2019年6月30日日曜日

ハゲタカ Ⅳ グリード上下 真山仁著 講談社文庫 2015年6月刊 感想


一読して、面白かった---
 筆者には、リーマンショックという実体験がある故に—ということもありそうだ。

 筋を紹介するだけでも、大変なので、アマゾンでの評者の文を抜粋して、粗筋の紹介も兼ねよう。

 --ここから--

 資本主義の壮絶な一面を描くハゲタカシリーズは、アメリカの投資ファンドを離れてプライベートファンドであるサムライキャピタルを立ち上げた鷲津が、日本最大の自動車メーカーアカマ自動車を巡って中国国家ファンドと壮絶な戦い繰り広げる「レッドゾーン」と続いてきました。
 第4弾となる今回の「グリード」は、2007年ごろからサブプライムローン問題に端を発するアメリカでの金融危機危機を舞台に、投資銀行の崩壊とアメリカを代表する企業の買収を巡る話です。
 「グリード」とは「強欲」という意味、本来の目的を見失い、金儲けだけが目的の金融商品を生み出して繰り広げたマネーゲームの結果、多くの人々を不幸に陥れ、世界経済を危機的な状況に陥らせたアメリカの投資銀行。
 このゲームに乗せられ、経営危機に陥ったアメリカを代表する巨大企業アメリカン・ドリーム社、政府機関をも動かす力を持ち「市場の守り神」と崇められていた投資家サミュエル・ストラスバーグ。 アメリカ国民の恨みを買うかもしれない相手に戦いを挑む鷲津には、強欲におぼれた連中を叩きのめすという強い信念があった。

 自らが撒いた種で苦しみ、もがき、狂気にも似た手で生き残りを図ろうとする金の亡者たちをリアルに描くとともに、お互いに主導権を取ろうと画策する息詰まる攻防が見所です。
 この小説は経済誌の連載で、日付が打ってある章立てとなっていますが、最初は1か月飛ばしぐらいの話がぽつぽつ続くペースだったものが、物語の後半3分の220089月前半の2週間でのそれぞれの姿を描き、リーマンブラザーズが倒産した915日にクライマックスを迎えます。

 全体的には、アメリカ人のアホさ加減と、それをあざ笑うように立ち回る鷲津といった構図で、ちょっとうまくいきすぎだぞという感じもします。芝野健夫が最初と最後にちょっとだけでてくるところが、この話の続きがあることを予感させます。相変わらず、話のテンポがよく一気に読んでしまいました。
 小説の中には、企業名が仮名で出てきますが、日付とともに見るとどの企業がモデルとなっているかがはっきりしています。こういった時代背景を調べながら読み進めるのも、真山仁の小説の楽しみの一つです。


「ハゲタカ」シリーズ第4弾!鷲津政彦復活です!!
 リーマン・ブラザーズが破綻した2008915日。このリーマンショックにより世界の金融機構は大混乱を招き、一気に金融危機を世界が迎えた昨今。
 このリーマンショックを迎える数年前からXデーの予兆に気が付き、着々と計画を進める鷲津政彦。
 彼は超優良企業アメリカン・ドリーム社を奪取することを計画していました。
 これはトマス・エジソンが創設した企業であり、アメリカの象徴ともいえる企業です。
 そう、鷲津はアメリカに牙を剥いたのです!!
 ただ、そうそう簡単に買収できるはずもなく、"アメリカ市場の守り神"とも呼ばれる投資家サミュエル・ストラスバーグが鷲津の前に立ちはだかります!!!
 ・・という大筋からわかるかと思いますが、相変わらずハラハラドキドキの連続で、読み進める手が止まりません!!
「強欲は善だ、強欲こそがアメリカン・ドリームを手に入れる原動力だ」という言葉が出てきますが、アメリカをも飲み込んでやろうという鷲津のアメリカへの宣戦布告。
ストラスバーグvs鷲津。
今まで以上の妨害工作を果たして乗り越えられるか?
フィクションとノンフィクションを織り交ぜていつものように私たちを楽しませてくれる真山氏の最新作は、相変わらずの緊迫感に満ちた傑作です。


リーマンショックをテーマにした鷲津政彦の活躍を描く小説。
 鷲津は、アメリカでこれからメガクライシスが発生すると予見し、このタイミングでエジソンゆかりのAD社(GEがモデル?)を買いたいと考えている。
 リーマンが、サブプライム債権を抱え込んでいるため、Xデーは近い。鷲津のサムライ・キャピタルの顧問である堀は日本の金融筋との仲介のためアメリカに呼ばれるがFBIに拘束されてしまう。 
 FBIの後ろには大物投資家のサミュエル・ストラスバーグがいる。
 ストラスバーグは、来たるべきXデーに日本の金融筋からの支援を得たい。また、鷲津がADを狙うのも許せない。ストラスバーグは、リーマンのあおりで投資銀行GCが破綻するのも防ぎたい。
 堀の解放を条件に鷲津はGC救済とADに手を出さないという2点を約束する。
 ストラスバーグにも、焦りがある。ADはCPが売れ残りそうで苦しんでいる。

 --ここまで--

 筆者には、この小説の粗筋をうまく説明できない。
 そこにあるのは、どんな方法を使っても良い--という豪腕さがなければ、とてもではないが勝つことは難しいという世界だということだ。