2018年1月25日木曜日

麹菌は猛毒の野生菌だった

ミソ醤油、お酒等を造るときに使う麹菌は、元々は猛毒の野生種だったという。
 それを日本人が千年の歳月を要して、無毒なものに作り変えたという。

 伝統というか、日本という国の歴史の中で育てられた「麹菌」だといえよう。

 まず、新聞から抜粋。

 味噌、しょうゆ、日本酒、みりん、酢……。
 どれも和食に欠かせない調味料だが、これらをつくる上で必要なのが「麹菌」(A・オリゼー)だ。 
 カビ菌の一種で、たんぱく質をうまみ成分のアミノ酸に、デンプンを甘み成分のブドウ糖に分解。
 味噌やしょうゆ独特の香りやうまみ、日本酒の華やかな甘みを生み出している。
 その長年の「功績」が認められ、2006年に日本醸造学会によって「国菌」として認定されたスゴイやつなのだ。

 縁の下の力持ち的な麹菌だが、元々自然界に存在した菌ではない。
 麹菌を30年以上研究する日本薬科大学のk教授によると、ゲノム解析の結果、元の姿は猛毒・アフラトキシンを出す可能性がある“荒くれ者”の野生菌(A・フラバス)だったと明らかになった。
 この菌を「もやし屋」と呼ばれる「種麹屋」が数百年かけて飼いならし、無毒に改良した説が有力。  さらに、現存資料で最古の麹屋の存在を確認できるのは1246年。
 京都の石清水八幡宮の資料に、麹の販売場所を巡る業者間の争いが起こったとの記述も残る。

 無毒化のウラには良質な麹を出そうと種麹屋が重ねた改良があった。
 その手法は麹菌にアルカリ性の灰をまぶして生き残った麹菌だけを選ぶというもの。
 灰にもこだわり、京都の種麹屋には「京都大原の椿の灰が良い」という口伝も残る。
 顕微鏡もない時代、見えぬ胞子を培養し続け、やがて毒を出さない麹菌が誕生したという。
 k教授は言う。
 「世界最古のバイオビジネスの結果です。麹菌も家畜化されて外敵から身を守る必要がなくなり、無毒なオリゼーに変化したのではないか」

 また、最近はその健康効果に注目が集まる。
 12年ごろには「おいしくて健康にも良い」と塩麹が、15年には麹を使った甘酒が「飲む点滴」とも呼ばれてブームに。
 ただ麹菌の健康効果は、乳酸菌と比べて研究が進まなかったのが実態だ。
 確かに健康番組常連のヨーグルトに比べ、耳にする機会が少ないような……。
 「麹菌は日本ならではの菌なので、海外の先行研究も少なく、研究予算が下りにくい。研究者も乳酸菌と比べると少ない。もっと企業主体で研究が進んでくれればいいんですが……」 とk教授。

 そこで、1854年から160年以上、麹を使った味噌をつくり続けるマルコメに聞いてみた。
 「乳酸菌と比べると麹菌の研究は進んでいないのが現状です」(広報)
 理由はあまりにも和食になじみ、「体にいい」と当然のように受け入れられて、健康効果の研究に目が向かなかったからだとか。
 それでも最近は同社も研究に注力し、17年には女性に嬉しい新たな事実を発表した。麹でできた甘酒による「美肌作用」だ。
 4064歳の女性に毎日甘酒を8週間飲んでもらったところ、肌の水分量が上がり、さらに「肌バリア機能」が強化された。要は、皮膚の水分を逃しにくい状態になるというのだ。

 「甘酒市場もブーム前と比べ6倍近くに伸び、16年には販売金額で麹由来の甘酒が酒粕由来の甘酒を抜くなど勢いもあります。発酵食品の良さも今後見直され、もっと浸透するのでは」
 と広報は期待する。
 k教授も、「実はヨーグルトにも負けないくらいポテンシャルがある。もっと研究が進めば『和食がなぜ体にいいか』を科学的に立証もできます」 と将来性に太鼓判を押す。
 けなげに日本の食卓を支え続ける麹菌。
 主張しすぎない奥ゆかしさが日本っぽいが、価値が見直されて「メジャー菌」になる日も近いかも。

補足、感想など

 たしか、麹菌のdna解析は日本が最初ではなかったかな。
 この麹菌とは違うが、カイコも日本の歴史の中で、育てられたものだ。その記事をみてみよう。

 --ここから--

2013/09/17()
 農業生物資源研究所、中国・西南大などの共同研究チームは、カイコの脳などの細胞で たんぱく質を作る約1万1000種類の遺伝子の情報を解読したと発表。
 病原性の微生物から 身を守るたんぱく質などを作る未発見の遺伝子も新たに約3000種類見つかった。
 新しい農薬の 開発や、遺伝子組み換えカイコを使った医薬品や検査薬の開発が期待される。
 研究チームには産業技術総合研究所と東京大も参加。

 カイコの脳や表皮など14組織から、細胞の中でたんぱく質を作るDNAを約25万個収集。
 この中から重複している遺伝子を除き、1万1104種類のDNAを選抜した。
 DNAには4種類の塩基と呼ぶ“文字”でたんぱく質を作り出す情報が書き込まれている。
 研究チームは選抜した遺伝子の塩基配列を解読した。
 これまでカイコの総遺伝子数は計算上約1万4000種類と推定されていたが、新たに 約3000種類が発見された。
 この結果、カイコの総遺伝子数は1万7000種類以上あると 推定。

 農薬に抵抗性を示す害虫の原因遺伝子の特定や新たな農薬の開発、医薬品や検査薬の生産性や 品質向上につながると期待される。

【バイオ】カイコが今、遺伝子組み換え分野の最先端で引っ張りだこになっています
2012/02/15()

 カイコが今、遺伝子組み換え分野の最先端で引っ張りだこになっています。
 医薬品の原料となるたんぱく質や、光るシルクなど、「GMカイコ」は、 わたしたちの未来の生活を鮮やかに照らし始めています。
 全てシルクでできたジャケットとワンピース。
 一見、何でもない洋服だが、 電気を消してみると、きれいな緑と赤に光った。
 肌触りもほかの服と比べて全く変わらない。
 暗闇で発光する赤や緑の蛍光色。

 この光るシルクで編んだ服は、二重扉で厳重に管理された 「GMカイコ」といわれる、遺伝子を組み換えたカイコによって生み出されている。
 遺伝子組み換えによって生まれたGMカイコ。
 カイコの卵に蛍光たんぱく質の遺伝子を注入。
 やがて生まれてくるGMカイコが吐き出す絹糸が、色鮮やかな光るシルクとなる。
 現在、 実用化に向け、開発が進められている。
 光るシルクは、ノーベル化学賞を受賞した下村 修氏が発見した、オワンクラゲの遺伝子を使用している。

 農業生物資源研究所の瀬筒秀樹理学博士は「触り心地もよくて、おとなしくて。こんなおとなしい生物はいないので、かわいいもんです」と話した。
 マウスなどと違い、コストも低く大量に飼育できるため、遺伝子組み換えに向いているという カイコ。
 さまざまな特性を持つ遺伝子をカイコの卵に注入することにより、伸縮性や強度に 優れた絹糸など、高機能のシルクを作ることが可能となる。

 農業生物資源研究所の瀬筒理学博士は「カイコは生物工場としても注目されていて、シルクの 代わりに、ほかのたんぱく質を作らせようという方向があります。
 それは具体的には、医薬品 の原料となるたんぱく質などです」と話した。
 遺伝子組み換えを行ったカイコの繭からは、医薬品などの原料となる有用たんぱく質を抽出でき、 医療現場からも注目されている。

 免疫生物研究所のt博士は「人の遺伝子をカイコに組み込むことによって、作らせた 人のコラーゲンになります。カイコを使って、そういった抗体医薬品を作らせると、おそらく、 既存の方法の10分の1ぐらいのコストで作れるだろうというふうに試算しています」と話した。
 検査薬などが開発中で、すでに化粧品は実用化されている。
 そしてGMカイコは、衰退のふちの 途にある地元産業にも光を当てる。

 --ここまで--

 麹菌とカイコか。
 日本の歴史の中で、長い時間を掛けて、無害化とか多様化されてきたものだろう。

 日本人として、大事にしていきたい。