2014年3月15日土曜日

ダイオウグソクムシの死因は餓死ではない。

餓死ではなかった—とは、なにを意味しているのだろう。
 動物であるから、なんらかの有機物を燃焼させて、エネルギーを獲得しなければならない。

 食べずにどうして、栄養を得ることができるのだ?
 そこにどういう秘密があるのだろう。

 まず、新聞から概要を抜粋。

 ダイオウグソクムシ、死因は「餓死」ではなかった…胃に謎の液体
  鳥羽水族館で飼育され、5年以上の絶食記録を残して2月に死んだ深海生物「ダイオウグソクムシ」。
 その不思議な生命体へ関心が高まっている。

 水族館が死後解剖したところ、体内から正体不明の液体を検出。
 液体からは菌も発見され、食べなく ても生きていける、夢の酵母の可能性も指摘されている。
 人気を集めたダイオウグソクムシ。謎の解明はどこまで進むか-。

◆6年余、ほぼ成長せず
 絶食6年目に入ったとして話題を呼 んだダイオウグソウムシだが、2月14日、水槽で死んでいるのを飼育員が確認した。体が弱っているように感じたといい、「とうとうその日が来たな」と死を受け止めた。

 水族館での飼育日数は2350日(6年と158日)、平成21年1月2日に50グラムのアジを食べて以降、絶食日数は1869日(5年と43日)に達していた。
 メキシコ湾の海底約800メートルで捕獲。当時の体長は29センチ、体重は1040グラム。死亡時の体長は入館時と変化なく、体重も1060グラムと大きな差はなかった。

 生殖に関係する器官がないため成熟した個体ではないとみられる。
 6年5カ月を生き続けたが、その間の絶食が5年余りに及んだのは、水族館にとっても驚異的なことだった。

◆解剖!体内から見たことない液体が
  食べなくても長期間生きた生態を解明しようと、死後まもなく解剖したところ、驚くべきことが分かった。
 まず胃の内部。見たこともない淡褐色の液体で満たされていた。
 過去にダイオウグソクムシの個体からは未消化の固形物が残っているか、 空っぽの状態だったが、このような液体を見たのは初めてだった。

 液体は約130ccと胃を埋め尽くすほどの量があり、ダイオウグソクムシ特有の生臭い腐臭がした。
 液体以外に固形物はなかった。

 さらに光学顕微鏡で液体をのぞくと、中に長さ10ミクロン(100分の1ミリ)ほどの菌類が見つかった。
 株分かれしている様子も見られ、1日後には株がさらに増殖していた。
 出芽や分裂で増える単細胞の酵母に近い存在と推定している。

  こうした菌類は酵母様真菌(こうぼようしんきん)と呼ばれ、土の中など自然界にあるほか、小動物の消化器官に存在するものが知られる。
 酵母は、糖分を分解してアルコールなどに変えることで知られる。

 そこで、酵母様真菌と絶食の関連が焦点となった。
 酵母と長寿の関係は、研究が続いている。
 国立遺伝学研究所のチー ムが、長寿遺伝子の働きを解明して酵母菌の寿命を操作する実験に成功。
 酵母と長寿遺伝子の関連が分かり注目された。

  一方、消化管全体に炎症や変色はなく、過去に解剖した個体よりも状態がよかった。
 甲羅の裏側などの肉も痩せているように見えなかった。

 長期間の絶食を経たとは思えないような健全さをうかがわせた。
 こうした状態から、「直接の死因はわからないが、餓死した という状況ではない」と判断。
 不老要素が酵母様真菌に含まれている可能性も浮上。

 真菌について「まったく正体が分からない」と。
 まず、絶食との関わりあいに注目し、「体内でどのように作用していたのか」を解明したい。
 採取した液体は、臨床検査センターに送り検査。
 その絶食の偉業が長寿と関係するなど、大きな発見につながる可能性も期待されたが、結局、検査で液体の正体は分からなかった。

 生態の詳しい研究は進んでいない。

◆他のダイオウグソクムシも絶食
 同水族館では外のダイオウグソクムシでも絶食が観察され、No.5個体は絶食期間1年3カ月。
 一般的にダイオウグソクムシは絶食に強いとみられる。

  新江ノ島水族館では、現在は7個体に3カ月に1度の割合でサンマやイ ワシなどを与えている。
 深海生物学を専門とする講師は「体内の液体が、ヒトの腸内細菌のように共生関係にあることも考えられる。逆にその液体が原因で死んだのかもしれない。もっとデータを集める必要がある」と指摘。

 絶食には、大きな関心が集まった。
 これをきっかけに、研究が盛んになれば、成果が生まれるかもしれない。


補足、感想など

 まぁ、生態も、絶食の理由も分からない—ということか。
 ダイオウグソクムシ以外にも、食べなくても生きれる動物がいる。それをご紹介したい。

--ここから--

 植物は光のエネルギーを使って水と二酸化炭素から有機物を作ることができるので、水さえあればとりあえず生きていけるが、動物は水だけではいずれ餓死はまぬがれない。

 全くエサを取らない動物もまれにいるが、これらはエサを食べるという方法ではなく、別の特殊なやり方で有機物を取り入れている。
 たとえば深海の底にある熱水噴出口の周辺には、チューブワームやシロウリガイといった、エサを食べなくとも生きていける動物が生息している。

 これらの動物たちは体内に硫黄酸化細菌と呼ばれる化学合成細菌を飼っていて、細菌が作る有機物をピンハネして生きているのだ。
 熱水噴出口からは硫化水素を含む高温の水が噴き出ており、硫黄酸化細菌は硫化水素を酸化してエネルギーを取り出し、このエネルギーを使って有機物を合成している。

--ここまで--

 まぁ、実際のところ、ダイオウグソクムシの絶食の理由が分かったわけではない。
 ただ、この地球上にはいろんな生物がいて、その栄養の取り方も様々あるということ。

 これからの研究に期待したい。