題は原発に代替するエネルギー源の開発という技術的なブレークスルーに要する年月が不明なままの「頭の中ででっちあげた数字」だからだ。
このくらいの年数まで「できたらいいなぁ」--という希望・願望的な数字なのだ。
このあたりだな。
技術の世界は、理屈の世界ではない。事実のみを積み上げていく世界なのだ。
だから、よく分からないのだ。いつ頃までに「原発」に代替するだけのエネルギー源が実用化されるかは。
今、太陽光とか、風力とか様々な「試み」が実行中だ。
でも、どれが原発に代替するエネルギー源の本命なのかさえ、不明だ。
いずれにせよ、実用化されるまでに「当分」かかる。
だから。
上の「戦略会議の答申」を採用せず—なのだ。
当然だし、妥当な判断だと言えよう。
それにしても、この戦略会議に参加した「技術系の委員」は、もっと雄弁に発言して頂きたいものだ。
そういえば—と思い出した。
政治家の原口さんが、尖閣諸島がらみで、グーグル・アースで現場をみたら—とか発言して失笑をかっていた。
原口さんの発言のどこに問題があるのだろう。
多くの人は、グーグル・アースというものの存在をしらないだろう—と思っていること。
また、グーグルアースの画像が「リアルタイム」のものであると思っていること—かなぁ。
いや、原口さんもグーグル・アースを知っているなら、見たことがあるだろう。拡大して見た時、その中の雲が動いていたか?
つまり、政治家というものは、「中途半端」な知識でも「雄弁」にしゃべるのだ。
技術系の人間は、そんなこととても恥ずかしくてしゃべれない。
そんなことで、上のような「なんとか会議」では、中途半端な知識で雄弁な人間に押され、結果として「使い物にならない答申」がでてくるハメとなる。
技術系の人間としてクレグレも注意したい。