2013年3月20日水曜日

南海トラフ地震の想定の危うさ。


技術者の目からみると、なにもかも過大となる。
 無駄な費用を積み上げている。
 表題の南海トラフ地震の被害想定をみてそう思う。

 この想定って。
 無理をしすぎであろう。

 どこに核心があるのかなぁ。
 恐らく、後から学者達が「想定してなかったのか」--と国民から批判されるのを恐れて、いわば考えられる「最大規模」M9.1とかを想定していることから始まっている。

 M9.1---確かにこの地球上で発生しうる最大規模の想定だ。これ以上はない。
 でも。
 これを考えたのは、「理学系の科学者」が担当したものだろう。確かにこうなる。その通りだ。

 しかし。
 こういう規模の地震は、東日本大震災のように1000年~1200年に一度なのだ。
 ここから先は、技術者の領分だ。

 技術者の目からみると、1000年に一度という地震を想定した「対応」を考えることは、「無駄が多すぎる」。
 特に津波の最大高さを想定して、防波堤の高さを異様なほどに高くするということは無駄が多すぎる。<ついでながら、こういう堰堤の高さを例えば2m嵩上げする--というと簡単そうに聞こえる。しかし、この2mを支える基部というものの断面の面積を考えても見よ。かかる費用は数倍になるのだ。>
 このあたり、土木学会でも発表していたが、100年に一度発生する地震への対応策で充分なのだ。

 別の表現をしてみようか。
 子供を安全に育てたいと思う。
 しかし、それでも鉄格子の中で子供を育てるということは無理だ。
 ある程度のリスクを覚悟して、子供に自分の足で通学させざるを得ない。そりゃ、交通事故に会う可能性はあろう。ふざけていてなにかを喉に詰まらせるということもあろう。
 それを含めての「子育て」なのだ。

 元に話を戻せば。
 今の日本の大地震に対する対応は、まるで、「子供を鉄格子の中で育てよう」としているように見える。
 確かに、100年に一度の対策では、一昨年の東日本大震災のような1000年に一度の地震・津波が押し寄せてくれば、被害はでる。

 このあたりだな。
 ハッキリ為政者から口には出せないが、「これはもう致し方ない」のだ。
 全員を助けることはもう出来ない。---そう為政者は「覚悟」を決めるべきだ。<いや、減災とかいう言葉の意味はそれを覚悟しているということなのだろう>

 その代り、復旧のスピードを出来るだけ早くする、仮設住宅のようなものを前もって、準備しておく—とかに力を注ぐのだ。

 また、数十年のスパンで、鉄道などを想定される津波の標高以上のところに移設し、また、町自体を標高の高いところに少しづつ移していくことを考える。

 つまり。
 地震の想定を最大規模で考えるということが間違っているのではない。その数値は数値だ。
 ただ、そこから。
 提示された「数値」を技術者なりに解釈して、妥当な対応策を探る—ということが大切なのだと思う。

 理系の地震学者、津波学者の出してくる「巨大な数値」に驚かされるな。うろたえるな。目をくらまされるな。
 その数値を技術者の視点で解釈し、妥当な「対策」を考えていくべきなのだ。
 また、悲しむべきだが、全員が全員助かることは無理だ。犠牲はでる。そのことは国民ははっきり認識していよう。

 以下、新聞から抜粋。

 日本の大動脈である太平洋ベルト地帯を、南海トラフで起こりうる「最大級の巨大地震・津波」が直撃した場合の被害想定が公表された。
 住宅や工場、事業所などが地震の揺れや津波で破壊される直接被害が約170兆円。
 産業活動の低下や交通の寸断により全国に波及する損失が約50兆円と推計された。

 220兆円に上る経済被害は東日本大震災の10倍、首都直下地震の被害想定の2倍に当たる。
 昨年8月に公表された人的被害では、死者は最大で32万人に達する。
 まさに「国難」である。

 想定された「最大級の地震・津波」は、東海・東南海・南海の3地震が同時発生する従来の連動型地震モデルに、最新の科学的知見の範囲で考えられる限りの被害拡大要因を加えたものだ。
 歴史的にこのような巨大地震が起きた履歴はなく、今後起きるとしても、その確率は極めて低いことは留意しておくべきだ。

 一方、南海トラフの次の活動は確実に迫っている。
 たとえマグニチュード(M)9クラスの最大級でなくても、東海・東南海・南海地震が連動する可能性はあり、その場合、大規模な地震・津波は起こる。
 「最悪の想定」を念頭に、被害を最小化させる対策を講じることが肝要だ。

 津波避難の迅速化と耐震化率の向上で、人的被害も経済的損失も劇的に減らすことができる。
 自治体や各家庭で着実に前進させてもらいたい。
 広域にわたる自治体間の支援態勢確立など、国が主導すべき課題も多い。
 中でも、大規模地震対策特別措置法(大震法)の抜本的見直しは急務だ。

 現行法は、東海地震だけを対象に「直前予知」を目指しているため、東海・東南海・南海地震の連動型には対応できない。
 また、阪神大震災や東日本大震災では役には立たなかった。
 南海トラフの海溝型地震の前後数年は、内陸直下型地震が多発する傾向がある。
 南海トラフ地震を対象とする新たな特別法では、連動型巨大地震だけでなく、時間差発生や内陸直下型にも対応できる柔軟性が求められる。
 遠くない将来の国難を乗り切るには、大地震の前兆を捉える極めて難しい「直前予知」に依存しないことを原則に、地震防災態勢を再構築しなければならない。

▲補足、感想など

 冒頭で言いたいことは言ってしまった。

 大切なことを繰り返したい。
 子供がいくら可愛くても、鉄格子の中で育てることはできない。
 リスクを覚悟して、自分で通学させるしかない。

 それと同じで。
 確かにM9.1という規模の地震が発生はする。1000年-1200年に一度という頻度で。
 しかし、なにもかもそれを基準にものを考えることは、「無駄、無理が多すぎる」
 技術者から言わせてもらえば、「百年に一度」を想定すれば充分だ。

 それは、「被害はでる」。でも、全員を助けることはもう無理なのだ。
 その分、復興のスピードを上げるとかで代替させてもらう。
 でも、掛った費用を考えると、その方が「費用を有効に・効率的に利用した」ことになるのだ。
 そのあたりを直視せよ。