2018年5月13日日曜日

本当に北朝鮮の金委員長は、シンガポールに来るのだろうか


北朝鮮の金委員長がシンガポールに来るということは、アメリカからの要求を受け入れるということであろう。
 アメリカの非核化の要求を受け入れることができなければ、出席もできまい。

 さて。
 会談の日時が決まったということは、「非核化を受け入れた」ということか。でも、リビア方式を受け入れたのかどうかは分からない。

 まず、新聞から抜粋。

 北朝鮮の拘束から解放された米国人3人は10日、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した。トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩委員長に謝意を表明、米朝首脳会談が「数週間以内」に開かれるとの見通しを示した。
 米朝間の懸案の一つが取り除かれて信頼醸成が進み、首脳会談の開催に向けて最終段階を迎えた。

 ■非核化巡り進展か解放された米国人3人は、再訪朝したポンペオ国務長官とともに帰国。
 トランプ大統領とペンス副大統領が現地で出迎えた。トランプ氏はメラニア夫人を伴って3一人を乗せた飛行機に乗り込み、3人とともにタラップに姿を現して握手を交わした。
 いずれも健康状態に問題はないという。

 トランプ氏は「特別な夜だ。この国に戻ってこられておめでとう」と3人に呼びかけた。 「金委員長に感謝したい」と改めて語った。
 米大統領が自ら未明に帰国を出迎えるのは異例だ。
 支持率が低迷するなかで、3人の帰国を成果として誇示したいトランプ氏の思惑がうかがえる。
 北朝鮮に拘束された米国人を巡っては、2017年6月に昏睡状態で解放された大学生オットー・ワームビア氏が帰国後に死亡。米世論が硬化した経緯がある。
 北朝鮮は米朝首脳会談を前にこうした展開は避けたいと判断したとみられ、関係改善への意思を示した。
 3月末に続いて今回が2回目の訪朝となるポンペオ氏は金正恩氏と再び面会し、米朝首脳会談の議題や日程の詰めの調整にあたった。
 前回の訪朝時にポンベオ氏は国務長官に指名されていたが、正式な承認は得ておらず米中央情報局(CIA)長官の立場にあった。国務省高官の同行者もいなかった。このため、非核化に関して実質的な議論はなかったとされる。
 今回は国務長官として訪朝し、国家安全保障会議(NSC)や国務省の高官も帯同した。
 最大の焦点である非核化を中心とした議題について突っ込んだやり取りをしたとみられる。
 「歴史的な出会いになる」。朝鮮中央通信は10日、米朝首脳会談に関する金正恩氏の発言を初めて報じた。
 米朝首脳会談の調整が進展した証左といえる。

 ■シンガポール有力
 トランプ氏は、ホワイトハウスで記者団に米朝首脳会談の日程や開催地を「3日以内」に発表すると表明。
 候補に浮上していた韓国と北朝鮮の軍事境界線上の板門店での開催は否定したため、シンガポールでの開催が有力視されている。
 トランプ氏は4月末の南北首脳会談後、板門店での開催に前向きなツイードをした。
 ただ、板門店は北朝鮮に近接しているため「米国が北朝鮮に譲歩した印象を与える」(米外交筋)との見方があった。
 このため、最終的には除外されたもようだ。
 シンガポールは伝統的な親米国であるだけでなく、北朝鮮との国交もある。
 中立性が高いだけでなく、ホテルなどのインフラも整っており、201511月に初めてとなる中国と台湾の首脳会談を開いた実績もある。
 「本当の栄誉は(北朝鮮から)核を除去できたときに得られる」。
 トランプ氏は、記者団にこう強調した。
 非核化に関する米朝の攻防も大詰めを迎えつつある。

2018/05/15
 日朝首会談ヘハードル  拉致など平壌宣言、認識に差
 米朝首脳会談の6月12日開催が決まり、安倍晋三首相は北朝鮮による日本人拉致問題の進展を前提に金正恩委員長との対話を探る。
 この対話に踏み出すかどうかの判断は2002年の日朝首脳会談で合意した日朝平壌宣言に照らし合わせることになる。
 平壌宣言は当時の小泉純ー郎首相と北朝鮮の金正日総書記が結んだ。
 安倍晋三首相も首脳会談に官房副長官として同行した。
 4項目の宣言は両国の課題を解決し、国交正常化を目指すと明記した。
  「日朝平壌宣言に基づいて……」。
 首相は南北の融和に合わせるように宣言に触れる頻度が増えた。
 日朝首脳会談を意識している証左でもある。
 最大の焦点は拉致問題。
 宣言の文中に「拉致」の文言はない。
 第3項で 「日本国民の生命と安全に関わる懸案問題」が「再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」とある。
 この 「懸案問題」に拉致問題が含まれるというのが日本側の解釈だ。

 日本は帰国していない拉致被害者全員の即時帰国と真相究明、実行犯の引き渡しを求める。
 北朝鮮は金正日総書記が拉致を認め謝罪した時点で「解決済み」との立場だ。
 14年のストックホルム合意で再調査を約束したが、16年に調査を一方的に打ち切った。
 宣言で明示していない以上、日朝間で「解決」の定義を擦り合わせるのは容易でない。
 北朝鮮の朝鮮中央通信は12日の論評で、拉致問題の解決を迫る安倍政権を批判した。

 「既に解決した『拉致問題』を再び持ち出して世論化するのは、朝鮮半島の平和気流を阻もうとする愚かな醜態だ」と主張。
 そのうえで「過去の清算だけが日本の未来を保証する」などと伝えた。
 宣言は第4項で日朝両国は「核問題およびミサイル問題を含む安全保障上の諸問題の解決を図る」とある。
 北朝鮮が何をすれば、解決になるかを明確に示していない。
 日本は北朝鮮に全ての大量破壊兵器と中短距離を含むあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄を求める。
 その方法は「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)」だ。
 4月末の北朝鮮と韓国の板門店宣言にCVIDは書いていない
 米朝首脳会談でまとめる共同文書にCVIDとその手法、期限を盛り込まなければ、トランプ米大統領の敗北は明かだ。
 時間稼ぎを狙う北朝鮮の思惑通りの展開になる恐れがあるためだ。
 リビアは国際原子力機関(IAEA)の核査察を受け入れ、核開発に関する活動の公開や弾道ミサイル廃棄に応じた。
 リビア方式はトランプ氏が金委員長との会談で、北朝鮮にのませる最低線といえる。
 それを金委員長が拒むようだと、その先の日朝首脳会談までは見通せない。

北朝鮮、核実験場廃棄へ  豊渓里2325日、坑道を爆破
 北朝鮮外務省は12日、北東部の豊渓里(プングリ)核実験場を5月23日から25日の間に廃棄する予定だと発表した。
 坑道を爆破し、入り囗を完全に封鎖した後、地上にあるすべての観測施設や研究所などの構造物を撤去。
 警備員や研究員も撤収させ実験場の周辺を「完全封鎖」する。
 日程は天候を考慮するという。
 透明性を確保するため、外国メディアの現地取材を認めると明らかにした。
 対象は中国、ロシア、米国、英国、韓国の5力国で日本は含まれていない。
 北朝鮮外務省は、 「周辺国及び国際社会との緊密な連携と対話を積極的に行う」と述べている。
 金正恩委員長は南北首脳会談で、核実験場を5月に廃棄し、そのもようを米韓の専門家や報道機関に公開すると明らかにしていた。

補足、感想など

 冒頭でふれた。
 非核化というところは、受け入れるとして会談期日を決めたものの、リビア方式を受け入れるという決心がつかなかった場合、会談をキャンセルするということがありそうだな。
 キャンセルしたって、それから先の展望がある訳ではない。
 中国の習国家主席に泣きつくか(泣きついたって、習国家主席が金委員長を保護するというのも考えづらいな)、アメリカから巡航ミサイルが打ち込まれるのを待っているだけ—となってしまう。

 その逡巡の可能性をみてみよう。

 --ここから--

北朝鮮の幹部の話
――中国はかねてから、朝鮮半島の非核化を実現させるという方針を示してきた。
 これに対し北朝鮮は、「すでに核保有国である」と主張。核兵器をめぐる中国側との矛盾は解決できたのか?

 「それは、326日夕刻に開かれた朝中首脳会談で、元帥様が発言された通りだ。『金日成主席と金正日総書記の遺訓に照らし、半島の非核化実現に力を尽くすことは、われわれの終始一貫した変わらぬ立場だ。
 もしも南朝鮮とアメリカが、われわれの努力に善意をもって応えるならば、平和と安定の雰囲気を醸成し、平和の実現のために段階的かつ同時並行的な措置を取る。朝鮮半島の非核化問題は、解決に至ることができるものだ』

 つまり、核問題の解決は、南朝鮮とアメリカの出方次第ということだ。
 特に、トランプ政権がどう出るかにかかっている。わが国の立場には、習近平主席も理解を示した」

――トランプ大統領は、「完全で不可逆的で検証可能な非核化」を強く求めている。金正恩委員長は、5月にトランプ大統領と米朝首脳会談を行って、そのことを約束できるのか?
 「それは、元帥様が仰っているように、『段階的かつ同時並行的な措置を取る』ということだ。つまり、アメリカとの交渉は、あくまでも『行動対行動』が原則だ。

 われわれが求めているのは、アメリカとの平和協定の締結であり、北南の同胞が主体となった朝鮮半島の統一だ。
 1953年に結んだ朝鮮戦争の休戦協定を、トランプ政権が平和協定に変える意思があるのかということが問われているのだ」

――トランプ政権で外交を担っていたティラーソン国務長官が、3月いっぱいで解任された。ティラーソン国務長官は、北朝鮮に対する穏健派の代表格だったが、後任のポンペオCIA(中央情報局)長官は、強硬派で知られる。
 また、ホワイトハウスの大統領安保担当補佐官にも、超強硬派のボルトン元国連大使が就任。こうしたトランプ政権の新たな布陣については、どう考えているか?

 「当然ながら、大きな懸念を抱いている。これはまさに、トランプ大統領が、われわれと対話する姿勢ではなく、対決する姿勢を示したものだ。そのため、トランプ政権に対する疑念が払拭されることはない。
 そもそもトランプ大統領は、5月にわが元帥様と首脳会談を行うと宣言しておきながら、いまだにまったく準備不足だ。わが国を軽視しているとしか思えない。
 そうした点は、(427日の)文在寅大統領との北南首脳会談の際に、元帥様がしっかり注文をつけることになるだろう。それでも疑念が払拭できなければ、元帥様がトランプ大統領と会う理由はない。
 そもそも、トランプ大統領が突然、元帥様と会談すると言い出したのは、11月の中間選挙での人気取りのためだろう。それならば、11月までに開催すればよいのではないか?」

■正念場は軍のリストラ
 他方、北朝鮮の内政は波乱含みだ。
 全方位の平和外交は内政を緊張させる。秘密警察の「主敵」は自国民なので揺るぎはない。
 だが、軍隊は「仮想敵国」なしには紀律を保てない。金正恩は北朝鮮軍の仮想敵国をどこに据えるのか。当面は頭を悩ませる。
 「千年の宿敵」の中国、「百年の宿敵」の日本とアメリカ、それとも同民族の韓国か――。
 経済再建を最優先に据えれば、どれも差し障る。

 北朝鮮は総人口が約2400万人で、120万人の大軍を擁する。
 これに民兵組織を加えると200万人にもなる。兵員確保のやりくりで、北朝鮮は若者に10年間もの兵役義務を科す。
 この軍部リストラが金正恩の至上命題だ。「軍縮」(兵力削減)は先の南北首脳会談でも言及された。今後の南北交渉で主要議題のひとつとなる。本気度はともかく、北朝鮮はかつて「南北が各々10万人規模」を提案したことがある。
 大幅な兵員削減は軍部の既得権益を大きく損なう。仮想敵国を見失い、待遇に不満を持つ軍部は政情不安の火種になる。最新兵器と新規利権で軍部を宥めるのには、莫大な費用と長い時間が要る。

 それと同時に、金正恩は今後、経済的な生産性の高い年齢の若者を兵舎から追い出し、経済建設に振り向ける必要がある。とはいえ、数十万人の若者に新たな働き口を与え続けるのは難題だ。

5/11()
 中国外務省の耿爽・副報道局長は11日の記者会見で、米朝首脳会談がシンガポールで開催されると決まったことについて「積極的な進展があったことを歓迎する。半島の非核化推進で重要な一歩を踏み出すことを期待している」と述べた。
 習近平国家主席は金正恩朝鮮労働党委員長と今年2回会談し、北朝鮮の「後ろ盾」の立場を強めている。
 習氏は78両日、遼寧省大連で正恩氏と会談。正恩氏は習氏に「敵視政策と安全保障上の脅威を取り除くなら非核化を実現できる」と表明した。
 この後、習氏はトランプ米大統領との電話会談で「北朝鮮の安全保障上の関心を考慮してもらいたい」と語り、正恩氏の要望を伝達した。

 --ここまで--

 シンガポールまで来るということは、「リビア方式」を受け入れるという「決心」がついたということだろうなぁ。
 だから。
 シンガポールまで「来る」「来ない」は、重要な分かれ目なのだろう。