▲中国という国は、宇宙にポツンと浮かび上がっている存在ではない。
他国と関係をもち、貿易をしなければ、生きてはいけまい。
今、人民元はどんどん安くなっている。(中国の信用が落ちているということ)
海外へ商品を売らなければお金がはいるまい。
これは、ハードな戦争というものより、金融的な攻撃が効きそうだなぁ。
以下、新聞から抜粋。
人民元の下落傾向が続いている
中国の人民元の下落が続くことで、中国が元安を容認しているとの見方も出ている。
中国経済にとって元安はどのような影響を与えるのか。
一般的に、通貨安は、貿易取引と資本取引の両方の経路から経済に影響を与える。
貿易取引では、通貨安は一定の時間ラグがあるものの、輸出を増加させ、輸入を抑える。
このため、通貨安は一定期間の後に国内総生産(GDP)の増加要因となる。
輸出入の海外依存度によって効果は異なるものの、世界各国で共通の現象だ。
資本取引では、通貨安はそれまで対外投資してきた人にとっては朗報だ。
通貨建ての収益が上がるからだ。と同時に短期的には資本流出を促す。
それまで自国内に投資してきた外国資本は外貨建て収益率が低下するからだ。
この資本流出は、通貨売り・外貨買いを伴うので、ますます自国通貨安になりがちである。
通貨安が継続すると、その間に輸出が伸びてくる。それは対外資産増、つまり資本流入というわけだ。
おおざっぱにいえば、自国の通貨安は短期的には資本流出となり経済の不安定要因だか、中期的にはGDP増加要因になる。
ただ、この傾向は、国の経済の発展具合や資本、為替規制の有無によって異なる。
先進国では、資本、為替取引は自由化されているため、短期的な資本流出のリスクはある。
しかし、円の場合、国の安定性などから安全資産とされているので、短期的な資本流出による弊害はあまりなく、中期的な経済成長の効果が大きい。
さて、中国ではどうだろうか。
資本、為替規制があるので、それらを利用して、短期的な資本流出のリスクには対応できるかもしれない。
ただし、中国にもメンツがあるから、資本規制をやるのは避け、目立たない形にしたいはずだ。
為替では、中国は変動相場制ではないので、持ちこたえられる範囲で介入するはず。
通貨安への対応の場合、外貨準備の大きさがものをいう。
その点、中国の外貨準備が減少しているのは不安材料だ。
しかも、中国にはカントリーリスクがある。
南シナ海の領有権問題でハーグの国際常設仲裁裁判所の裁定を無視するのは国際社会からみてまずい。
これは外交だけでなく、国際ビジネスにも波及する。
国際ビジネスでは、別の国際仲裁裁判所が設けられているが、中国は仲裁を無視する国と思われてしまい、カントリーリスクが高まる。
そうなると、これまで中国に投資していた外国資本が逃げ出すかもしれない。
これは中国政府にとって予想外のことだろう。
そこで、中国が資本規制に乗り出そうとしたら、かえって中国のカントリーリスクが高まることもありうる。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
▲補足、感想など
文章は、人民元が「安くなる」ということのデメリットについてふれている。
視点を変えて、アメリカの新聞の論調を見てみよう。
--ここから--
国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が南シナ海を巡る中国の主張を全面的に否定する判断を出したことについて、米主要紙は、実効性に限界があるとして、南シナ海の緊張が高まらないように米国などに外交努力を求める論評を掲載。
中国には過激な対抗措置を取らないよう促した。
ニューヨーク・タイムズは社説で、中国の習近平国家主席が、南シナ海での人工島建設の強化や、防空識別圏設定などの挑発的な対抗措置を取れば「愚か」で、軍事衝突の危険性が高まると指摘。
ウォールストリート・ジャーナルの社説は「米国が唯一強制力を持つ存在だ」と強調。
外交努力のほか、中国が領有権を主張している島々の周辺に艦船を派遣する「航行の自由」作戦の範囲や頻度の強化を提言。
オーストラリアや欧州による作戦参加も可能だと。
--ここまで--
中国に対し「なんらかの意志を従わせる」強制力をもつ存在はアメリカだけ—というのは、正しかろう。
しかし、アメリカとことを構えれば(軍事衝突をすれば)、中国のもっているアメリカ国債の価値はゼロとなり、また、リスクの高さから外国企業は中国を逃げ出そう--。
それを覚悟しても、中国はアメリカと衝突するのか?
いや、それ以前にアメリカは対中国で、様々な金融的な締め付けが可能であろう。
どこかで、中国は方向転換せざるを得まいな。
もう、20世紀ではないのだ。
ミニ帝国主義なんてものが、通用する時代ではない。
✦追記
中国の具体的な行動を予測した文章があった。ご紹介したい。
--ここから--
具体的にはどんな一手を打ってくるのか。
中国事情に精通する評論家の宮崎正弘氏は「南シナ海での権益がぶつかり合うASEAN(東南アジア諸国連合)の分断工作を活発化させる。ラオスやカンボジアばかりか、タイやブルネイも札束攻勢で一気に取り込むと」みる。
力で覇権を握ろうとする中国に対し、米軍はこれまで「航行の自由」作戦を実施してきた。
原子力空母ロナルド・レーガンなど第7艦隊の艦船も南シナ海に展開、今回の裁定で同作戦の正当性を得た格好で、日本やオーストラリア、インドなどにも働きかけ、対中包囲網を強化していく。
こうしたことを受けて、中国軍は実力行使に出る恐れもあるという。
宮崎氏は「南シナ海で軍事行動を起こし、ベトナム軍と戦端を開く可能性がある。
ベトナムからパラセル諸島を強奪した1974年の海戦のような局地戦だ。
中国の視線の先には東シナ海も当然入っている。
当面は尖閣諸島周辺での挑発行動を続けて、尖閣への軍事侵攻のタイミングを図るだろう」と推測。
折しも米国の研究機関が、中国軍の東シナ海戦略についての報告書を公表。
報告書は、浙江省の基地から軍事ヘリコプターで尖閣を強襲する中国軍のシナリオを明らかに。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「南シナ海と東シナ海はリンクしている。中国が開き直って、東シナ海での行動をエスカレートさせかねない。
今年1月に人民解放軍幹部と面談した際には、年内での尖閣への強行上陸を示唆していた」と指摘。
「漁民に偽装した民兵が上陸し、南シナ海の中国の艦隊群が東シナ海に移動、輸送用ヘリを搭載した強襲揚陸艦を周辺まで送り込む。そこからヘリを尖閣まで飛ばすシナリオもあり得る。
昨年から那覇基地からの航空自衛隊機のスクランブルが2倍近く増えた。空でも軍事衝突一歩手前の攻防が起きている」
尖閣で想定される有事に日本はどう対抗すればいいのか。
「中国軍が仕掛けて長期戦に持ち込んでくると戦況は不利。そうなる前に決着をつける必要がある。那覇新港にイージス艦を含む新たな護衛隊群を編成して常駐させ、那覇基地にF15だけでなく、地上攻撃が可能なF2戦闘機を配備。
局地戦になった場合の即応体制をとることだ。尖閣諸島の久場島、大正島は米軍の施政管理下にある。ここに手を出せば米軍も黙っていない。第7艦隊が後方支援に回り、米軍の一斉攻撃が始まる」
米ホワイトハウスは、バイデン副大統領がハワイで開かれる日米韓の外務次官協議に参加すると発表。仲裁裁判の判断を受けた南シナ海情勢についても協議するとみられる。
日米が連携し無法者国家の横暴を食い止める。
--ここまで--
中国も「声闘」の得意な国家である。
どこまでハッタリかは分からない。
日本も油断はしまい。