▲一昨年からのアフリカ及び中東からの難民受け入れの問題で、もう4選目はないだろうと言われていたメルケル首相がどうも選出されそうだ。
このあたり、ドイツの国民って、どう考えているのだろう。
海外の記事で、そのあたりを探ってみよう。
以下、新聞から抜粋。
アンゲラーメルケル独首相の首相候補としての連邦議会選出馬は、数週間前まで、「シュルツ効果」による深刻な脅威にさらされていた。
ドイツ社会民主党(SPD)が、マルティンーシュルツ氏を首相候補に選び、好調な支持率を維持していたからだ。
だが、SPDが地方選で敗北し、 「シュルツの呪い」との声も出始めている。
SPDがシュルツ氏の地元、ノルトラインーウェストファーレン州で敗れ、同氏の信用は打撃を受けた。
しかし、シュルツ氏もメルケル氏も自党の選挙運動を後押しし、9月の連邦議会選挙を占う重要な前哨戦となった。
SPDが掲げる「社会的公正」は人々の心に響いていないようだ。
ドイツがユーロ圈の経済回復を先導し財政も健全であるため、有権者の懸念はテロやイスラム過激主義、国家としてのアイデンティティーのほうに向いている。
それでも、100万人以上の難民受け入れを決断したメルケル氏を有権者は許したようだ。
メルケル氏は決断を堅持する一方、キリスト教民主同盟(CDU)と共に、安全保障上の懸念に応え、極右の訴えが効かなくなるよう力を尽くした。
総選挙の結果を予想するのは時期尚早だ。
だが、SPDも大敗のリスクにさらされているようだ。
メルケル氏の国内での地位は移民危機が問題になって以来、最も盤石とみられる。
とはいえ、同氏が欧州で直面する問題は小さくならない。
ユーロ圈の統治改善やギリシャを破綻させない方策といった懸案はもちろんイタリアの政治不安や東欧でのナショナリズムの台頭、ロシアがウクライナで起こしている問題などを背景に、欧州連合(EU)が歩むべき新たな道筋を示す必要かある。
だが、これまでと異なるのは、マクロン氏のフランス大統領就任で、信頼できる中道派の仏独両政府が欧州の中心で協力関係を新たにし、改革の任務に本腰で取り組む機会が巡ってきたことだ。
マクロン氏が提案するユーロ圈改革の中身にドイツは相当抵抗するだろう。
政治的制約を考慮すると、両国が実質的な議論を行い駆け引きをするには早過ぎる。
とはいえ、メルケル氏は選挙戦の過程で、ユーロ圈改革について厳し過ぎる方針を押し出さないよう留意した方がよい。
マクロン氏は国内で激しい政治的圧力を受けるだろう。
その圧力の緩和に向け、メルケル氏が発言、行動できることがあるなら、実行すべき。 (英フィナンシャル・タイムズ)
▲補足、感想など
要するに、国内でアフリカ・中東難民による暴力事件が多発しても、ともあれ、ドイツ経済が絶好調であるから、メルケルさんを叩く必要もない—と考えているということか。
ドイツ経済の好調ぶりをみてみよう。
--ここから--
2017年
04月 21日
ドイツ経済の好調続く、第1四半期は成長加速へ=財務省月報
ドイツ財務省は公表した月報で、第1・四半期の経済成長はさらに加速し、税収が予想以上に増えるとの見通しを示した。
同省は、最近の生産、受注、雇用改善に関するデータは第1・四半期の経済活動が上向いたことを示していると指摘。「ドイツ経済は引き続き好調だ」と。
ただ、先行きについては、トランプ米政権の保護主義的な通商政策や欧州主要国の選挙結果、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の行方などの政治的要因で引き続き不透明だと警告。
「これらは世界の投資活動や貿易に影響を与えかねない」との見方を示した。
2016年のドイツの経済成長率は1.9%で、5年ぶり高水準を記録。
個人消費の急増、政府支出の増加、建設投資の拡大に支えられた。
2016年第4・四半期の成長率は前期比0.4%。エコノミストは、2017年第1・四半期には成長が加速すると予想。
好景気は、労働市場参加者の増加、個人消費の急増、企業利益の拡大、税収増加へとつながる。
財務省によると、第1・四半期のドイツ連邦政府および16の州政府の税収は前年同期比6.8%増加。予想では通年で2.9%増が見込まれ、その倍以上の伸びとなった。
税収増加によって、ドイツ政府は新たな借り入れなしに公共事業や移民対策などの政策支出を拡大できている。
--ここまで--
ドイツにとっては、ユーロ安状態になっているということだろう。
日本に当てはめれば、今1ドル=110円くらいだが、これが1ドル=125円ぐらいになれば、輸出はとってもしやすくなる。
ドイツ経済の好調ぶりは、ドイツの実体・実勢に比して、安すぎるユーロに支えられているということなのだろう。
もう一つ、このメルケルさんの立場を評した記事があったので、ご紹介したい。
--ここから--
2017年5月11日
フランスは親EU派のエマニュエル・マクロンを大統領に選び、極右のマリーヌ・ルペンを退けた。
9月に連邦議会(下院)選を控えるドイツでも、一時は絶望視されたアンゲラ・メルケル首相の4選が視野に入ってきた。
反移民と反イスラムを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は急に人気を落とし、3党連立政権の一角でライバルになるマルティン・シュルツの社会民主党(SPD)も、今年に入って一時支持率が急上昇したものの、徐々に後退。
最近の世論調査の結果を見ると、メルケルの勝利が確実な情勢だ(ドイツでは、首相の任期に上限がない)。
昨日公表された独シュテルン誌とテレビ局RTLの世論調査では、メルケル率いる中道右派の与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の支持率が36%で、SPDの29%を上回った。
リベラルで自由貿易を支持する自由民主党(FDP)と緑の党の支持率は7%で、CDUと合わせれば50%。
連邦議会で過半数の議席を獲得できる計算だ。連立からSPDを締め出すことも現実味を帯びてきた。
CDUは最近の州議会選挙でも健闘。3月のザールラント州議会選での勝利に続き、7日のシュレスビヒホルシュタイン州議会選でもCDUがSPDから第1党の座を5年ぶりに奪い返した。シュルツには手痛い敗北だ。
メルケル人気が徐々に復活
メルケルの支持率は、2015年後半から2016年前半にかけて低下した。
2015年9月の演説でドイツは移民や難民を積極的に受け入れると表明したのが原因だ。
演説以前からヨーロッパには大量の移民や難民が押し寄せていたが、反対勢力は難民危機を招いたのはメルケルだと批判。
なかでも反移民と反イスラムを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は地方選で快進撃を続けた。
だがメルケルは苦境から這い上がった。
リベラリズムと保守主義の中間を歩むことで、ドイツ政治の右から中道までで優位を固めた。
AfDは失速し、支持率は7%まで低下した。
メルケルは保守派の有権者に配慮して、イスラム教徒の女性にブルカの着用を禁止すべきだとか、当局が難民申請を却下した難民に対する強制送還の手続きを迅速化すべきといった考えを示し、従来のリベラル路線から軌道修正した。
それでも
EU最大の経済規模を誇るドイツのメルケルが、節度と安定感で築いた名声は無傷のままだ。
そもそもメルケルこそが自由世界の守護者だという認識は、昨年6月にイギリスがEU離脱を決め、11月にアメリカの大統領選でドナルド・トランプが勝つという2つの事件の後にメディアが広げたもの。
メルケルは、あくまで老獪な政治家であって天使ではない。
メルケル自身もそうしたレッテルは拒んできた。
--ここまで--
ドイツ国民も急速な変化を選ばない---ということだろうな。
経済が好調の内ならば、ムスリム達へドイツ語を教えるというようなことも順調にできる—というような実績に基いてのメルケル首相への支持なのだろう。