明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
▲文体を変えて。
ここ数年、日本のガラパゴス化が一層ひどくなってきた。
いや、本質は、国民の知的レベルの差が他の国(アメリカを含む)と大きくなって、楽しむ「対象」が日本と他国とでは違ってきた—ということなのだ。
これはもう致し方あるまい。
アメリカのハーバードでmba
とかを学んでいる世界中のエリート達が、なぜが日本に旅行にくる—という記事があった。
日本を自国の「未来型」として見ているのかもしれない。
または、自国の延長線上にはあるまい—と見ているのかもしれない。
上でガラパゴス化と書いた。
それは他国とまるっきり「進化」の方向性が異なった国---という意味かもしれない。
以下、新聞から抜粋。
「なぜ日本人はカラオケが好きなのか?」「最近の日本のイケてる産業とトップ企業は?」「なぜ日本人は勤勉でまじめなのか?」
ハーバードビジネススクールでは、日本に関する質問はすべて自分に向けられる。
なぜなら、日本人は自分独りだけであることが多いから。
質問が飛んでくるということは、日本への関心が高いことの表れ。
彼らの目からは日本は、「ベールに包まれた魅惑の国」に映るようだ。
日本人は、たったの0.5%
Japan
Passingという言葉を聞いてからもう何年経つだろう。
外国政府の日本への関心の低さを表す言葉だが、最近では当たり前になってきたように感じる。
ジャパンパッシングは、HBSで数字に表れている。
1980~90年代は1学年900人中、日本人留学生が20~30人在籍していた。
それが今は12人、ひとつ下の学年は5人まで減ってしまった。
全体の0.5%で、各クラス1名にも満たない。
約40%が外国人留学生というHBSにおいて、経済大国からの留学生が0.5%とは少なすぎる数字だ。
HBSは年間250本ほどのケーススタディを勉強するが、日本を取り扱うケースは、たった5本だ(トヨタ、ホンダ、日産、楽天、金融政策)。
一方、中国に関するケースは7
本、インドは11本ある。
関心のありかが如実に表れている。
これだけ見ると、海外のエリートたちの日本への関心は消えたと思いそうだが、日本人や日本文化に対する関心は、異様なまでに高い。
それを感じたのが、ビジネススクール1年生の最後に行われるジャパントレックだ。
ハーバード生100人を連れて日本旅行
HBSでは、ジャパントレックと称した日本旅行が、伝統行事となっている。
企画から運営までのすべてを日本人留学生が担い、クラスメートを約1週間の日本旅行に引率する。
寄付金で一部支えられてはいるものの、参加者は多額の旅費を自腹で払って参加する。
そのジャパントレックがすさまじく人気だ。
われわれの代も、募集枠が瞬く間に埋まり、最終的に100人規模のトレックになった。
HBSでは毎年10以上のトレックが企画されるが、多くは30~40人規模で、100人規模になるのは日本とイスラエルの2つしかない。
来日したハーバード生を楽しませようと、日本人留学生たちも必死
参加者たちの期待に応えようと、ツアー内容を考える日本人留学生も必死だ。
2013年のジャパントレックは、京都、広島、箱根、東京の4都市を8日間かけて回った。
観光名所巡りだけでなく、禅体験をしたり、浴衣姿で大宴会をしたり、全身で日本を体験できるようにした。
広島平和記念館で広島元市長の講演を聞いたり、大企業の社長からお話を聞いたりもした。
この日本旅行で、HBS生の日本に対する印象は大きく変わるようだ。
「今までさまざまな国を旅行してきたが、日本ほど魅力的なところはないと断言できる」
「日本に来るのは初めてだったが、すでに母国のような居心地のよさを感じる」
「将来、日本とビジネスをして、この国のことをもっと知りたい」
など、ポジティブな感想がポンポン出てくる。
歯に衣を着せぬ発言をするHBS生たちなので、お世辞ということはないだろう。
日本を離れる頃には、日本の大ファンになっている。
ハーバード生が日本で感動するものとは?
彼らは日本のどこに感動するのだろうか?
彼らを連れていくのは、清水寺や築地市場や温泉といった日本っぽい場所である。
彼らを本当に感動させるのは和の心だ。
新幹線ホームで、小学生が先生の指示どおりに静かに体育座りで整列して待っていた。
アメリカ人からすると、小さな子供たちが整列しているのが信じられないようだ。
公共の交通機関は秒単位で正確に動くし、街中にはほとんどゴミが落ちていない。
大抵のお店で店員は笑顔で迎えてくれ、日本語がわからなくても丁寧に応対してくれる。
日本人の交通機関でのマナーの良さも驚嘆されるポイントだ
そんな秩序、調和、礼儀を重んじる日本の和の心に触れ、彼らは深く感動する。
以前、東京で財布を落としたことがあったが、中の現金そっくりそのまま交番に届けられていた、という話をすると、彼らは「そんな国が地球上にあると思わなかった」と驚く。
日本人の誠実さ、安全性は、世界に誇るものがある。
浅草寺からスカイツリーを見上げ、歴史と未来が隣合わせであることに驚かれる。
サラリーマンが、夜にカラオケで騒いでいるのを見て、また驚く。
単一的なようで、実はすごく多様な社会。先進的であるようで、伝統を重んじる社会。
そのコントラストと共存状態は、世界でも見られるものではない。
日本の魅力は、フワフワしていて、それを表現する的確な言葉を探すのが難しい。
一言では言い表せないよさが日本にはあるが、それが、実際に日本を訪れて体験しないと感じてもらえない。
忘れられた日本を、どうにかしたいなら
もちろん楽しいことばかりが目につくというのはあるだろう。
日本ファンになっても、卒業後に日本で就職しようと思うHBS生がほぼ皆無なのも事実だ。
しかし、遠い外国から数日間過ごしただけで大ファンにさせてしまう魅力が、日本にはある。
最近思うに、海外を「買う」ばかりではなく、日本を「売る」ことにもっと力を入れるべきなのではないか。
私もクラスメートを和食レストランに連れて行ったり、なるべく日本を売り込もうとしている。
飲み会の席では、相手にビールを注ぐ作法や、乾杯のときは相手よりグラスを下にすることなどを”伝授”している。
日本流の酒席での作法も人気
飲み込みが早い彼らは、すぐに「マァマァ」「ドーモドーモ」と言いながらビールを注ぎ合う。
浴衣と下駄姿で授業に行って、昼休みに日本文化についてレクチャーしたこともある。
地道ではあるが、ジワジワと日本愛をHBS内で浸透させていこうと思っている。
もし、「忘れられた国・日本」をどうにかしたいと思うなら、海外出張に行く際、日本のお土産を持って行ったり、日本の文化を語ってみてほしい。
私の経験上、お土産には美味しい日本酒が喜ばれる。
ボストンも日本酒ブームで、日本酒を飲むことがオシャレというイメージがあるが、おいしい日本酒はなかなか手に入らない。
日本に帰国するたびに一升瓶を買って、日本人経営の寿司屋に握ってもらったお寿司とともに、クラスメートと寿司パーティを開いている。
すばらしい資産を持つ国・日本。
それを世界に「売り込む」ことが、長い目で日本のファンを増やすことにつながるはず。
▲補足、感想など
アメリカの小説を読んでいると、アメリカ人が価値がある—と思っているものが分かる。
1位、お金 2位、セックス 3位、容貌(体型含む) 以下なし---。
極端かもしれないが、大凡当たっていると思える。
対して、日本人にとってはどうだろう。
お金、セックス、容貌 てなところに価値があるのは確かなのだが、アメリカ人とは異なることがある。
それは、お金は「仕事をしての結果」だと思っていること。容貌が、お金、セックスというものとちょいと離れた3位だということ。そして、一番肝心なことは、4位として日本人には「道楽・趣味・数寄」というものが入るということ。
核心は、アメリカ人(上で言えば、ハーバードのmba
の学生を含む)より、日本人は多重的な価値観をもっているということだ。
これが、日本人をガラパゴス化している核心部分であろうと思える。
上で、アメリカ人が価値があると考えているものを列挙し、その「もつ価値観の狭さ」を指摘した。
ならば、アメリカ人で、不細工で貧乏で性的魅力もない—という男性は、自分のことをどう感じているのだろうか。
自分になんの価値がない—と感じざるをえまい。
そういう人間は、ウツ状態になったり(アメリカで精神科の医者の多い理由が分かろう)、自棄になったりして、犯罪に走る--ということになるのだろうな。<逆の立場の人間は、「強欲」につっぱしる--ということになる>
日本の多重的な価値観は、個人を内側から支える理由を多くする。
不細工で、貧乏で、性的魅力がなくても、「オレはこれができる」という自信をもっている分野があるのだ。
その個人個人がもっている「内側から支えているなにか」が、日本人をウツ状態になることを防いでいる、自棄になることを妨げているのだ。
それが、温和な社会を形成することのできる理由の一つだ。
これが、記事で問われていたことに対する回答になっていないか。
--「なぜ日本人はカラオケが好きなのか?」「最近の日本のイケてる産業とトップ企業は?」「なぜ日本人は勤勉でまじめなのか?」--
--単一的なようで、実はすごく多様な社会。先進的であるようで、伝統を重んじる社会。--
大切なことを繰り返したい。
日本人は、アメリカ人などよりもっている価値観の幅が広いのだ--。<伝統というか歴史的なものかも知れないな>
これこそが、日本人を日本人ならしめている理由の一つであり、ガラパゴス化させている理由なのだ。
また、突拍子もない発想が生まれてくる理由の一つでもある。