▲最高裁の判断というものは、いわば日本の常識を形作るものだ。
日頃、見聞きする最高裁の判断は、まぁ、おかしいと思うものは殆どない。
ところが、こりゃどうだ—という判断がある。
どこに問題の核心が隠されているのだろうか。
おそらく、と思う。
これは、合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)なのだ。
正しい判断 プラス 正しい判断 プラス 正しい判断 =結果として誤っている。
一つ一つのそれぞれの判断は確かに正しいのだ。でも、その結果としてどこかおかしい。常識ハズレとなっているという場合だ。
もっといえば、知識はたくさんあっても智慧が足らない。
そういうことではあるまいか。
以下、新聞から抜粋。
家具大手ニトリ(本社・札幌市)で買った椅子の脚が折れ、転んで大けがをした結果、うつ病になったとして、
北九州市の40代の女性が損害賠償を求めた訴訟で、
最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は、ニトリ側の上告を退ける決定をした。2月28日付。
事故とうつ病の因果関係を認め、1580万円の賠償をニトリに命じた2011年12月の二審・福岡高裁判決が確定した。
二審判決によると、女性は08年11月、
ニトリで買った椅子(商品名「パーソナルチェアウルフ2」、品番RD6200R)に座って1歳の長男をひざに乗せようとしたところ、
溶接の不具合のため椅子の脚が折れた。
転んだ際に腰の骨が折れて身動きがとれなくなり、家族の面倒をみることができなくなるなどしたため、うつ病を発症した。
ニトリ側は椅子に欠陥があったことを認めた上で、事故とうつ病の因果関係を争った。
二審判決は「家族に迷惑をかけているという負い目、健康が回復しないことへの不安や焦りなどが重なった」と指摘した。
ニトリホールディングス広報は「最高裁の判断内容を確認中で、コメントは差し控えたい」としている。
▲補足、感想など
論点は、記事にあるごとく、事故をうつ病の因果関係だ。
問題の核心は、この「うつ病」だ。
病気といえば病気だが、個人差の大きな、原因が定かならぬ病気? ではある。
裁判官の考えたことは。おそらく,事故とうつ病との間で「因果関係がないといえるか」ということであろう。
う~ん。
どう考えても「ないとは言えない」→だから、有る—という結論となる。
ここだなぁ。
うつ病なんて、個人の資質などの部分が大きな要因となるものだ。個人差の大きな病気といっていい。
だから、「ないとは言えない」というより、不明な部分が多いことで、因果関係は分からない。
保守的には「因果関係を認めるだけの証拠がない」--という判断とすべきではなかったか。
さもなくば、なんにでも言える。
「そこで、マンホールの蓋でつまづいて怪我して、うつ病となった。補償して欲しい」--という裁判が申し立てられた時、因果関係を「ないとは言えない」として、認めるのか。
要するに、冒頭でふれたように「知識は一杯あっても智慧がない」のだ。
因果関係を立証するだけの証拠がない—として、因果関係を認めるべきではない。--それが「智慧」というものだと筆者は思う。