▲ひきこもりという社会不適応者がいる。
一説では、ほぼ社会復帰が無理なのだとか。
ちょいとそのあたりを。
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内閣府が公表した調査結果によると、仕事や学校に行かず、6カ月以上家族以外とほとんど交流せずに
自宅にいる「ひきこもり」(15~39歳)の人は、全国に約54万人いると。
年齢層を広げ、外部との交流はあるがやはり仕事をしていない「ニート」を含めると、その数は確実に数倍になる。
行政の側も状況を認識し、職業訓練や就業支援をはじめとしたサポート体制を整えている。
しかし、何年も、ことによると10年以上も社会とかかわりを持たずに過ごしてきた人が、外に出て働くということは、やはり簡単ではない。
■「ひきこもり・ニートの99%は就労できない」が現場の常識
公的機関のひきこもり相談員として、ひきこもりの自立支援に従事した経験を持つ伊藤さんは、支援現場の常識は「ひきこもり・ニートの99%は就労できない」だと。
多くの人が想像する「ひきこもり・ニートからの脱出」とは、「正社員として就労し、いずれ経済的に自立する」というプロセスだろう。実際に国は、そのプロセスをモデルとして支援を行っている。
しかし、仕事として多くのひきこもりやニートと接してきた伊藤さんが、こういうケースに出会ったのはわずか一度。
就労する意欲があっても「正社員」のハードルは高い。
非正規雇用では、継続的に自立した生活を送ることができるか心もとない。
そして、そもそも働く意欲のない人も存在する。
ひきこもり・ニートにとって「正規雇用から経済的自立」というプロセスはかくも困難なものなのだ。
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社会に対して不適応というより、そもそも、働く意欲・いや、もっと言えば、自分がこの世に存在しているという意味すらもないと思っている人間が存在するということだろう。
人数・対応などにふれた記事があったのでご紹介。
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2010/10/01(金)
先日、内閣府が行った「ひきこもりに関する実態調査」の結果が公表された。
「十五〜三十九歳の引きこもりは推定で六十九万六千人。この年齢層の五十人に
一人以上が引きこもっていることになる」
引きこもりの原因は時代とともに変化しているという。
「八〇年代の引きこもりはスチューデント・アパシー(無気力状態)が主な原因で、
ちょっとしたアドバイスで復帰できた。
しかし九〇年代以降は、単位が取れなかったり就職に失敗したことがきっかけで
『自分は人生の落伍者』と思い込み引きこもる傾向にあります。
最近の就職難も増加の原因のひとつと言えます」(和歌山大学保健管理センター・宮西照夫教授)
実際、家族が引きこもりになってしまった場合、必ず専門家に相談するべきと、宮西教授は言う。
「引きこもりと言われる人のなかには統合失調症やうつ病を患っている方が少なからずいます。
まず最初に専門家がそれを見極めなければ、治療が誤った方向に進んでしまうことになります。
それも引きこもってから二〜三年以内に相談すること。
それを過ぎると社会復帰がより困難になります」
和歌山大学では、独自の『引きこもり回復支援プログラム』を行っている。
「回復のためには、密室状態の家庭に第三者が入ることが必要。
引きこもりの経験者から養成した『アミーゴ』というメンタルサポーターを、週に何回か自宅に派遣し一緒に遊ぶのです。
引きこもる若者には、年寄りがいくら講釈しても効き目はありません。
感性や興味が近い同世代の若者と本音をぶつけあう。
そして徐々に食事などに連れ出し、家庭以外の新たな場所に
『居場所』を作ってあげるようにサポートしていくんです。
ただし、一度外出できるようになったからといって『アミーゴ』の派遣をやめてしまうと、再び引きこもりに戻ってしまうこともあるので、
時間をかけて回復をはからなければなりません」
同時に精神科医の治療も取り入れつつ行うこのプログラムでは、半年間で約九割が外出できるようになったという。
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上の記事では、ひきこもりに対して、まともな対応をしているようだ。
ところが、世の中には、こういう弱みにつけこんで、怪しげな支援を名乗る業者がいるらしい。
それが、以下、その記事から。
2017/05/01(月)
ひきこもりの人の自立支援をうたう業者に、実態のない活動名目で多額の契約料を支払わされるなどの被害が各地で相次いでいる。
関東在住の20代女性と母親は4月、家族間のトラブルを相談した東京都内の業者を相手取り、慰謝料など約1700万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
女性は自宅から無理やり連れ出され、暴力や脅しで軟禁状態に置かれたとしている。
3カ月分の契約料約570万円を支払ったが、支援は行われなかったという。
公的な相談窓口が限られる中、民間業者が各地で急増。
拉致・監禁まがいの手口で連れ出し、高額の料金を請求する悪質業者の存在も指摘されている。
▲補足、感想など
どういえば、いいのかな。
なにか「ひきこもり」という現象に対する理解が、本人もその家族も不足しているという気がしてならない。
自分という存在の価値というか、自分という存在がこの世にあって意味をもっているのだ—と信じなければ、回復などしない。
今、こうして生きている・この世にこうして存在している「喜び」を感じなけれが、回復などしない。
今、こうして生きていて・存在している喜びを感じて、そして、なにかこの社会のお役に立てることをしたい—と思わなければ、回復などしない。
そこに至る道はいくつかあるのだろう。
上の和歌山大学の例のようなものがある。
他の例を見てみよう。
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2014年10月13日
過疎高齢化が進む中山間地域の活性化と、ひきこもりからの回復支援を組み
合わせた試みが、岡山県美作市で進んでいる。
2012年に開いたシェアハウ
スに、ひきこもりから脱しようとする人が入居し、共同生活や農作業をするう
ちに、人と自然に話したり、何かに挑んだりするなどの変化が表れた。
他にも
似たケースがあり、地元若者グループは、支援NPO法人と連携して事業化。
「地域おこしで人もおこそう」と取り組んでいる。
グループは、同市梶並地区の民家でシェアハウスを運営する「山村エンター
プライズ」。
市が委嘱する「地域おこし協力隊」出身の藤井裕也代表(27)
らが12年11月、地方に基盤を持たない人が移住しやすい環境を作ろうとシ
ェアハウスを開いた。
個室のほか、共有の居間や台所がある。狙いは若者の移
住と過疎高齢化が進む地区の活性化の両立で、耕作放棄地での農作業アルバイ
ト収入などで生活を支える仕組みだ。
当初、ひきこもりの回復支援は想定していなかった。
だが、2年間のひきこ
もり経験がある20歳代前半の男性が開設時に入居。
農作業などで住民らと接
するうちに会話が増え、気持ちが変化したという。
1年後には演劇活動を始め
た。
その後、シェアハウスの様子がひきこもりの人の家族や支援者に口コミで広
まり、別のひきこもり経験者らも入居。
グループは今春、ひきこもり回復支援
事業「人おこしプロジェクト」に発展させた。
対象は、「未就労・未就学の状
態から抜け出したい」と希望する15~30歳の若者。
週1回の日帰り体験や、
長期入居などを想定する。共有スペースで他の住人と少しずつ関わりながら
農作業アルバイトに出掛ける。
シェアハウスの入居者8人のうち、ひきこもり経験者は現在3人。
親類の紹
介で、今年6月に千葉市から来た山本大貴さんは人付き合
いが苦手だったが、先輩住民が無理に話しかけてくることはなく、自然に時間
が経過した。
数日後、山本さんが翌日の予定を尋ねた時に初めて、藤井代表が
「こんな仕事情報もあるよ」と、畑の草刈りアルバイトを紹介。住民に草刈り機の動かし方などを教わりながら、農作業を始めた。
今はシェアハウスに客が訪れると、お茶を出したり、子供に折り紙を教えた
りと自ら動く場面が増えた。藤井代表は「変化が分かるのがうれしい」と話す。
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また、戸塚さんの例をみよう。
--ここから--
2017/04/29(土)
過去に、批判の的となった場所があった。それが「戸塚ヨットスクール」だ。
1976年、選手の育成のため設立されたが、その後、独自の指導方法が情緒障害などに効果があるとされ、
ヨット選手育成から生活指導へと切り替わった。
しかし体罰をも辞さないスパルタぶりで、訓練生が死亡してしまう事件が相次いだ。
校長の戸塚宏氏は傷害致死に問われ、懲役6年の判決を受けた。
今、戸塚ヨットスクールはどうなっているのか?まだ入所する若者たちはいるのだろうか?
愛知県知多郡美浜町にある戸塚ヨットスクール。事件後も、スクールは存続していた。
存続する理由、それはここを求める生徒が絶えないからだ。
しかし、2006年以降も、寮生の飛び降り自殺が複数報告されている。
戸塚ヨットスクールの1日に密着。起床は朝6時。男女問わず、同じフロアでの共同生活だ。
屋外で点呼し、20分間の早朝トレーニング。
食事は朝昼晩、生徒のみで作っている。ヨガの次は清掃、そして7時過ぎに朝食だ。
食事中、私語は厳禁。姿勢を正し、正座で食べる。
続いてそれぞれのカリキュラムで勉強をこなす。スクールにきた理由は各々、違うものの訓練終了を目標に、与えられたものを一生懸命クリアする姿勢が見て取れた。
午後はヨットでの海上訓練。そこに77歳の戸塚校長が現れた。
年を取ったとはいえ、その眼光と威圧感は相変わらずだ。
戸塚校長はヨットに乗り込み、
生徒より先に海に出る。
生徒達は死に物狂いの形相でヨットを操る。
戸塚校長は険しい表情で見守るのみだった。
海上訓練は命の危険を伴う。2時間もの間、死と隣り合わせの環境に置くのがその目的だという。
戸塚校長は「死を身近に感じる環境に晒すと本能の『生きる』が強くなり、社会のストレスに対応できるようになる」と語る。
「生きる力が一番大事なんだ。生きる力をいかに大きくするか!みんな弱いからイジメられて自殺する、叱られて自殺する。ヨット自身が体罰をしてくれる。
死ぬというのが最高の不快感、それをヨットで作り出すとだんだん慣れてくる。それに比べたら社会の不快感なんて大したことない」。
現在、スクールには12歳から44歳まで、8人の生徒が寮生活をしている。
彼らはなぜここに来たのだろうか。
17歳の男性は「今まで悪い事をいっぱいしてきたから自分で入所した。こんなに厳しいとは思ってなかった。
まだ全然治ってないけど、他人に謙虚になる事を学べたんじゃないかと思います」と答えてくれた。
また27歳の男性は「戸塚校長と面談して、世間の噂と違い、この人は正しい事を言っていると思った。入ってみて、自分が今更ながらいい加減な生き方をしていたと気づかされた。
一つずつ丁寧になんでもやっていくのが近道。
今までうまくいかなかったのは自分が雑にやっていたから」と反省の言葉をも口にした。
戸塚校長に、今の日本の教育について聞いた。
「教育がいいはずない!大学を卒業して3年後を調べてみると53%がニートになっている。
教育が間違っているからだ。このままでは日本がつぶれる。
キレイ事でイニシアティブを取ろうとするからいけない。
善悪が分かってないのに、日本中が"体罰は悪です"と言う。マスコミのおかげで日本は潰れるんだ。
教育勅語がいけないと言ったのはアメリカだ。
教育勅語で教育されたら、また日本がアメリカに刃向ってくるから。
男をダメにすれば、その国はダメになるんだ。
教育勅語で大和魂を培われたら、また立派な国になる。
今度こそ『負けないぞ』って向かってくる。
だからヨーロッパの間違った精神論を正しいとして与えておけば、
今のように教育が失敗して男が出来ない。
森友の理事長は俺と同じ事を言う。俺と似とるやつが居るなあと思った」と、森友学園にまで言及。
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筆者は、戸塚さんの能力を買っている。
上でふれた。
こんなオレでも、人間として生きていて、そのことに価値があり、こうして生きている喜びを感ずること。そして、この社会に対してなにか自分の力でお役に立つことをやりたい—と思うこと。
できることからすればいいじゃないか。例えば、このような文章を書くことからでもすればいいのでは。
そう思えば、ひきこもりから回復する。
そう思うまで、戸塚さんのところで、ヨットの訓練をするもよし、山村で農作業をするもよし—ではあるまいか。
すくなくとも、支援業者を名乗る悪徳業者にひっかかって、どこかに閉じ込められるより、回復への距離は近い。