2016年10月2日日曜日

東京オリンピック準備に3兆円とは、それだけの仕事を作ったということ

経済でのある現象を一家庭の視点でみるか、国家としての視点で見るかでその有り様はことなる。
 一家庭で、これだけの支出をして、収入がいくらあったのか? と見ると、たしかに大赤字となる。

 しかし、国家としての視点でみると、3兆円分の「新しい仕事を創出」したということになる。
 中国の鬼城と同じだ。
 鉄骨、コンクリートが動き、人が動き、様々な重機が稼働していく。雇用が増え、賃金が支払われるのだ。
 こうして、仕事をすることで日本のgnp は拡大していく。

 東京オリンピックの準備に3兆円という数字でなんやら言われている。
 まず、一つの面から見た場合を見てみよう。

 --ここから--

 ビートたけしが、出演する「新・情報7days」で当初、約7300億円と試算されていた 東京オリンピックの費用が3兆円に膨らむ可能性が出てきた問題について言及。
 「ただ損するだけじゃん」とあきれた。

 たけしは以前、東京オリンピック誘致について、石原慎太郎元都知事と話した時に 「オリンピックを誘致したら3兆円儲かる」と説明されたことを明かし、「3兆円なんて、 (費用が3兆円超せば)話にも何にもなんないじゃん。3兆円超えてんだから、もう、すでに。
 ただ損するだけじゃん」と発言した。

 さらに「で、誰が得するの?って、建設会社だけじゃん」と指摘していた。

 --ここまで--

 確かに、2週間ほどのエベントに3兆円とはなにか—とか思うし、費用対収入からすれば、儲かる筈もないと見える。
 その通りだ。

 しかし、この3兆円を日本という国家の視点でみるとどうなるだろう。
 経済評論家の三橋さんの意見をみてみよう。

 --ここから--

 わたくしは、我が国は「五輪」を開催するような資格がないのではないかとの、疑念を持ち始めています。
 理由は、国民の「緊縮思考」です。
 厳密には、緊縮的な政策を打てば打つほど、世間的に受けてしまうというこの「空気」です。

 東京都の小池知事は、オリンピックの予算などを検証している調査チームが、競技会場を都外の施設へ変更するなど計画の大幅な見直しを提案したことを受けて、ボートやカヌーの会場をめぐり宮城県の村井知事と会談するなど調整を始めていて、提案の実現に向けた取り組みを進めることにしています。

 東京オリンピック・パラリンピックの予算などを検証している都の調査チームは、開催費用を独自に推計した結果、3兆円を超えるとしたうえで、コスト削減に向け、都内に整備する予定の3つの競技会場を都外の施設に変更するなど、計画の大幅な見直しを提案しました。』

 五輪開催費用が3兆円。
 これが全て消費や投資に回ると仮定すると、日本のGDPが最低でも0.6%増えるわけです。
 結構なことではないですか。
 GDPが0.6%増えると聞いてもピンと来ない方には、「皆さんの所得の合計が0.6%増える」 では、いかがでしょうか。

 わたくしたちは生産者として働き、モノやサービスを生産。
 お客さんに消費、投資として支出をしてもらう(=買ってもらう)ことで所得を得ます。
 誰かがお金を使わないと、皆さんの所得は生まれません。
 すなわち、給与が発生しません。
 誰かがお金を使うのを削ると、皆さんの給与が減ります。 

 この当たり前の事実すら認識せず、自分たちがデフレ環境下で節約に努めているからと言って、国民が、通貨発行権を持つ日本政府や、日本で最も貯蓄がある自治体、東京都に対しても、「無駄な支出をするな!」 と、緊縮を求める。
 結果、自らの所得を減らす。つまりは、貧乏になっていく。
 愚民、以外に表現のしようがありません。

 無論、例えば東京五輪向けの3兆円が、単なる所得移転&誰かの貯蓄に回ってしまうのであれば、まあ「無駄な支出」と呼んでも構わないかも知れません。
 とはいえ、実際には五輪に向けたインフラを整備する「民間企業」の売上になり、働く生産者に給与として所得が分配され、次なる消費や投資が生まれ、別の誰かの所得が生まれるのです。

 無論、東京五輪向けのインフラ整備の支出がなされたところで、皆さん個人の所得は短期で増えないかも知れません。
 とはいえ、インフラ整備という「需要創出」でデフレギャップが解消に向かい、日本経済がデフレから脱却すれば、いずれは皆さんの所得にも好影響を及ぼすのです。
 誰かがお金を使わない限り、誰かの所得は生まれない。

 この当たり前の事実すら認識せず、小池知事が調査チームの提言を受け、「ロンドン大会でも2年前に計画が覆った例もある。IOC=国際オリンピック委員会などが錦の御旗になっているときもあり、信頼を失わない範囲でトライする価値はある」と、発言したのを見て、
「小池、やるじゃん!」「小池、いいぞ! もっと無駄な出費を削れ!」などと拍手喝采する。

 結果、日本経済に必要な需要創出が絞られ、貧相な五輪を開催し、世界に恥をさらし、さらにはデフレ長期化で国民がますます貧乏になる。
 貧乏になった国民は、「金を使うな!」「無駄を削れ!」などと自分の首を絞めていく。
 我が国は、愚民国家になり果ててしまったのでしょう

--ここまで--

 これが、マクロでみた場合の経済の現象なのだ。
 家庭での視点とは異なるのだ。この部分に注目してほしい。
 また、日銀のマイナス金利を含む金融政策の効果があらわれず、上のオリンピックでの出費のごとき、財政政策に打開策を求める傾向となったきたようだ。
 その部分の文章を。

 --ここから--

「財政拡大」へ静かに方向転換する主要国

 世界は何年にもわたって、中央銀行が経済成長てこ入れに向けあらゆる政策手段を動員してくれるのを頼みとしてきた。
 ところがいまや中銀の手段は限界に達し、今度は政府が静かに存在感を増しつつある。
 リセッション(景気後退)終了以降で初めて、先進国は一斉に緊縮財政から積極財政へと軸足を移し始めた。

 こうした動きは、「どれほど大きな価値を持つかがあまり理解されていない2016年経済動向ランキング第1位」かもしれない。
 財政出動の規模は金額としては少ないが、政治の流れが大きく変わったことを示唆している。

 財政政策の転換は気づかれにくい。なぜなら、政府は少なくとも公約上は債務削減に尽力する姿勢を維持しているからだ。だが数字を見ると、実態は公約通りではないことが分かる。
 米国、日本、英国などの主要国では、2016年の財政赤字が前年比あるいは当初目標比で増える見通しだ。
 JPモルガンのエコノミストらは、今年は09年以来初めて財政政策が先進国の経済成長率の押し上げ要因になるとみている。』
 
 後略部で、ピーターソン国際経済研究所のヤコブ・キルケゴール氏が、「低成長が長期化すると、支出を拡大したいと考えるのが政治家の習性だ」「その意味でわれわれは基本に立ち戻ったのだ」と、述べていますが、現実に目の前で起きていることを理解すれば、基本に立ち戻らざるを得ないという話なのでしょう。

 --ここまで--

 東京オリンピックへの準備としての3兆円なんて、名目上からも財政政策の目的にピッタンコではないか。
 大手を奮って、3兆円の新規の仕事を創出しよう。
 結果として、立派なオリンピックを催すことができれば、万々歳だ。