▲先日か。
ケネディ駐日米大使が、和歌山県のイルカ追い込み漁を批判するコメントをだし、日本から反発の声があがった。
日本が反発するのは当然としても、筆者がアレっと思ったのは、アメリカ国内からも批判の声があがったことだ。
曰く、文化の違いじゃないか—と。
曰く、アラスカのイヌイットによるクジラ猟は批判しないのか—と。
それは、こんな声をあげる層はアメリカの一部だと思える。しかし、10年前に比較すれば、随分、様子が違う。
ユーチューブなどで他国の様子が簡単に見れる時代だ—そんなことで、安易に批判するなという声があがってきたのだろうな。
インターネットの普及による影響というものは、このような形で顕在化してくるのだな。
米国の世界の警察官たろう—という意思は、世界で屈指の経済力に支えられたものであった。また、自国の文化の他国と比較しての「優位性」をアメリカ人自身がなにより信じたからのものであった。
しかし、上で紹介したように「文化の違いだ」とか言い始めるアメリカ人が出現したのだ。
他国の様子が簡単に分かるネットの普及によるものであろう。
文化の違いだ → 他国の文化を尊重する → 民族自決 と、どこかで結びついているのだろうな。
アメリカの中東への軍事介入などへも国内から疑問の声が出始めているのだろう。
そういえば、もうアフガニスタンから撤退する期限がすぐ来るのではなかったか。
アメリカの経済力が他国を圧倒するという時代が終わったということもある。
上でふれたネットの普及により 他国の文化を尊重する → 民族自決 という方向へ流れていっているのだろうな。
いい、悪いではなく、日本とか中国の台頭ということも大きいのであろう。
アメリカは、いま、「世界の警察官」という役目から、自ら降りようとしている。
以下、新聞から抜粋。
今年の世界経済フォーラム年次総会のテーマは「世界の再形成(Reshaping
the World)」という、穏やかなものとなった。
しかし、非公式スローガンは「米国が戻ってきた」になるだろう。
今年の経済成長率が3%に達する見通しで
あることに加え、新興国市場にまつわる懸念もあることから、ダボス会議は米国に対して強気な見方を示すことになりそうだ。
しかし、米国経済の再生と、「唯一の超大国」としての米国の役割の復活とを混同してはならない。
米国は、世界の警察官役から手を引きつつある。
これこそが、今日の国際政治の世界で浮上している最も重要なテーマだ。
■米の存在感低下はあちこちに
現在、国際社会で米国の存在感が低下していると語るところがある。
フランスの
ファビウス外相は講演で、「米国からは、危機には巻き込まれたくないと思っている」と語った。
結果、米国の同盟国は「危機が生じても自力で対処するしかなくなる計算に織り込むようになってきている」
と。
これにはイスラエルでさえ対応しつつある。
同国の外相は、「イスラエルと米国の結束は弱まりつつ
ある。米国が抱える課題は多い」と。
サウジアラビアも同様な分析を
し、米国が撤退しようとしているとして腹を立てている。
米政権がシリア紛争への軍事介入を渋ったことから、米国は中東から手を引きつつあるという
非難の声が強まっている。
欧州の政策立案者も同様な不安を抱いている。
アジアへの「ピボット(旋回)」という米国の方針は、北大西洋条約機構(NATO)や欧州の同盟国に対する関心の低下を意味するのではないかと懸念している。
一方、アジアの同盟国も満足しているようには見えない。
例えば日本は、中国が東シナ海上空に「防空識別圏(ADIZ)」の設定を
宣言した時に米国が断固たる態度を取らなかったと考えている。
またフィリピンは、スカボロー礁を中国が実効支配した時に
自分たちは見捨てられたのだと感じている。
オバマ政権の高官たちは、米国が手を引きつつあるという話は大げさだと反発。
米国はシリアの
和平交渉を主導しており、イランの核開発問題やイスラエル・パレスチナ問題を巡る協議にも同様にかかわっている。
また欧州、アジア
太平洋、中東の安全保障体制の担い手であることにも変わりがないという。
それでも、オバマ政権下の米国が、軍事力を実際に行使することを以前よりも渋っていることは明らかだ。
米連邦議会がシリアへの
ミサイル攻撃の是非を議論した時、国内の反対論が強いことを米国政府はすぐに察知した。
■エリート層に広がる「関与に疑念」の見方
半ば孤立主義的なムードが広がっていることは世論調査によっても裏付けられた。
米国人の52%は「米国は、国際的には自国の問題に専念すべきであり、ほかの国々には、自力で進める最良の道を
それぞれに進んでもらえばいい」との見解に同意し、同意しないという回答は38%。
世論調査ではこの質問が50年近く前からなされているが、今回の結果は
「米国は自国の問題に専念すべきだという方向に史上最も大きく傾いたもの」になっている。
これを、「米国が世界のほかの国々に関与することへの支持が、過去に例がないほど落ち込んだ状態」と表現している。
外国への関与に対するこの懐疑心は、エリート層にまで広がっている。
調査を行ったところ、エリートたちの見方が一般国民とおおむね同じである
ことが示された。
米国が内向きになる理由を特定するのは難しくない。
経済危機はオバマ大統領に「国内での国造り」に専念するよう仕向けた。
一方、
イラクおよびアフガニスタンでの戦争のトラウマは、米国が中東の混沌に手を出すことに対する無理もない意欲喪失を
もたらした。
また、米国の新孤立主義にはもっと前向きな理由もある。
シェールガス革命は米国の「エネルギー自給」の可能性を高めた。
米国は
2015年までに再び世界最大の石油産出国になる。
世界のエネルギー市場の乱高下は、まだ米国経済に多大な影響を及ぼす可能性
がある。
だが、エネルギー安全保障は、世界的な関与を是とする論拠としては説得力を持たなくなっている。
米国の孤立主義的なムードが、一段階にすぎない可能性はある。
米国は第1次世界大戦後とベトナム戦争後にも、
これと似た内向きの時期を経験した。
どちらの場合も、国際的な出来事が発生し、米国は国際問題に再び飛び込むことを余儀なく
された。
米国経済の復活はより外向きなムードを生み出すかもしれない。
しかし、不干渉への転換は構造的なものであり、他の大国、特に中国の台頭に静かに適応
しつつある米国を反映した動きである可能性もある。
米国は「必要不可欠な国」だという
クリントン派のスローガンはうぬぼれが強かったかもしれないが、それは事実でもあったことが分かっている。
フランスの外相
が認めたように、「軍事的な観点に立つと、米国に取って代われる国は1つもない」のだ。
また、もし米国が行動
しない場合、「大きな危機をそのまま悪化させてしまうリスク」がある。
この見解の真理は今、世界各地ではっきり見て取れる。
▲補足、感想など
まぁ、アメリカのことは分からない。
しかし。
記事ではふれていないことがある。
それは、ここ10数年でのインターネットの世界的な普及だ。
その普及による影響というものが、いろんな形で顕在化しつつあるのだ。
日本では、「戦後レジーム」というものが崩壊・終焉を迎えた。
それと同様のことが、アメリカ国内でも起こっていると考える方が妥当であろう。
特にユーチューブなどで、アメリカ国民は自国の軍隊などの様子などすぐに分かる時代が来たのだ。
新孤立主義というより、冒頭でふれたように、日本のイルカ追い込み漁に対して「文化の違いだ」とコメントするアメリカ人が出てきたことからも推定できるように、「アメリカの文化の優位性」というものをそのまま信じない—そいういう世代が出現したことでの「変化」であろう。
それぞれの民族には独自の文化があるのだ → 民族は自分達で自分の方向を決めるべきだ → 民族自決だ という言わば当たり前のところへ戻っていきつつあるのだろうな。
それは、反面、アメリカから「アンタのことは知らないよ」と言われていると取られるかもしれない。
ある「決断」の裏側、表側という話であろう。
上でふれたような不満は、国連あたりでいうしかあるまいな。
また、日本は、国防軍をもって自国の領土を守る—という、これまた当たり前のところは戻りつつあると考えるべきではないのかな。