▲佐々木さんの著書の「緊迫感」の秘密はどこにあるのだろう。
文章の短さということも当然ある。
たぶん—と思う。
時間を圧縮しているのだ。
通常なら—3日ぐらいで進むべき「道筋」を半日という短時間の中に圧縮してしまう--そこらが「秘密」なのではあるまいか。
まぁ、スパイものでも追いつ追われつという文章の「緊迫感」もすごいものなぁ。
要するに--。
体力のあるというか、豪腕な作家だということだろうなぁ。
以下、表題の小説のあらずじなどをご紹介しながら、感想を箇条書きとしたい。
◇発端は、若い女性警官が殺害される—という事件から始まる。そして、この女性とつきあいのあった警官が疑われる。
殺害現場から覚せい剤、拳銃の所持が疑われ、「射殺命令」がでるという展開となった。
この展開に疑問をもつ元同僚が真相に迫っていく—という話だ。
◇粗筋としてはまぁ「単純」だ。しかし、様々なデテイルが実に細かい。
そして、この「細かさ」が、この小説の「迫真性」を際立たせている。
◇まとめ
佐々木さんには、「エトロフ発緊急電」という小説がある。
これは山本周五郎賞を授与された。
この時の選評かとうか分からないが、田辺聖子さんが「評」を書いている。それをご紹介したい。
--ここから--
「私、スパイが好きなんです(笑)。」「とにかくばらばらに始まった物語が、だんだん収斂されていき、それぞれの過去を持った人たちが、一つの大きなドラマのうねりの中に巻き込まれて、個人の運命も、国家の命運も一緒になってという、手に汗握る力強さといいますか、これはもう、かいなでの作者では出来ないですね。」
--ここまで--
田辺さんの曰く、「かいなでの作者ではできない」--と。
表題の小説について、筆者もまったくの同感だ。